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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第七章 転生者

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219.教養講座

 メロディもまた、数奇な運命を辿って成長してきたらしい。

 シルデリアでの成人年齢である14歳になるまで、自分が平民だと信じて疑っていなかったそうだ。

 その要塞は一見、普通の地方都市で貴族はいなかった。

 いやメロディの母上はずっとシルデリアの王子妃だったんだけど、そんなの判らないよね。


【じゃあ、14歳になってからいきなり貴族教育を?】

 勢い込んで聞いたら否定された。

 ちぇっ。

 仲間かと思ったのに。


【それが、今思うと変なんだけど幼い頃から地方都市の商会事務員の娘にしては過剰すぎる教育を(ほどこ)された。

 家庭教師が母上の知り合いのおじさんおばさんという触れ込みで色々教えてくれたのよね】

【色々って】

【だから色々。

 政治経済歴史地理、それから言葉ね。

 私もどの乙女ゲームの舞台なのか知りたくて、片っ端から本読んだりみんなに聞いたりして。

 気がついたら皆さんに『もう教える事はない』と】


 出た!

 定番の厨二病台詞(セリフ)

 現実(リアル)でそんなこと言われる人がいたとは。


【日本の女子高生だったのならお勉強が出来るのは判るけど】

 だって基礎的な「学ぶ方法論」が段違いなのよ。

 私も随分助けられた。


【それもあったし、異世界転生物によくあるみたいに私の頭ってハイスペックというよりはもうチートなのよ。

 外国語なんかあっという間に覚えたし】

 それは羨ましい。

 私はヒロインだけあって、そんなにチート的な頭脳は持ってない。

 やっぱりメロディって悪役令嬢、といよりは攻略対象なのでは。


礼儀(マナー)は?】

【覚えている乙女ゲームの悪役令嬢を真似したら出来てしまった。

 異国風だと言われるから矯正は必要だったけど】

【それね】

 私も覚えがある。

 でも悪役令嬢の礼儀(マナー)って高位貴族家のものだから、学び初めの頃はあまり役に立たないのよね。

 私なんかそれで随分きつい思いを(泣)。


【私が14歳になった頃に父上が政争に勝って立太子してね。

 母上と一緒に王都に行ったの。

 学園があるという話だったから期待していたんだけど】

シルデリア(そっち)にも学校があるの?】

 やはり乙女ゲームか。


【期待外れだった。

 どうもテレジア(ここ)の学院を真似て作ったらしいんだけど、教育機関というよりは職業訓練場や教養講座みたいになっていた。

 それはそれで有益ではあるんだけれどね】


 ああ、そういうことか。

 聞いた事がある。

 テレジア王立貴族学院は私の祖父上(じいちゃん)が婚約破棄して王家を潰した副産物として作られた。

 最初はもう舞踏会での婚約破棄とか、そういう馬鹿げた事件を起こさないように貴族子弟に貴族としての心構えを叩き込む、という名目だったんだけど。

 作っているうちに目的が変質したらしい。

 礼儀(マナー)や矜持だけじゃなくて貴族に相応しい技能や知識も学べるようにしたらどうか、と。

 もちろんそんなことをしたらどれだけお金がかかるか判らないから最初はみんな反対したんだけど、何と禅譲してテレジア公爵家となった旧王家が私財を投げ出して学院の設立を推進したのだそうだ。


 テレジア公爵家って元は王家なのよね。

 つまり国内で最大の領地や財力を持っていたわけで、その大半は新王家に譲ったんだけど、残りの大部分を学院の原資にしてしまった。

 テレジア公爵家は現在の領地だけで良いと言って。

 それでも普通の伯爵家程度の規模はあるし、あらゆる点で優良な領地だから侯爵領くらいの価値はあるそうだけど。


 最初から豊富な原資があったため、学院の創立者たちは思い切って規模を拡大して有識者を教授に任命して講座を取りそろえた。

 それが大当たりで、初めは得体の知れない学院なんかに子弟を送ることを渋っていた貴族たちも、学院出の人たちがあちこちで活躍し始めると意見を翻したそうだ。


 ということで設立して十年くらい過ぎた頃にはテレジア王立貴族学院はテレジア王国に定着したどころか国際的にも有名になったらしい。

 先進的な国は早速真似しようとしたんだけど、問題になったのが資金だった。

 テレジアの場合は旧王家の財産の大半を費やしたからこそ成功したんだけど、他の国ではそんなの無理だもんね。

 結局は職業訓練校みたいなものしか出来なかったらしい。


【それでも学園ではあったのでは?】

【そんなもんじゃなかった。

 碌な講座がないから有望な生徒が集まらないし、卒業しても大した評価にはならない。

 今では下位貴族の子弟がお役人を目指したりコネを作ったりするだけの場に成り果てているわ】


 あれま。

 でもまあ、そうでしょうね。

 貴族って本来は横並びで何かする種族じゃないのよ。

 有益な話は独占してむしろ隠そうとする。

一緒に学ぶなんて本来ならあり得ない話で。


【学園としては機能していないと?】

【一応、学び舎ではある。

 基礎的な礼儀(マナー)とかは教えているし。

 でも、今やむしろ貴族同士の交際の場と化してしまっていてね】

 ああ、そうか。

 結局、貴族はコネだものね。

 知識や技能を学ぶよりは社交を優先すると。


【それなりに上手くいってはいるのよ。

 舞踏会やパーティを学園主催で開くことで下位貴族家の負担が減っているし】

【あー、それ】

【私たちの前世の世界でいうと、自治体主催の市民向け教養講座(カルチャースクール)みたいなかんじかな。

 駅前のビルとかの教室で開催している。

 そこで何か学ぶというよりは同好の士同士で知り合ったり親睦を深めたりするというような】

 あー、わかる。

 子育てが終わった比較的裕福な家庭の主婦とかが参加するのよね。

 生け花とかヨガとか。

 別に何かの資格がとれるわけでもないし、社会的な実績にもならないけどコネが作れて楽しいという。

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