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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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194.古き青き血

 無理だよね。

 そういう事か。

 母上が私と一緒に男爵家にいれば、いずれはバレる。

 私の王家の瞳から遡及して母上の生まれが暴かれたらスキャンダル一直線だ。


「……なるほど」

「すまなかった」

 母上が頭を下げた。

「私がサエラ男爵領、いやテレジアに留まることも、御前(マリアンヌ)を連れてハイロンドに戻ることも出来なかった。

 男爵家に残すことすら無理だ。

 養子などは問題外。

 だから、断腸の思いで孤児院に預けた。

 言い訳のしようがない」


(わたくし)共がふがいないせいで、貴方(マリアンヌ)には大変な思いをさせてしまいました。

 孤児として育つだけではなく、肉親に捨てられたという状況に突き落としたのはすべて(わたくし)たちの責任です」

 揃って頭を下げるハイロンド王太后殿下(シェルフィル様)ライロケルの皇妃陛下(セレニア様)

 うわー。

 私、もの凄い優位(アドバンテージ)もらっちゃってない?

 これって私が何か頼んだら全部実現しそうだ。

 やだなあ。


「お顔を上げて下さい」

 とりあえず言っておく。

「理由は判りました。

 それでですね。

 私、別に怒っているとか恨んでいるとかありませんので」

 これは本当。

 そもそも私、別に不幸だとか愛がなかったとか思ってないし。

 我ながら変だとは思うけど、未だにこの人たちが親や祖母だとは思えない。

 ていうか理解はしているんだけど、だからといって肉親に甘えたいとか我が儘言いたいとかまったくなかったりして。

 やっぱり私、人間としてどっか壊れているのかも。


「そうなのか?

 確かに態度が淡々としすぎている気はしていたが」

「もっと反発されたり無視されたりも覚悟していたのですけど」

 いや、よその国の王太后殿下や皇妃陛下にそんなこと出来るはずないでしょ。

 それに、自分でも不思議なくらい何も感じないのよね。

 やっぱり私はどこかおかしいんだろうな。


「本当に私は大丈夫ですから」

「そうか。

 だが、御前(マリアンヌ)が怒っていないからといって、私たちがやった事が許されたり忘れられたりしていいはずがない。

 これまで何も出来なかった分、これからは期待していてくれ」

「というよりは何か希望はありますか?

 私共の力の及ぶ限り、何でもしてさしあげますよ」


 うわあ。

 やっと判ったというか、納得した。

 テレジア王家が私を公爵にした、いやむしろせざるを得なかった理由。

 諸外国からの圧力が凄かったのよね。

 この状態で、もし私が不審死でも遂げたりしたらハイロンドとライロケルを筆頭に複数の国がテレジアの敵に回ったかもしれない。

 それでなくても男爵家の庶子として引き取ったはいいけど、ミルガスト伯爵家のタウンハウスで使用人扱いをしてしまった。

 母上や祖母上にとってはそれって言語道断なふるまいだ。

 私らの娘や孫に何をする、喧嘩売ってるのか? と聞きたいくらい侮辱的な行為なのよ。

 いやいやそんなことはありませんよ、と内外に示すために私を公爵にするしかなかったという。


 それ以外にも理由があったんだろうね。

 私が孤児や男爵家の庶子のままだったら政治的な圧力に耐えかねて外国に持って行かれるかもしれない。

 何せ実の母親や祖母だ。

 肉親を引き取るというのはごく真っ当な理由でしかない。

 でもそれ、テレジアにしてみたらハイロンドやライロケルに切り札(ジョーカー)を奪われるようなものだ。


 だって私、テレジア旧王家やゼリナの王家の血を引いているどころかむしろ直系といっていい。

 それを言ったら母上(セレニア様)がそのものズバリなんだけど、母上は既にライロケルの皇妃だからよその王家とは縁を切っているとみなせる。

 旗印にはなり得ないのよ。

 でも無色の私なら。


「判りました。

 何かありましたら、遠慮無く頼らせて頂きます」

 とりあえず無難に切り抜けるために言っておく。

 お願いだから何も起こらないで(泣)。

「そうか。

 いつでも言ってくれ」

「私たちはいつまでも貴方(マリアンヌ)の我が儘を待っていますよ」

 怖いから言わないよ、そんなの。

 とにかく穏便に。


「それはともかく、お二方はいつまでテレジアにいらっしゃるのでしょうか」

 強引に話題を変える。

 これ以上はちょっと耐えられないし。

 それにこの方達、それぞれ一国の支配者階級なのよ。

 いつまでも国を留守にしていいのか。


「そうだな。

 とりあえず、テレジア国内で御前(マリアンヌ)に逆らう奴がいなくなるまでは滞在する予定だ」

テレジア国王陛下(ランソム)から勅命を頂いたと聞きましたよ。

 それを実現するための体制が整うまでは留まります」

 あー。

 詰んだか?

 いやそんなことはない。

 でもこうなったらなるべく早くお国に戻って貰えるように頑張るしかないか。

 陛下もあんなこと言わなきゃいいのに。


 でも効果的な命令ではあるよね。

 たった一言で、ハイロンドとライロケルの王家を味方につけてしまった。

 私が何も出来なくてもいいのよ。

 お二方がテレジアに居るというだけで両国は少なくとも敵対はしてこないだろうし。

 まあ、お二方は別に国王とか皇王じゃないから無条件に安心は出来ないけど、誰かが言っていたように国際外交における影響力は絶大らしいし。

 結局は私、王家にいいように利用されているんだなあ。

 これこそ、さすがは古き青き血というところか。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 原作のお花畑ちゃんのままだったら、ある程度までは罪悪感もあって見逃されてもラインを越えてしまい見えない後ろ盾に見放されて破滅するんだろうな。 自爆で関係各位にざまぁするスタイル。 [一…
[一言] ようやく祖母と母が主人公に謝りましたか。 主人公が恨む事無く、気にしていなくても、立場上仕方が無い状況でも謝罪なしで自己弁護の様な話ばかり聞かされるとモヤモヤしていました。 少し遅い気がしま…
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