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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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197.ズラ疑惑

 ふーん。

 まあ、私も私の前世の人も貴族じゃないから、その辺りについてはよく判らないけど。

 それでも王家が交代したという前代未聞な事態もテレジアに限っては他の国ほどの重大事ではないということは判った。

 そういえば国王陛下も何だか嫌々やっているような雰囲気だったものね。

 隙あらばこっちに王位を投げ返してきそうで嫌だ。


 そうだ。

「私、というよりはテレジア公爵家って派閥を作ったりしなくてもいいの?」

 聞いてみた。

 だって高位貴族家ってそういうものでしょう。

「ことさらに配下を揃える必要はないかと。

 殿下が国政に積極的に関わりたいというのでしたら別でございますが」


 やだよ。

 誰がそんな面倒くさいことをしたいと思うか。

 普通の貴族としてもアップアップなのに。

 テレジア公爵領は領地貴族領としては伯爵レベルの広さしかないんだけど、割合に何でも揃っていて、よその領地や国に頼らなければやっていけないようなことはない。

 自主独立出来そうだし、それどころかテレジア国内でも屈指の豊かな土地だ。

 私としてはここを(つつが)なく運営していけばそれでいいと思っているんだけど。


「いずれは」

 そうよね。

 貴族、それも高位の領地持ちの場合は後継者が必須だ。

 私の場合、最終的には婿を取って子供を作らなければならないらしい。

 もちろん養子をとってもいいんだけど、王家や公爵家は血の継承を第一義とするから、出来れば自分で産んで欲しいそうだ。

 せっかくまとまっている王家と公爵家の関係に不純物が混じるのは困ると言われてしまった。

 そんなこと言いだしたら(マリアンヌ)自身が不純物そのものな気がするんだけど。


「殿下は純粋な王家の血統に連なる貴顕でございます」

 グレースに言っても無駄だった。

 まあ、そんなことはいい。

 私はとりあえず波風を立たせたくないだけだ。

 母上や祖母上も不気味なほど静かで、恐れていたようなことは起こらなかった。

 それで気が緩んだのが拙かったのかもしれない。


 ある日、朝食後に家令見習い(アーサー)から本日の予定を聞いていると聞き慣れない単語が混じった。

「ミストア神聖国からの使者?」

「はい。

 是非ともお目通りさせて頂きたいと」

 何だろう?


 ミストア神聖国はちょっと特殊な国だ。

 王国や皇国、帝国みたいに国王なり皇帝なりがいて統治・支配する体制ではなくて、国家のトップは法皇だ。

 王政府の代わりに神聖庁とかいう役所があって統治を行っている。

 その上に教会がある。

 形態としては私の前世の人の記憶にあるバチカンとかいう宗教国家に似ている。

 つまりミストア教という宗教団体の総本山がミストア神聖国を名乗っていて、大陸中の教会はその配下だ。

 私が育ったサエラ男爵領の教会もこのミストア教の下部組織なんだけど、あまり権威主義的じゃないのよね。

 宗教というよりは慈善団体みたいなかんじ?

 よく知らないけど。


「私に何か関係があるの?」

「明らかにされておられません。

 理由は不明ですが謁見を願い出ております」

 お会いになりますか? と聞かれたから頷いておく。

 ミストア神聖語は学院で習ったから日常会話なら何とかなる。

 何であんな言葉を習わなきゃいけないのかと思ってたけど、学院もなかなか役に立つ。


 それでも不安はあるので、念のためにミストア神聖語に堪能な王家派遣の侍女さんに控えて貰うことにした。

 さあて何が出るんだろう。

 例によってテレジア公爵家の色のドレスを纏って応接室で待っていると訪問者が来たらしくて誰何(すいか)の声がした。

「ミストア神聖国公使ご一行様です」

「入室を許可する」


 ドアが開いてゾロゾロと入ってくる人たち。

 一様に黒っぽい僧服を纏っている。

 そういえば教会の聖職者の制服がこういうのだった。

 私が育った孤児院は教会付属なんだけど、組織としては独立していて、あんまり聖職者とは会わなかったんだよね。

 時々説教しにくる人がいただけで、ほぼ没交渉だったような。


 ミストア神聖国の公使さんたちは頭を下げたまま整列した。

 えーと。

 とりあえずミストア神聖語で言ってみる。

『どうぞ、頭を上げて下さい』

 でいいんだよね?

 一斉に顔を見せる公使さんたち。

 聖職者といっても特に変わったことはないなあとか思っていたら、皆さんが酷く動揺していた。


「……これは!」

「まさか本当に」

「何ということだ……」

 え?

 私の顔に何かついてる?

 すると一番前の人が深く頭を下げた。

「失礼致しました。

 ミストア神聖国のエバンレと申します。

 このたび、テレジア王国駐在公使に任命されました」


 良かった。

 テレジア語だ。

「……ああ、テレジア公爵のマリアンヌだ。

 して、どのようなご用件なのかな?」

 とりあえず無難に返しておく。

 私の口調が変だと思うでしょうが、これって定型(パターン)だから。


 するとエバンレと名乗った壮年の人は私の顔をじっと見つめながら言った。

「申し上げます。

 失礼でございますが、マリアンヌ様におかれましてはその御髪(おぐし)は自毛なのでしょうか」

 何を言い出す!

 失礼な。

 ヅラだと思われた?


「生まれた時からこの髪だが?

 ちなみに私の父上も同じだ」

 つっけんどんな反応になってしまった。

 だっていきなりヅラ疑惑をぶつけられたんだよ?

 もっと怒ってもいいくらいだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 〉テレジア王国公使 これだと「テレジア王国の公使」の意味になってしませんません? 「テレジア王国駐在(ミストア神聖国)公使」かと。
[一言] 乙女ゲーの世界ならピンク髪の女の伝説は腐るほどありそう。主に貴族社会で。
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