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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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201.地ならし

 そう、公爵自身の裁量で使える金額というか予算はあるのよね。

 これまで無かったものだから新参者が加入する余地は十分ある。

 もちろん、公爵だからといって勝手に使えるわけじゃないけど、それでも私の希望を通すくらいは出来るはず。


(マリアンヌ)個人の取引ということでお願い出来ないかな」

 聞いてみたらエリザベスが破顔した。

「十分!

 大規模じゃないのならむしろ歓迎よ。

 カリーネン男爵家じゃなくて(エリザベス)個人の実績に出来るし」


 エリザベスの話によれば、カリーネン男爵家が家業として、つまり男爵の名の下に行う取引は大規模なものだけだそうだ。

 それこそ王家や高位貴族家自体に関わってくるような商売で、それ以下の細々とした取引はそれぞれ男爵家のどなたかが個人裁量で行うらしい。

 だからテレジア公爵がちょっとした嗜好品や物資の調達を頼むとしたら、それはエリザベス個人の商売になるとか。


「大丈夫なの?」

男爵(父上)には了解を得ているわ。

 そもそも貴方(マリアンヌ)との関係は(エリザベス)が自力で開拓したものだしね。

 カリーネン家は関係ない」

「そうなの」

「それにカリーネン家は名が知れているからね。

 大っぴらにテレジア公爵家と商売を始めたら周り中から叩かれる恐れがある」


 商売の世界も難しいものね。

 でもそうか。

 予算は有限だ。

 だからカリーネン家が割り込んだらどこかの家が押しのけられることになる。

 商売仁義というか、そういうものに反することになるらしい。


「エリザベス個人はいいの?」

「私は新規で商売を始めるから。

 貴方(マリアンヌ)とは学院時代からの友人だった、ということならみんな納得する」

 上手くやったな、という評価になるだけだそうだ。


「それは良かった」

「それでも仁義はあるからね。

 だから貴方(マリアンヌ)も私を贔屓なんかしなくてもいいわよ。

 入札でも競売でも何でも真っ当にやるから」

 頼もしい限りね。


 聞いてみたらエリザベスは既に私の侍女見習い(お茶会仲間)とはちょっとした御用聞き的な商売を請け負っているそうだ。

 物資を調達したり根回ししたり。

 コネの使い方が上手い。

 エリザベスは私なんかが心配しなくても逞しくやって行けるんだろうな。


 ということで、エリザベスにはとりあえずテレジア公爵()の御用聞きになって貰うことにする。

 ついでに侍女見習いにならないかと聞いてみたけど断られた。

 テレジア公爵家の外から私を支援する方が効率的に動けるそうだ。

 有り難い。

 定期的にお茶する約束をして別れる。

 久しぶりに楽しい時間だった。


「エリザベス様は殿下の真のご友人でございますね」

 専任メイド(グレース)が食器を片付けながら言った。

「そうかな」

「殿下が公爵位を得られても態度がお変わりになられませんでした。

 そのようなご友人は(まれ)でございます。

 大切になさって下さい」

「うん。

 ありがとう」


 エリザベスは(ヒロイン)のサポートキャラだからね。

 そういう設定が生きているのか、あるいは偶然なのかは判らないけど、攻略対象の情報(データ)を教えてくれるだけじゃないってことか。


 でも私の前世の人が読んでいた小説の展開で、元のままなのはエリザベスくらいなものになってしまった。

 そもそも乙女ゲームやってないし、学院はアレだし、(マリアンヌ)なんか元の立場からかけ離れている。

 私の出身が(おおやけ)になった辺りで小説は止まっているというか、その先を読んでないから何とも言えないんだけど、これからどうなるのか見当もつかない。

 小説には少なくともハイロンドとかライロケルとかは出てこなかった気がする。

 読んでない後半では出てきたかもしれないけど。

 まあいい。

 私は現状で最善を尽くすだけだ。


 相変わらず王家の皆さんが逃げている間に季節が変わって秋になった。

 テレジア公爵領も農地の刈り入れが終わって落ち着いてきたということで、そろそろ視察に、という話になったんだけど。

 ある日の午後、母上と祖母上に呼ばれてガゼボに行くといきなり言われた。

(わたくし)たちは引き上げます」

「大体、地ならしは済んだ。

 テレジア国内はもう大丈夫だ」


 さいですか。

 地ならしね。

 なぜか巨大化した母上と祖母上の群れが何もかもを踏み潰しながら進軍していくというイメージが浮かんだけど、何なんだろう。

 何やってたのかは知らないけど、確かに貴族の反発が治まってきたと家令(ヒース)が言っていた。

 母上たちが色々圧力をかけたらしい。

 別に頼んだわけじゃないけど、助かったことは確かなのよね。


「ありがとうございました」

「親として頼られたり甘えて貰えなかったのは残念だがな」

「本当に。

 とうに独り立ちしてしまっていたのね、マリアンヌ」

 そうせざるを得なかったのはあんたらのせいでしょうが、という悪態が心の底から沸いて出たけど、もちろん顔にも態度にも出さない。

 公爵、いや貴族としての礼儀(マナー)だ。


 どっちかというとこのお二人なら、むしろそういう反応を見せた方が喜びそうだけど。

 私があまりにも冷静(クレバー)なので戸惑っているというか。

 親や祖母としては、子供や孫らしく甘えたり反発したり我が儘言ったりして欲しかったそうだ。

 いやないから。


 私も成人(デビュタント)したし、もう16歳だ。

 というよりはむしろ17歳近い。

 本当ならとっくにどっかに輿入れなりしている歳なのよ。

 今更子供らしくというのは無理がある。

 でも親や祖母からしたら、まだまだひよっ子なんだろうね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白くて一気読みしたらもう追いついてしまいました 応援してます! 最初期に主人公がエリザベスに攻略対象らの探りのつもりで名前と爵位全部語って全滅してたってオチありましたが 今思うとこれ相当…
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