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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第六章 領主

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209.貴族

 とりあえず面倒なお話は終わったということで、私は専任メイド(グレース)を呼んでお茶を配膳して貰った。

 それから私は久しぶりに敬愛する兄上と楽しく語らったのだった。

 いやー、やっぱりイケオジって癒やしよね。

 世が世なら推していたところだ。

 私の前世の人の世界では若い女性がホストとかいう男性サービス業の人に入れ込むことがあるらしいけど、私なんか兄上がホストだったら全財産注ぎ込んでいただろうなあ。


 夜も更けてきたので名残惜しいけどお話を切り上げる。

 専任侍女(サンディ)を通じて領主代理(ロンバート)に兄上のお世話を頼んだ。

 最高の客間(おもてなし)を用意させて下さい。

「身に余るが」

「たまにはよろしいでしょう。

 私の感謝の気持ちです」

「そういうことなら」

 何とか納得して貰えた。

 このくらいの贔屓はいいよね?


 兄上は忙しいというので、明日にもテレジア公爵領を離れるらしい。

 なのでここでお別れになる。

 哀しいけどしょうがないかな。

 ということで私は自分のお部屋に引き上げてお風呂に入った後、髪を乾かしてから眠ったのだった。


 翌朝、起きて聞いたらサエラ男爵(兄上)は既に旅立ったということだった。

 そもそも訪問自体がお忍びなので人目に触れないうちに出て行ったみたい。

 残念だけどしょうがないか。

 ゆっくり朝食を摂りながら専任侍女(サンディ)に今日の予定を聞いたら、午前中はこのお屋敷の視察と言われた。

 昼餐(ランチ)の後は領地の視察になるんだけど、半日で回れるほど狭い土地ではないということで、午後は移動に費やして夜は別の領主館に泊まる予定だそうだ。

 何それ。

 まだそんな屋敷があるの?


「ございますよ?

 テレジア公爵領はいくつかの領地に分割されております。

 領地ごとに領主館があり」

 そうか。

 公爵領なんだから、当然寄子の貴族がそれぞれの土地を代理統治しているわけか。


 それについても経済学の講座で習った。

 何度も言うけど本物の領地貴族、つまり王家から直接その土地の統治権を認められた貴族は伯爵以上の爵位を持つ者だけだ。

 でも伯爵領だとしても普通は結構広いし土地ごとに特色がある。

 飛び地もあるし、海に面していたり山ばかりだったりする土地もあって、それぞれ特産物や人口構成が違ったりする。

 それを全部伯爵個人が統治するのは大変だというので、大抵は子爵以下の貴族を寄子にして代理統治させているわけ。


 男爵までは王国の正式な爵位なので、寄子とはいえ領地貴族の臣下じゃなくて配下ということになる。

 例えばサエラ男爵領は土地区分上はミルガスト伯爵領の一部なんだけど、実際にはサエラ男爵様が統治権を握っていて伯爵家は口を出せないことになっているのよね。

 この方法はなかなか便利で、領地貴族は面倒な土地を配下に丸投げ出来るし、投げられた方は上手くやればもっと出世したり豊かになったり出来る。


 でも実際には色々な状況(パターン)があって、王家直轄領や侯爵級の大貴族領なら子息が子爵に任じられて領地の一部を統治することもあるし、王子が名目上の領主になって統治は代理に任せたりする。

 かと思えばサエラ男爵家みたいに古くから続いていてその土地に根付いた貴族は、名目的には上位貴族の寄子なんだけど、実際には独立した領地を管理しているようなものだとか。


「色々ありそうね」

「はい。

 テレジア公爵領は広さ自体は伯爵領並ですが、領内に色々と特色がある土地が揃っております。

 それぞれ、古くから代理統治している貴族がおられて、それは王家直轄領だった頃からずっと続いているそうでございます」


 なるほど。

 そもそもはテレジアの旧王家の土地だったわけで、その頃から代理統治していた貴族家がいるわけか。

 それが王位の禅譲に従ってテレジア公爵領になり、テレジア公爵の没後はテレジア王家の直轄領に戻っても体制は変わらなかったと。

 で、今回どこともしれない小娘がテレジア公爵になってしまっても、その体制は変えられないということね。


「つまり私はその貴族にご挨拶しに行くと?」

「本来なら皆様に集まって頂いて、となるところでございますが、今回は殿下の領地視察を兼ねます。

 なので、直接出向いて謁見された方がよろしいかと」

 いや、よろしいも何ももう決まっているみたいだし。

 まあ、判ることは判る。

 いきなりテレジア公爵になった小娘に呼びつけられて謁見させられるって、貴族(当人)にとっては不本意だろう。

 態度には出さないだろうけど悪感情を持ちかねない。

 だから私の方がへりくだってご挨拶に伺うということね。


「判りました」

「お心のままに」

 私が文句を言わないところまで見越していたんだろうな。

 専任侍女(サンディ)じゃなくて領主代理(ロンバート)が。

 いいように使われている気がしないでもないけど、領地運営なんか私に出来っこないしやりたくもない。

 だったらロンバートに丸投げして、私は邪魔にならないように動くべきだ。

 と私が考えるところまでロンバートにはお見通しなんだろうね。

 貴族も面倒くさいけど、その貴族に仕える人ってもっと面倒くさそう。

 まあいい。


 私はそれから午前中いっぱい、やたらに広くて実に色々な見所があるお屋敷を見て回った。

 建物だけじゃなくて、広い庭やもっと広い裏庭、騎士団の宿舎、演習場まで引き回された。

 更にお屋敷の裏手はちょっとした森になっていて野生動物がいたり、その向こうにはかなり広い湖が広がっていてコテージやボート小屋があったり。

 それが全部このお屋敷の一部だというんだから凄いよね。

 私、マジでこんなところにいていいんだろうか。

 だって孤児だったのに。


 そんなこと言えないから出来るだけにこやかに皆様にお声がけしてお部屋に戻った時には既に疲労困憊だった。

 まだ午前中なのに!

「昼食はどうなさいますか」

「いつものでお願い」

「お心のままに」


 よく晴れた空の下、テラスで昼食(ランチ)とは裏腹なアフタヌーンティー的な大量のサンドイッチやサラダやケーキなどを詰め込む。

 栄養バランスにも気を配ってくれているみたいで美味い上に量的にも満足だ。

 軽食なので冷えていても気にならない。

 これぞ貴族。

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