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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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187.大学院

「でも大丈夫なのでしょうか」

 心配になって聞いてみた。

(わたくし)のような者について下さるのは本当にありがたく思いますが、皆様のこれからの職歴(キャリア)の邪魔になるのではと」


 笑い飛ばされた。

「とんでもないことでございます!」

「今をときめくテレジア公爵家にお仕え出来る機会ですのよ。

 祖父からお話を伺った時には、はしたなくも飛び上がって喜んでしまいました」

「公爵家で侍女見習いを務めたという経歴は、それだけで勲章でございます」

「出来れば(つつが)なくお務めして、いずれは正式な侍女にして頂いて末永く殿下にお仕え致したく」

 意外。

 てっきり皆様、派閥の関係で無理矢理奉公されられたんだと思っていたのに。


「ですが、これから輿入れなさるのでは」

「何の実績もなく輿入れするのと、公爵家で奉公した経験を持って入るのとでは重みが違ってきます。

 そのためなら数年くらい、延期するのは当然でございます」

「いえ、出来れば輿入れした後も侍女としてお仕えさせていただければ、と」

 うわっ。

 この人たち、本気だ。

 そうか。

 見習いと言われて勘違いしていた。

 単なる腰掛けじゃなくて就職の機会(チャンス)なのか。

 やっぱり私の前世の人の世界で言う研修生(インターン)って奴?


 確かによく考えてみたら公爵家って凄い優良企業みたいなものだしね。

 その辺の伯爵家とかに比べたら格も安定度も桁違いだ。

 それに侍女なら既婚が当たり前だし、何なら夫婦で公爵家に仕えるという手もある。

 あ、そういうことか。

 グレースなんか旦那様が公爵家近衛騎士だし本人は専任メイドだ。

 むしろそういう形が当たり前(デフォルト)か。

 サンディはどうなんだろうか。

 まあいいや。


「皆様のお役に立てれば嬉しいのですが」

「むしろ(わたくし)共がマリアンヌ様(殿下)のお眼鏡にかなうかどうかが心配でございます。

 精一杯、務めさせて頂きます」

 モルズ様じゃなかったユベニア様が言い切って頭を下げた。

 その他の皆様も習う。

 もう何も言えないよね。


「判りました。

 これからよろしくお願いしますね」

 適当に言って、それからは歓談した。

 私が男爵家子女だった頃と同じ構図だけど立場が激変してしまった。

 なので礼儀(マナー)で何か気づくことがあったらビシビシ指摘してくれるようにお願いしておいた。

「殿下。

 (わたくし)共は御身の配下でございます。

 お願いではなくご命令を」

 早速、駄目出しされた(泣)。


 でもそれもそうだ。

 公爵令嬢ならまだしも爵位持ちが侍女見習いに「お願い」するってあり得ない。

 でも露骨に命令したくはないのよね。

 それではお友達ではなくなってしまう。

 そうだ。


「あの、伺いたいことがあるのですが」

 言ったら即答された。

「何なりと」

「では。

 上手く言えないのでございますが、(わたくし)はあまりにも急に叙爵されてしまいました。

 知識は家庭教師の先生方に教えて貰えますが、貴族に知己がほとんどいないのでございます。

 これでは貴族家としてまともにやっていくことが難しいのではないかと」


 ぶちまけた。

 だって切実な問題なのよ。

 まず、私には現時点で対等に付き合える存在がいない。

 公爵位という、王家を除けば最高位の身分にされてしまったため他の貴族はほとんど「下」になってしまった。

 同じ公爵位の方々は皆さん高齢で殿方。

 とても「親しく」付き合える気がしない。


 世代も違う。

 私と同世代ならほぼ爵位は持ってないだろうし、高位貴族家の子息息女でも子爵がせいぜいだ。

 私が出て言ったら皆さん跪くしかないのよね。

 考えてみたらモルズ様、じゃなくてユベニア様たちも同じなんだけど、この方々は私に慣れていらっしゃるから何らかの解決策があるのではないかと。


「……そうですわね」

 皆さん、黙ってしまった。

 無茶振りだったか。


「そういえば」

 ルミア様が遠慮がちにおっしゃった。

「マリアンヌ様は陛下から何かお役を頂いたのではありませんか」

 おお。

 やはりルミア様か。

 この方、4人の中では一番目立たないんだけど、多分一番頭が切れる。

 グループの頭脳だ。


「テレジアの渉外を担当せよ、との勅命を頂きました」

 多分ルミア様はご存じだ。

 何せお父上が国王陛下の懐刀。

 むしろサラーニア伯爵様のアイデアだったのでは。

「それでは御用に必要なのですから要員(スタッフ)を集めたらいかがでしょうか」

 ズバリ解決策? を投げ込んでくる参謀(ルミア様)


要員(スタッフ)でございますか」

「はい。

 マリアンヌ様がお役を果たすためには手足や眼・耳となって働く配下が必要でございます。

 技能有識者を集めて事務所を開設すれば良いかと」

「……その方々はどうやって」


「学院でございます」

 簡単に言ってのける参謀(ルミア様)

「学院には無役で優秀な方があまたおられます。

 マリアンヌ様はその中から有用な方を拾い上げればよろしいかと。

 既にどちらかで働いておられる方を引き抜くのは難しい上、おそらく年齢的にマリアンヌ様とは合わないと思われます。

 その点、学院に在学していらっしゃる方々はそれほどお歳を召していないので」


「ああ、それは良い(アイデア)ですね」

 ヒルデガット様、じゃなくてモーリン様が爽やかに言った。

「失礼ながらマリアンヌ様はご存じないかと思いますが、学院ではより高度な知識や技能を得るための講座で学んでいる方々がいらっしゃいます。

 大抵の方は基礎教育を終えると退学するのですが、王宮や王政府の高官向けの講座に所属しながら働いておられる方もおいでになるので」


「そのような方々が」

 知らなかった。

 でも有り得る。

 私の前世の人の世界で言う大学院とかそういう組織か。

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