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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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166.覚悟

「ということは私だけ?」

「さすがにそれは。

 御身が特に信頼する者なら同席可でございます。

 もちろん会話が聞こえない場所で控えさせて頂きますが」


 それはそうだ。

 私の前世の人の社会で流通していた娯楽作品だと、高貴な身分の方々が二人きりで会ったりしていたんだけど。

 実際には無理。

 護衛は必須だし雑用を担当する侍女や使用人(メイド)を伴う必要がある。

 だから高位貴族の侍女や専任メイドって立場が重いんだけどね。

 何かあったら殉死するくらいの覚悟が必要だと礼儀(マナー)の講義で教わった。


「なら……二人ともいい?」

 振り返ると専任侍女(サンディ)専任メイド(グレース)が即答した。

「「お心のままに」」

 前者は無表情で後者は歓喜の表情だった。

 性格が出ているなあ。

「ヒースはいいの?」

 聞いたら頷かれた。

「淑女の秘密は時として王家の秘事すら凌駕いたします。

 御身の判断でのちほどお聞かせ頂ければ」


 ふーん。

 潔いというか役割を弁えているというか。

 踏み込んではならない部分をちゃんと決めているんだろうな。

 まあいいや。

「判りました」

「では」


 王妃殿下のご用意ができ次第呼ばれるということで、私は一応予習しておくことにした。

 もちろん自分の国の王家のことだから予め調べてはある。

 現テレジア王家。

 驚いたことに現在の国王陛下はまだ二代目だ。

 前王家の国王陛下が退位というか譲位した時、跡を継いだのは当時の某公爵家当主だった。

 つまり公爵殿下だったんだけど、公爵位を継いでからあんまり時間がたってなかったらしいんだよね。

 前公爵が病気か何かで引退してしまって、まだ若いのに公爵位を押しつけられたとか。

 だからわずか数年のうちに公爵家嫡男→公爵→国王とスキップ昇格(違)したらしい。


 何でそんなことになったのかというと、他の公爵家がみんな辞退したから。

 たまたまだけど、当時の公爵家当主の方々は皆さんお揃いで結構いい歳だったそうだ。

 具体的には前国王と同世代。

 だから国王陛下を加えて公爵同士で遠慮無くやりとり出来ていたんだけど。

 未曾有の国家的危機に一致団結して立ち向かえたのも王家と公爵家ががっちり固まっていたからだったらしい。


 だけど、では次の国王を誰にするという話が出てきたら気まずい雰囲気になった。

 それはそうだよ。

 今までずっと対等だったのに、突然その中の一人が陛下になってしまうのだ。

 団結(スクラム)が崩れてしまいそうで、公爵の中で唯一新米(フレッシュ)だった現テレジア王家の当主に王位が押しつけられた。


 その公爵殿下は必死に抵抗したけど押し切られた。

 跡を継いだばかりの若造公爵が老獪な連中に抵抗出来るはずがない。

 しかも決定的だったのは、その公爵殿下がたまたまだけど「王家の瞳」持ちだったことだ。

 テレジアの王家と公爵家は長年の嫁取り婿入りで血が近くなっていたから、時々はそういうこともあったそうだ。

 更に既に生まれていた嫡男にも「王家の瞳」が発現していた。

 やはりテレジア王家は「王家の瞳」持ちでなくては、とか理屈を捏ねられて。

 あれよあれよという間に若いテレジア国王が誕生して、そのまま。


 新国王陛下は既婚で跡継ぎもいたため、新しい王家がここに誕生した。

 今の国王陛下はその時まだ幼くて、自分が公爵令息じゃなくて王子になってしまったことに後から気づいて慌てたらしいけどもう遅い。

 若くして即位した新国王はかなり長い間玉座に君臨し、嫡子が結婚して跡継ぎが出来てから退位したそうだ。


「王冠を譲る時は満面の笑みだったそうでございます」

 誰か詳しい人から聞いてきたグレースが教えてくれた。

「何で?」

「自分は代打(ピンチヒッター)だと最初から公言されておられたそうで。

 現在の国王陛下に王位を譲りたくてずっと待っておられたとのことで」

「そうなの。

 王妃殿下は反対しなかったの?」

「王妃殿下も公爵家の嫁になるだけでも覚悟が必要だったのに、気がついたら王妃にされていて大変だったと事あるごとにこぼされていたとか。

 大恋愛の末に結ばれたということですが、元は伯爵家の令嬢だったので」


 うん。

 判るよ。

 突然、考えてもいなかった立場を押しつけられたのよね。

 しかもみんな(ひざまず)いてくる。

 やってられないでしょう。


「それでもちゃんと国王と王妃を()ったのよね」

「はい。

 前国王陛下は善政を敷かれました。

 現陛下も勝るとも劣らない評判でございます。

 謙虚で調和を重視する統治を行われております」


 うーん。

 やっぱり最初は公爵の令息でしかなかったことが響いているんだろうな。

 トップに立つのと二番手でトップを支えるのとでは覚悟が大違いだろうし。

 だから自分からイケイケにはとてもなれない。

 どうしても周囲の意見をよく聞いて、ということになる。


 政治経済の講義で習ったんだけど、国王陛下(トップ)って時代や環境によって求められる資質が変わるらしい。

 乱世だったらそれこそ臣下や国民を強引に引っ張っていくくらいの気概がないと駄目だけど、平和な時代にそれやったら周り中から顰蹙を買ってしまう。

 テレジア王国は王子の嫁取りが国家的危機になるくらい平和だったから、そういう時はむしろ消極的な国王(トップ)が求められるらしい。


 でも、それもいつまで続くか。

 私みたいな末端貴族には詳しくは伝わってこないんだけど、どうも国際情勢がきな臭くなってきているみたいなのよね。

 他の大陸との接触があったり。

 国家間の発展度の違いから格差が大きくなってきていたり。

 陛下も頭が痛いところなんでしょうね。


 でも、だったら何で男爵家の庶子なんかを公爵にするかなあ。

 何か理由があるはずなんだけど。

 国王陛下じゃなくて王妃殿下が出てくるって、それが理由?

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