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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第六章 領主

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206.サエラ男爵

 晩餐の後は、何か疲れたのですぐに寝てしまった。

 ちなみに寝台(ベッド)も超巨大で寝心地は最高というか、離宮(タウンハウス)の私のお部屋の寝台(ベッド)と甲乙付けがたかった。


 翌朝、例によってお風呂と朝食の後、早速謁見にとりかかる。

 それ専用のお部屋があって玉座みたいな椅子に腰掛けて待つ私の前に、次々と人がやってきては挨拶して去って行く。

 私は出来るだけお声がけはしたけど、何せまったく知らない人たちばかりだからね。

 どうしても形式的なものになってしまった。

 それでも皆さん、なんだか嬉しそうだったけど。


「歓迎されていると思って良いのよね」

「はい。

 久しぶりにこの地の真の領主が定まったわけですので」

「何で嬉しいの?

 これまでも領主はいたでしょうに」

「領主代行でございます。

 代行の任務は(つつが)なく領地を治めることです。

 災害や天候不順などによる問題には対処しますが、何か新しいことを始めたり発展させたりすることは禁じられておりましたので」


 なるほど。

 王家としてはこの領地で何かとんでもないことが始まったりしないようにしておいたと。

 預かっているだけとはいえテレジア公爵領だもんね。

 藪を突いたら何が出てくるか判らない。

 なので、領主代行者はなるべく波風が立たないように、無難に運営することが求められたと。

 でもそれ、私が領主になっても同じなんだけど?


「殿下のお噂はテレジア公爵領にも伝わっております」

 あれが?

 雌虎(タイグリス)とか血まみれ公爵とか。

 そんなもんを歓迎するって。

「いえ。

 歌劇(オペラ)成功(ヒット)や離宮を賜ったことなどですな。

 それに何と言ってもテレジア公爵が新しく就任したことで雇用が」


 ああ、そうか。

 今まで王都直轄領だったから、それなりの人は雇われてはいたんだけど、どうしてもそれ、王室関係になるのよね。

 代理領主や高級官僚、あるいは近衛騎士団なんかはもろに王家の臣下だし。

 領主がいないんだから、普通の領地よりその分回るお金が少なくなる。

 でもテレジア公爵()が出てきたことで、例えばこのお屋敷が開かれるし王都の離宮(タウンハウス)でも人が必要になる。

 地元の人にとっては職がそれだけ増えることになるし、それに伴ってお金も回る。


「つまり、皆さんは私がテレジア公爵領(ここ)で何か始めると期待しているのか」

「はい。

 歌劇(オペラ)を成功させた殿下には大いに期待がかかっているようで」

 あれ、私がやったんじゃないんだけどなあ。

 まあいい。

 雇用が増えたのは事実だろうし、新しく何かを始める人がいるんだったら後援してあげてもいい。

 ていうか学院に研究室が出来るんだった。


 でもあれ、テレジア公爵領にはあんまり関係なさそう。

 過度に期待されても困るけど、出来ることはやりますよ。

 私は命令する(言う)だけだけど。


 2日ほどかかってテレジア公爵領の主立った人と謁見し、その夜はパーティが開かれた。

 私は最初の方だけ出てちょっと演説してすぐに引っ込んだ。

 偉い人はそのくらいが丁度良いらしい。

 後は無礼講で皆さんに楽しんで貰った。


 ああ、やっと終わったと思っていたら専任執事(コレル)が言った。

「謁見を願い出ている方がおります」

「まだいたの?」

 少なくとも管理職級の人たちには全員会ったと思ったんだけど。

「貴族でございます」

「先触れもなく?

 無礼じゃない?」

「極秘裏に、ということで」


 まあ専任執事(コレル)が言うんだから必要な事なんでしょう。

 ということで私はパーティ演説用衣装(ドレス)のまま応接室に向かった。

 専任侍女(サンディ)に先導されて部屋に入ると窓際で外を見ている人がいた。

 あの後ろ姿は!


サエラ男爵(兄上)様!

 いらしてたんですか」

 振り向いた美兄(イケオジ)は破顔すると、私の前まで歩いてきて片膝をついた。

「サエラでございます」

「お兄様!

 そんなことしないで下さい」

「まあ、けじめだからね」


 ニヤリと笑って立ち上がる。

 ああ、やっぱりイケオジだ。

 国王陛下とかロンバートとかもイケオジだけど、私の好みってモロに兄上なのよね。

 多分、刷り込みが入ってはいると思うんだけど。

 だって孤児だった私を初めて肉親と呼んでくれた方だし。

 それどころか庇護を与えてくれた。


「坐ろうか」

「はい」

 公爵と男爵じゃなくて妹と兄として動くのってこんなに嬉しいんだ。

 向かい合って坐る。

 専任メイド(グレース)がお茶を配膳してくれて、そのままワゴンを押して出て行ってしまった。

 専任侍女(サンディ)も「御用がありましたら鈴をお鳴らし下さい」と言って去った。

 何て気が利く使用人たちなんだろう。

 つまり、私はテレジア公爵じゃなくてマリアンヌとして振る舞って良いのね。


「元気そうで何よりだ。

 更に綺麗になったね」

 兄上(イケオジ)が殺し文句を吐いてくる。

 こういう所は天然なのよね。


「ありがとうございます」

「……挨拶が遅れて悪かった。

 公爵に一介の男爵が会いに行くと言うのもね」

「正解だと思います。

 下手に(おおやけ)にすると、サエラ男爵家にご迷惑をおかけすることになるでしょうし」


 兄上はげんなりした表情になった。

「もう(おおやけ)になっているよ。

 おかげで五月蠅いの何の。

 いくらサエラ男爵家(うち)はテレジア公爵家と関係ないと言っても納得しない連中が多くて」

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― 新着の感想 ―
[一言] テレジア公爵とサエラ男爵家の繋がりはちょっと調べればわかりますもんねぇ 公爵に直接は無理でも男爵相手なら高位貴族からの無茶振りいくらでも飛んで来てそうで大変だぁ 横暴で無い限りは下位貴族が高…
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