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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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154.武勇伝

 もやもやしたまま目を瞑ったらそのまま眠ったらしい。

 気がついたら辺りが明るくなっていた。

 天蓋付きベッドのカーテンを通して淡い光が差し込んでくる。

 角度があるので日は結構高く昇っているのかも。

 ベッドから降りてカーテンを開けると眩しい光が溢れた。

 これは晴天だな。


「おはようございます」

 私の筆頭メイド(グレース)がきちんと声をかけてくる。

 本当にブレないなあ。

「おはよう」

「まずはご入浴を」

 異存はない。

 寝汗かいているみたいだし。


 お風呂場に行くとグレースの配下らしいメイドさんたちがワラワラと寄ってきて、よってたかってネグリジェを脱がされて風呂桶に放り込まれた。

 ちなみにここのお風呂は猫足の豪華なものだ。

 私の前世の人が読んでいた小説に出てくるものそのままだったりして。

 こういうのは現実に即しているのかな。

 でも、こんな風呂桶は初めてなのよね。

 サエラ男爵家はもちろんミルガスト伯爵家にもなかった。

 伯爵家はタウンハウスだからかもしれないけど。

 でも王宮の客間だったら当然かもしれない。


 だって王宮だよ?

 宿泊するとしたらテレジア貴族なら最上位だ。

 王家が認めないと泊まれないから。

 後は外国からのお客様だけど、王宮に泊まれるのはやっぱり最高位でしょう。

 国王とか王太子とか。

 いや、そういう人たちは迎賓館とかかな?

 まあ、いずれにしても最高のおもてなしをする必要があるわけだ。

 テレジア公爵な私もその一人。


 ていうか、普通の公爵だったら当然、王都にタウンハウスがあるからそっちに泊まるだろうけど。

 敢えて王宮にお部屋を用意したってことは何かありそう。

 ぼおっと考えながら身体を洗われた私はメイドさんたちに全身を拭かれ、高級な下着と豪華だけどシンプルなドレスを着せられて鏡台の前に据えられてお化粧された。

 全部お任せだ。

 だって私、自分では出来ないし。


 いや学院に通っていた時は自分でやっていたんだけど、化粧品も限られていたし時間も技術もなかったからね。

 結果は町娘よりはマシ、という程度だった。

 それが今はどうよ。

 完成したのは芸術品だ。

 いや確かに自分(マリアンヌ)なんだけど、超絶な美少女に仕上がっている。

 しかもただ可愛いとか美しいだけじゃなくて一種の凄みも出ていない?

 アイラインとか顔のちょっとした陰影とかでこれだけ違うのか。


「いかがでしょうか」

「これでいいわ。

 ありがとう」

 応えるとメイク係らしい年配のメイドさんがほっとしたように頭を下げた。

 いや、そんなに緊張しなくても。

「朝食を」

「うん」


 グレースに案内されてバルコニーに行くとテーブルに朝食が用意されていた。

 当然、毒味は済んでいるんだろうな。

 なるほど、これは信頼出来る使用人が不可欠だわ。

 だって貴族って自分で食べたり飲んだりするものを選べないのよ。

 出されたものを食するしかない。

 「毒味が済んでいる」と言われたら信用するしかないし。

 やっぱりきついなあ。


 朝食(ブレックファースト)なのに、用意されていたのはどうみても私の前世の人の世界で言うアフタヌーンティーだった。

 数段重ねのお皿にはケーキとかクッキーとかサンドイッチとかが大量に載っている。

 優雅なティーセットだけどポットが巨大だ。

 量、多くない?

「これは?」

「昨晩はお疲れのご様子でしたので。

 思う存分、食べて頂きたく」

 私ってそんな大食いだと思われているのか。

 当たっているけど(笑)。


 何せ孤児院時代、ひもじいというわけじゃなかったけど質量ともにイマイチな食事だったからね。

 出された物は全部食べる癖がついてしまった。

 しかも私、身長や体形、外見からは想像も出来ないくらい食べられる。

 一度、伯爵家の賄いで食材が余ったからいくらでも食べて良いと言われて試したことがあったんだけど。

 みんなにドン引きされたものなあ(泣)。

 しかも、それで特に体重が増えたり太ったりはしなかった。

 それ言ったらモルズ様たちには盛大に嫉妬されたりして。

 貴族令嬢にはそれ、切実な問題らしい。

 私はあんまり気にしないけど、でも食べられる時は出来るだけ食べることにしている。

 では。

 早朝の風と光の中、私はアフタヌーンじゃなくてモーニングティーを楽しんだのだった。


 数段重ねのお皿を制覇し、お茶のポットが空になる頃にやっと満腹になった。

「ごちそうさま」

「お見事でございます」

 グレースのよく判らない讃辞を尻目に背もたれによりかかって寛ぐ。

 ふと気づくとお仕着せのメイドさんたちが並んでいる。

 呆れた顔してるんだろうなと思って見たら、むしろ畏怖の表情だった。

 大食い選手権に出場出来るかも。


 それにしても皆さん、妙に緊張してない?

 私の表情に気づいたらしいグレースが合図すると、メイドさんたちは一斉にお辞儀して引っ込んでくれた。

 人払いしたな?

「ところでグレース」

「はい」

「なんでみんなあんな状態なの?」

 するとグレースは顔を輝かせた。

「お嬢……殿下の武勇伝が伝わっております。

 不埒(ふらち)な真似をした暴漢を殿下が成敗したと」


 あちゃー。

 それはまあ、そうか。

 舞踏会に参加した方々に丸見えの所でやらかしたからね。

 血まみれのドレスも見られた。

 ポワポワのお嬢様だと思っていたのに武闘派だったんだから衝撃(インパクト)が凄かっただろうな。

「残念でございます」

「何が?」

「お嬢……殿下の雄姿を見損ねました。

 何でも卑劣漢をその御手で叩きのめした上、堂々と告発されたとか」

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[一言] 昨夜から、過去の育成記録の再精査に関係機関 激務に
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