16.制服などない!
ところで私の前世の人の記憶に寄れば、学校に通う生徒は「制服」なるものを着用していたらしい。
学校側が決めたお揃いの服で、それを着ている者が学校の生徒であるという証明にもなるし、また身分を保障するためのツールだったそうで。
でもテレジア王立貴族学院にはそんなものはない。
だって生徒の身上が違いすぎる。
王家や高位貴族と下位貴族とでは文字通り財力が何桁も違うから。
そんな子弟に同じ服を着せる必要ってなくない?
それに生徒の身分はみんな一応は貴族だから、ことさらに証明する必要もない。
だから私を含めた女子生徒はみんなドレスで通学している。
別に着飾っているわけじゃなくて、貴族令嬢って基本的にはドレスしか持ってないのよ。
脱ぐのは自分の部屋でくらいかな。
それも寒かったらやっぱりドレスを着ている。
更に上に何か羽織る。
夜着はさすがにドレスではないけど、フリルとかがついてないだけで似たようなものだ。
気になったので男性はどうなのか執事の人に聞いてみたら教えてくれた。
「貴族階級の男性服は身分によって決められています。基本的に身分が上であればあるほど派手です」
「そうなのですか」
「実家のお役目によって使い分けることもありますが。
例えば騎士団の上位階級の方のご子息は騎士服だったりします」
執事の人は若いせいか気さくだった。
こういう話は面倒がらずに話してくれる。
あんまり話し相手がいないのかもしれない。
だって本人は爵位こそないけど貴族身分だし、周りはみんな平民だ。
その点、私も似たような身分だから礼儀を気にする必要がない。
「騎士じゃなくても着ていいんですか」
「騎士団の制服には階級章や略章が必須ですからね。無印だったら見習い以前ということです」
なるほど。
私の前世の人の記憶にある「こすぷれ」というものなのかも。
「法衣貴族の方は当たり前ですが法衣ですね。ご子息もそれに習うことが多いようです」
「つまり世襲すると?」
「ご自分も父上もそのおつもりであることを内外に示すことになります」
私の前世の人の記憶に寄れば、小説の中で王族の側近として宰相の息子さんなどが出てくるんだけど、そういう人たちはそうなるわけか。
服で職制と身分を示すのか。
それで騎士団長の甥とかもすぐに判ると。
勉強になります。




