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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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192.メイド

 私が離宮の中庭にあるガゼボでぼんやりしていると、やっぱり押しかけて来る人たちがいる。

「ごきげんよう」

「今日も可愛いな、私の娘は」

 さいですか。

 自分の娘や孫だからといって、よその国の公爵に「可愛い」はいかがなものか。


「祖母上、母上、ごきげんよう。

 それで何か?」

「いや?

 可愛い娘と親交をだな」

(わたくし)たちはまだ会話が足りないと思いますのよ」

 人の話なんか聞いちゃいねぇ。

 まあいい。

 私も話したいことがないでもない。


「それでは」

 専任メイド(グレース)が配下のメイドを指揮して配膳してくれてから下がると私たちだけになった。

 母上や祖母上の随員もいるけど控えてくれている。

 この集まり、身分だけみたら凄いよね。

 王太后と皇妃と公爵。

 普通の貴族からみても雲上人だ。

 しかも全員、国が違うという。


「それで?

 聞きたい事があるはずだが」

 母上がお茶のカップを掻き回しながら言った。

 この人、淑女というかご婦人なのになんか男前(イケメン)なのよね。

「はい。

 私の父上について」


 そう、考えてみたら私って父親のことをほとんど知らない。

 ていうか会ったこともない。

 男爵家に引き取られた時にはもう代替わりしてかなりたっていて、前男爵閣下ご夫婦は別邸かどこかに引っ込んでいたし。

 その後、私が学院に入るために王都に出てくるまで一切の接触がなかった。

 不自然なくらい。


「そうだね。

 サエラ男爵様のことを話そうか」

 母上、何でそんなにキザったらしいのですか?

 祖母上が澄ましてお茶を飲んでいる横で母上が話し始めた。


「私が会った頃のサエラ男爵様は、それはもう美中年(イケオジ)でな。

 とても成人した息子がいるとは思えないくらい若々しい上に熟年の魅力(オーラ)が」

 早速暴走しようとする母上を牽制する。

「確か、奥様がもと王宮の女官だったんですよね?」

「そうだ。

 当時の王妃殿下と近しかったらしくてな。

 私が使用人(メイド)をやってみたいと言ったら推薦して下さった」


「それはまた思い切った事を。

 当時、母上はハイロンドの王女だったんですよね」

「学院での身分はハイロンドの子爵家子女だったからな。

 侍女になるには知識と経験不足だから、とりあえずメイドから始めるかと」

 楽しそうに話す母上(セレニア様)

 何も言わずに坐っているだけの祖母上(シェルフィル様)

 この母娘、どうなってるんだよ。


祖母上(おばあさま)は何もおっしゃらなかったのでしょうか」

 つい気になって聞いてみたら平坦に返された。

「セレニアはもう成人式(デビュタント)を済ませていましたから。

 自分の事は自分で決めて良いと思いました。

 それに、当時の(わたくし)はハイロンド王宮での生き残り(サバイバル)で手一杯で」

 祖母上も結構ハードな状況だったらしい。


「私がメイドやりたいと思ったのもそのせいだ。

 王女どころか子爵家子女でもハイロンドのお家騒動に巻き込まれそうで。

 王女とは言っても私には王位継承権はなかったし、目の前にいるのならともかく消えてしまったらどうしようもなかろう」


 なるほど。

 緊急避難の意味もあったと。

 確かに学院を出て子爵家子女のままだったら誰から目を付けられそうだ。

 しかも本来の身分は王女だもんね。

 テレジアの王宮とかにいたらあっという間に連れ戻されそう。


「だから地方の貴族家で働こうと」

「そうだ。

 なるべく辺鄙な下位貴族家がいいと言ったらサエラ男爵家を紹介されて」

 そこで私の父上にお会いしたと。

「いや?

 新入りのメイドなんか領主様が認識するわけがないだろう。

 むしろ私が親しくなったのは奥方様だったよ」


 さいですか。

 聞いてみたら、母上は最初から奥方様とは面識があったそうだ。

 というのは当時のサエラ男爵夫人って王宮侍女だった時にテレジア公爵や祖母上と顔見知りだったんだよね。

 当然、お二人の娘である母上とも旧知の仲というか、母上にとってはずっと年上のお姉さん、いやむしろ母に近い存在だったらしい。


「私は自分で言うのも何だが人に媚びるのが上手くてな。

 当時の王宮や離宮にいた人達の大半から可愛がって貰っていた」

 やはりか。

 どうも母上ってヒロインというよりは悪女的な印象(イメージ)があるのよね。

 ていうかそれこそ腹黒(ヒロイン)っぽいというか。

 私なんかよりよっぽど逆ハーやりそうな。


「それで?」

「紹介状を貰ってサエラ男爵邸で働き出したんだが、最初から男爵付きにされてな。

 どうも奥方様が手配したらしい」

 それはそうだよ。

 だってメイドのふりをしているけどハイロンドの王女だよ?

 下手に使用人の中に放り込んだらどんな無礼があるか判らない。

 かといって正体はバラせないしね。


「それにしても不用心過ぎませんか。

 お一人で外国の貴族家で働くなんて」

「いや?

 私のお付きが数人いて、みんな一緒に雇って貰った。

 さすがに王女を一人で外国にやるわけがないだろう」


 それもそうか。

 私の前世の人が読んでいた乙女ゲーム小説にも外国の王子とか王女が出てくるんだけど、そういう人たちは絶対に一人では動かなかった。

 お付きというか護衛というかが一緒に留学するんだよね。

 もちろん身分は偽装するけど。


「すると母上にも側近がいたと」

「無論だ。

 今もいるぞ」

 母上がちらっと視線を投げるとその先に侍女やメイドが集まっていた。

 サンディやグレースと一緒にいる知らないお仕着せの人たちがそれか。

「ライロケルにもついて行ったと」

「貴顕の側近とはそういうものだ」

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― 新着の感想 ―
[一言] でも遠くから護衛こそすれども、娘のすぐ近くには誰もつけないママ…
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