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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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163.公爵家

 というわけで家令見習い(アーサー)が読み上げるリストに従って私は会談した。

 公爵家の名代とかで子爵や伯爵を名乗る貴族が次々に来室してくる。

 お互い慇懃に挨拶して当たり障りの無い事を言い合う。

 今後ともよろしくとか、そういうものだ。


 実はテレジア王国には公爵家が結構ある。

 二桁にはいかないけど。

 建国の時に同盟した大勢力の長がそれぞれ初代公爵になって、中で一番大きかった家が王家を名乗ったのよね。

 なので王家と公爵家は伝統的に主従というよりは仲間という意識が強い。

 そして代々、国王や王太子は公爵家から嫁を娶った。

 もちろん王家からも公爵家に臣籍降嫁した。

 ちなみに公爵家は建国の際の盟約に従ってこれ以上は増やさないことになっているそうだ。

 だから王家から王子が臣籍降下しても新しい公爵家は興せない。

 公爵家に婿入りするか、侯爵以下になるらしい。


 そういうわけで、王家と公爵家は今ではみんな大なり小なり血縁だそうだ。

 というよりはもう、王家と公爵家の差がよく判らなくなってしまっているくらい。

 それを二百年近くもくり返していたため、さすがに血が濃くなりすぎるということで私の祖父上(デレク様)が外国のお姫様を娶ろうと。

 それは置いとくとして、だから公爵の名代として謁見に望んだ人たちは、みんな私の親戚だ。

 遠いけど。


「スコルノ家のスビオでございます」

「テレジア家のマリアンヌである。

 よくいらっしゃった」

 こういうのを十回くらいやった。

 中身が何もない空虚な会話だけど、相手の反応が面白くて退屈しなかった。

 なぜか皆さん、驚愕とか疑念とか畏怖とか、そういう感情を見せるのよね。

 いや高位貴族だから表情には出ないんだけど態度で判ったりして。

 私は元孤児だからね。

 気配を読むのは得意だ。

 だって読み間違えたら詰むから。


 半分くらい終わったところで聞いてみた。

「何か皆さん、態度が変じゃない?」

「舞踏会での殿下の武勇伝が伝わっております」

 専任侍女(サンディ)が平坦に言った。

「それを思えば特に変ということはないかと」

「でも何か矛盾するような」

「あの方々は名代でございます。

 つまり舞踏会には参加しておられなかったと。

 なので、殿下の武勇伝だけを聞いて先入観をお持ちで」


 ああ、そうか。

 私の行動(アレ)って聞く限りでは蛮人(バーバリアン)だもんね。

 新公爵はさぞかし荒々しい女海賊的な奴だろうと思っていたところに着飾った(マリアンヌ)が出てきたとしたら。

 小柄で幼女的でありながら、お化粧や衣装のせいで強面に見える私って(泣)。

「色々と誤解された気がする」

「良いではありませんか。

 舐められるよりはマシでございます」


 専任侍女(サンディ)が過激な事を言うのを家令(ヒース)がニコニコしながら眺めていた。

 ちなみに専任メイド(グレース)は裏で何かやってるらしくて姿が見えない。

 見習い家令(アーサー)は緊張しっぱなしでだんだん萎れてきているけど。

「大丈夫?」

「はい、と言いたいのですが。

 ちょっと胃が」


 まあ、確かに謁見しに来る人たちって全員が高位貴族、しかも当主の名代とかだもんね。

 領地伯爵のタウンハウスで執事やっていただけのアーサーにはまだ荷が重いか。

 それを言ったらサンディやグレースって化物(モンスター)だけど。

「殿下こそ」

 失礼な!


 会談が終わるごとに色々と確認したり、次に来る人の予習をしたりしていたら、本日の予定(ノルマ)が終わった頃には日が沈みかけていた。

 疲れた(泣)。

「これで終わり?」

「はい。

 本日のところは」

 さいですか。

 聞いてみたら、今日来たのは公爵家つまり私と同じ身分の家だけだったらしい。

 もちろん公爵ご本人ではなくてその名代だけど、名代ということは一時的とはいえ公爵ご本人と同じ立場に立っているわけで。

 あだやおろそかには出来ないために初日になったとか。


「今日はもう休んで良いの?」

「いくつか夜会のお誘いがございますが」

「無理」

「お心のままに」

 この状況で私を夜会に招くとは大胆な。

 断って良いということは、王家とかからの招待じゃないんだろうな。

 多分、よく判ってない反王党派の貴族からだ。

 そんなもんに誰が出るか。


「いかがなさいますか」

「すぐに夕食を食べたいんだけど。

 出来れば一人で」

「かしこまりました」

 公爵っていいなあ。

 我が儘放題出来そう。


 応接間から衣装部屋(ドレッサールーム)に連行され、お化粧を落として着替えさせられる。

 やっぱりドレスだけど室内着だ。

 お風呂は夕食後らしい。

 私がいない間に応接室が食堂? に模様替えされていて、食事はやっぱり晩餐(ディナー)だった。

 一皿ずつ出てくるって意味があるんだろうか。

「毒味でございます」


 ああ、そうか。

 もちろん私に出される食事は必ず毒味されている。

 だけど遅効性の毒もあるので、毒味役が食した後にある程度たってからでないと私に提供されない。

 だから全部冷えている(泣)。

 美味しいんだけど、ミルガスト伯爵邸の賄いの方がいいなあ。

 あれって使用人用に大鍋で作るから毒味もくそもないし、いつも熱々のスープや焼きたてのパンとかが出てくるのよね。

 領地貴族家の使用人っていいもの食べていたりして。

 私も出来ればそっちの方が良かった(泣)。

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― 新着の感想 ―
[一言] 温かいご飯は正義。 ストレス貯める位なら公爵の特権?を使って、保温容器か温め直す容器を開発しよう!
[一言] あったかいご飯は大事 本人的にはサエラ男爵家の庶子としてミルガスト伯爵家のメイドやってるくらいが一番気が楽で幸せだったんだろうけど 血筋と本人の気質がそれを許してくれなかったわけだ
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