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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第六章 領主

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207.支配階級

「それは申し訳ありません」

「いや、君のせいではない。

 それに、実を言えば無関係とはとても言えない。

 言いにくいのだがサエラ男爵家(うち)が君を引き取ったのは必ずしも当家の意思ではなかった」


 やっぱりか。

 それはまあ、血の繋がった妹なんだから引き取ること自体は問題ないけど。

 でも貴族の庶子を必要もないのに貴族家の養子として迎え入れるって、本当はおかしいのよね。

 そういう子供は結構いるし、当然だけど貴族家の継承権がないからその子を貴族として育てる意味はあんまりない。

 後継者がいなくてお家が断絶する、ということなら頷けるんだけど。


 でも私の場合、貴族として引き取られて教育して貰った。

 それどころか学院にまで通わせて頂いた。

 破格の扱いどころじゃない。

 普通だったらお屋敷の下働きとか良くてお嬢様のお付きメイドとかになるのがせいぜいなのよね。


「そのお話は陛下から聞いております」

「そうか。

 今だから話せるが、サエラ男爵家(うち)は当初から(マリアンヌ)の存在を認識していた」

「そうなのですか」

 それはそうかも。

 だって王家が。


「私が男爵位を継承してから数年後のことだったか。

 セレニア様が君を置いてご帰国なさる前に王家から使いが来てね。

 何でも君を守るためにサエラ男爵領(ここ)に常駐の要員(チーム)を置くのでよろしくと」

 私が生まれた頃からなの?

 前に陛下が「君の周りは常に戦場だった」とか言っていたけど、そんなに前からだったなんて。


「そんなことが」

「実のところ、私もよくは知らないのだが。

 孤児院の近くに拠点を構えて色々と動いていたよ。

 サエラ男爵家としてはその分、領内でお金を落としてくれるから歓迎していた」

 さいですか。


「そういえば、引き取られるまで男爵家の方とお目にかかったことはありませんでしたね」

「王家から過度の接触は遠慮するようにというお達しでね。

 本来なら領地にある孤児院などは貴族としての義務(ノブレスオブリージェ)で支援するべきなのだが」


 それはそうだ。

 孤児院に居た頃は気にならなかったけど今なら判る。

 高貴なる者の習いとして弱者への施しは不可欠のはずだ。

 私の前世の人が読んでいた小説でも貴族令嬢が孤児院を訪問して一緒に遊んだりお菓子をあげたりしていたっけ。

 あれは別に慈悲とか親切とかじゃなくて、そうすることが推奨されている、というよりはもう義務だからだ。

 まあ、偽善なんだけど。


「でも別に困ってはいなかったですよ?」

「表向きは放置していたが、裏では色々と手配していた。

 君がいる孤児院だけを支援したら贔屓になるから領内の施設すべてに結構手を入れていたよ。

 もっともその分は王家から有形無形の援助があったが」


 だろうね。

 全然気づかなかったけどサエラ男爵領は王家の直轄地並に支援を受けていた臭い。

 それで豊かだったのか。

 地方の男爵領とは思えないくらい経済的に安定していて、しかも治安が良かったものね。

 与太者はともかく本物の狼藉者(ヤクザ)は私の目に触れる前に排除されていたとか。


 納得しているとサエラ男爵様(兄上)が真面目な表情になって言った。

「実は、早急に伝えておかなければならないことがある」

 やっぱり。

 いきなり礼儀(マナー)を無視して訪ねて来たってことは、それなりの理由があるとみるべきだ。

 しかも王都の離宮じゃなくてテレジア公爵領に。

 極秘裏に私と接触しなければならない事情があるに決まっている。


「何でございましょう」

「その……君の母上(セレニア様)から連絡があってね。

 ミストア神聖国の公使が(マリアンヌ)に謁見したと」

 何で知ってる?

 いや離宮に母上(ライロケル)の連絡事務所があったっけ。

 情報ダダ漏れじゃない。

 いいんだろうか。


「はい。

 突然訪ねてこられて」

「何と言っていた?」

 話しても別にいいよね。

「私のこの(ピンクヘアー)を確認したようです」

 ヅラ疑惑をかけられたことは黙っておく。

 この若さでヅラ被るって有り得ないでしょう。

 しかもこんな派手な色の。


「やはりそうか」

「何でも前サエラ男爵(父上)もこの色の髪だったと母上から聞いておりましたが」

 私は会ったこともないんだけど、私と男爵様の父上は見事な桃髪(ピンクヘアー)だったらしい。

 男でそれはどうかと思うけど、母上に言わせるとかっこいいそうだ。

 想像を絶する。


「そうだね。

 確かに父上は桃髪(ピンクヘアー)だった。

 私も兄弟姉妹たちも、誰一人として受け継がなかったが」

 隔世遺伝だからしょうがない。

 前男爵ご自身も突然変異的に桃髪(ピンクヘアー)だったようだし。


「それでサエラ男爵家の方々が(わたくし)を受け入れて下さったと聞きました」

「それだけではないが、そのせいで抵抗なく君を家族の一員として迎え入れることが出来た。

 どうみても父上と君の血縁関係は明白だったからね。

 私たち家族が桃髪(ピンクヘアー)に慣れていたことも大きかった。

 誰にもその髪が発現しなかったせいで、我々も忘れかけていたのだが」


 男爵様(兄上)がため息をついた。

「これまでは気にも留めてなかったのだが、セレニア様に教えられてご先祖について調べてみた。

 すると4代前の男爵家当主に輿入れした方が桃髪(ピンクヘアー)だったことが判った」

 随分前だ。

 それでは直接知っている人はみんな亡くなってしまっているだろうね。

 それどころか伝聞すら途絶えてしまっている可能性が高い。

 実際、これまで誰も気にしてなかったみたいだし。


「その方がミストア神聖国の出だと?」

「そうだ。

 ミストアは封建制国家ではないから貴族もいないのだが、その方は傍系とはいえ重要な家系の子女だったらしい。

 政変、というには小規模だが、ミストアのお家騒動に巻き込まれてテレジアに亡命してこられた方だったそうだ」


 やんごとなき身分の方だったんだろうね。

 亡命するってことは、そうしないと命が危ないということだ。

 それでなくてもミストアでは桃髪(ピンクヘアー)は特別な立場にありそうだし。

 神託宮だったっけ?

 本来なら支配階級の一員だったのでは。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒロインというよりサエラ男爵家の吸引力のようなモノが凄まじい
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