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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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175.遺伝

「それで祖母上はハイロンドの王妃になられたのですね」

「はい。

 連れ子のセレニアもハイロンドの王女として認めて頂きました。

 もっとも王位継承権はございませんが」

 それはそうでしょう。

 だって母上(セレニア様)はハイロンド王家の血を引いてないんだし。


「私もその頃には状況が判っていたからな。

 大人しくハイロンドでデビュタントしたんだが」

 何かうんざりした表情になる母上(セレニア様)

「母上が懐妊しちまって」

 え。

 それって。


(わたくし)にも予想外で」

 祖母上(シェルフィル様)もさすがに紅くなっている。

「それはまた」

 絶句していると祖母上(シェルフィル様)が扇で顔を隠しながら続けた。

「どうも(わたくし)は子供が出来やすい身体(たち)のようで」

「最初に産まれたのは男の子だったが、次から次へと生まれるんだ。

 だから私には年の離れた弟や妹がたくさんいる。

 御前(マリアンヌ)には叔父や叔母になるな」

 母上(セレニア様)、何か投げやりですね。

 あれ?


祖母上(シェルフィル様)はハイロンドの王太后殿下でございますよね?

 ハイロンドの次代の国王陛下は係累からお迎えするというお話は」

「なくなった。

 正統な嫡子が出来たんだからな。

 当然、私の弟が王太子で次の国王だ。

 実際、そうなっている」


 簡単に言われますけど。

 それってつまり、今のハイロンド国王陛下って母上の弟君ですよね?

 つまり。

「そう、御前(マリアンヌ)の血の繋がった叔父だ。

 まだ若いんだが国王陛下(義父)が引退したいと言って逃げてしまって即位した」


 何てこったーっ!

 それはヤバい。

 ヤバ過ぎる。

 私ってテレジア前王家の直系でゼリナ王家の係累というだけじゃなくて、現ハイロンド国王の姪ということになるじゃないの!

 何その後付け設定。

 あれ?


「ハイロンドの前国王陛下は失礼ですがお隠れに?」

 気になって聞いてみた。

 だって祖母上(シェルフィル様)がテレジアに来たりして自由すぎない?

「もちろんお元気ですよ?

 年若い陛下を支援(サポート)していらっしゃいます」

 それって院政なのでは。


「母上は外交という役割で世界中を飛び回っている。

 という名目で遊び回っているのよね?」

 私の母上(セレニア様)がからかうように言った。

「失礼な。

 遊んでなどおりません」

「そうかなあ。

 ハイロンドの王太后と言えば神出鬼没で有名なんだが」


 うーん。

 本当に私の祖母上(ばあちゃん)はとんでもないな。

 舞踏会で婚約破棄されて修道院に行ったというと薄幸の貴族令嬢そのものだけど、そんな印象(イメージ)がまったくない。

 多分、テレジアの王妃になったとしても上手くやれたんじゃないかな。

 うん。

 この(したた)かさは間違いなく私の祖母だ(泣)。


 さて。

 祖母上(シェルフィル様)については大体判った。

 でも母上(セレニア様)はもっと謎だ。

「何か聞きたそうだな」

「もちろんです。

 私の実の母上なんですよね?」

「おう。

 悪かったな。

 母親としての役割は完全放棄だから言い訳のしようがないが」

「それはいいのですが」

 いや、良くはないけどもう過ぎたことだし。

 ていうかこの母上に育てられるより孤児院の方がマシだった気もする。


「母上はテレジアで生まれてゼリナで王女としてデビュタントして、ハイロンドの王女になったと」

「そうだが」

「それが何でライロケルの皇妃に?

 いえ、その前に私を産んだはずなのでは」

 全然繋がらない。

 しかも私の父親は前サエラ男爵だという。

 どうしてそうなる。


「話せば長い理由(わけ)があってだな」

「話して下さい」

「まあ、仕方がないか。

 腹が減ったな」

 突然横道に逸れる母上(セレニア様)

 やっぱこの人、祖母上(シェルフィル様)の娘で私の母親だ(泣)。


 王妃様の頷きでメイドさんたちが静々とやってきてテーブルを片付ける。

 すぐにワゴンを押してきたメイドさんたちが数人がかりで新しい食卓(セット)を広げた。

 やっぱりアフタヌーン・ティーだ。

 昼餐(ランチ)なんじゃないかと思えるくらい大量のサンドイッチやケーキやクッキーや、その他の食材が並べられた。

 お茶はポットが何種類も。


 母上(セレニア様)は鷹揚に「ご苦労」と声を掛けて食べ始めた。

 がっついているように見えて動作が優雅だ。

 観察していて気がついた。

 優雅に見えるのは無駄な動きが一切ないからだ。

 流れるようにケーキにナイフを入れてフォークに載せて口へ。

 洗練された礼儀(マナー)を感じる。

 これがライロケル皇国の皇妃か。


「貴方、あいかわらずね」

 祖母上(シェルフィル様)が呆れたようにおっしゃった。

「それで太らないのはおかしいわよ?」

「そういう体質」

 切って捨てる母上(セレニア様)

 ああ、この人は間違いなく私の母上だ。

 大食いは遺伝か(泣)。

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― 新着の感想 ―
[一言] 痩せの大食い体質が母上にあって祖母上にないということは前公爵がそうだったのか
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