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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第六章 領主

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212.帰還

 子供達は嬉しそうだったけど、私はやらかしに後で気づいてそれ以降は沈黙した。

 ヨーク家の子供達、案外策士なのでは。

 ということで微妙な雰囲気のまま晩餐(ディナー)は終了し、私は這々の体で客間に引き上げたのだった。


「拙かったかしら」

「長期的にみれば次代の者には感謝されるでしょうな。

 殿下はさすがでございます」

 領主代理(ロンバート)は軽く言うけど、私は改めてショックだった。

 公爵()が何か言ったらそれは命令になってしまうことにやっと気がついたりして。

 今回はヤバかったけど、致命的な失敗というほどではないからまあいいか。

 今後は気をつけよう。


「お心のままに」

 それが拙いんじゃないの?

 翌日、やっぱり子爵夫妻と朝食会になったけど、余計な事を言わないで淡々と喰って終わった。

 そのまま出立する。

 色々と学ぶ事が多い訪問だった。


「ロンバートの方はどうだった?」

 馬車に揺られながら聞いてみた。

 領主代理(ロンバート)は私と別行動で色々とやっていたらしいのよね。

「後ほど報告書にまとめますが、ヨーク子爵領は多少の瑕疵はあるものの、概ね順調に運営されているようでございます。

 会計監査報告書との齟齬も特にございませんでした」

「つまり大丈夫だと」

「そうですな。

 予想はしておりました。

 テレジア公爵領は優良領地ですので、よほど下手を打たない限りは順調に統治出来るはずでございます。

 子爵閣下もそのことが判っているので下手な投機などには近寄りません」


 なるほど。

 せっかく上手くいっているんだから余計な事をしてドツボにハマるようなことはしないと。

 私の前世の人が読んでいた乙女ゲーム小説だと、必ず何か身の程知らずに散財したり博打みたいな事業に投資したりして没落する貴族が出てくるんだけど。

 そんなのは滅多にいない。

 代々、ひたすら穏便に過ごしてきたんだろうなあ。

 貴族って防衛本能の(かたまり)だから、追い詰められない限りは無謀な事はしない。

 やるとしたら切羽詰まって、という。


「見ただけで判ったの?」

(あらかじ)め視察の者を送り込んでおきました。

 そやつらの報告を確認しただけでございます」

 やっぱり「影」みたいなのがいるんだろうか。

 まあいい。

 それでなくても面倒な立場なのだ。

 わざわざ闇の中に手を突っ込むことはあるまい。


 そして私たちは予定(スケジュール)に従ってテレジア公爵領をほっつき歩いた。

 色々な土地があったけど、内容はともかくやることは同じだった。

 代理統治させている領地の領主館に馬車で乗り付けて当主ご一家と歓談。

 その領主館に泊まりながら馬車で色々見て回る。

 鉱山もあったし大きな河にまたがるように作られた街もあった。

 陶器や染め物を作る職人が集まっている村などにも行った。

 そういう技能村はテレジア公爵家が租税免除などの特権を与えて保護していて、製品を独占的に買い上げて輸出することで利益を上げているそうだ。


 山の方に行くと温泉街があって、王都から近いので貴族や裕福な平民の遊興地(リゾート)になっている。

 私たちご一行は、もちろん団体でそこの一番上等な宿に泊まってお金を落としておいた。

 そのお金は回り回って税金としてテレジア公爵領政府というか役所に戻ってくるらしい。

「あまり意味がないのでは」

「そんなことはございません。

 売り上げに貢献することは統治者の義務でございます故」


 なるほど。

 社会を維持していくのは大変だなあ。

 というように順調に旅が続いたが、途中で気がついた。

 これって「休暇」なのでは。

 視察という名目で遊んだり旅行したりしているだけな気がする。

 ここ数ヶ月は怒濤の日々が続いたから、誰かが気を利かせてくれたのかも。


 ならば乗ってあげようではないか。

 王都に戻ったらどうせまた色々と降りかかってくるんだろうし。

 それから私は面倒くさいことは考えないようにして旅を楽しむことにした。

 そもそも視察とか言われても私に出来ることはないしね。

 薦められるままに鉱山を体験訪問したり、河での漁を見学したり、温泉にのんびり浸かったりしているうちにだんだんと秋も深まってきて、ある朝起きたら寒さを感じてしまった。

 そろそろ冬なのでは。


「いかがなされますか?」

 領主代理(ロンバート)に聞かれたのはテレジア公爵領の領主館に戻る途中だった。

「いかがって?」

「このまま領主館で冬を越すことも出来ます。

 冬も風情があって良い土地でございますよ」

 そういう手もあるのか。

 でも駄目だろうね。

 さすがに休暇も限界だ。

「王都に戻ります」

「お心のままに」


 最後にパーティという名目の宴会を開いてテレジア公爵領領主館の使用人の皆さんをねぎらってから、私たち一行は王都に帰還した。

 木枯らしが吹いて寒かった。

「お帰りなさいませ」

 離宮では家令代理(アーサー)が先頭に立って迎えてくれた。

 いつの間にかそれっぽくなってない?

「ご苦労」

(つつが)なき帰還、おめでとうございます」

 こんなことを平気で言う人だったっけ?

 まあいい。

 家令(ヒース)に相当しごかれたのかもしれない。


 懐かし? の離宮は何も変わっていなかった。

 相変わらずライロケルとハイロンドの人たちが連絡事務所とやらに居座っている。

 諜報員(スパイ)の拠点を構えているみたいなものだけど、国王陛下が許可してしまったんだからしょうがない。

 ハイロンドもライロケルも王都には大使館があるんだけどなあ。

 聞いてみたら、それとは関係がないそうだ。

 母上や祖母上が言わば私的(プライベート)でやっているらしい。

 どこまで私に執着しているのやら。

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