表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/371

149.高位貴族って凄い

 辺境伯様がスライドして消えると無言で定位置についた人が言った。

「見事だ。

 テレジア公爵殿下」

「マリアンヌとお呼び下さい」

 モルズ伯爵様。

 というよりは王都第三師団の師団長閣下。

 イケオジだ。


 やっと判ってきた。

 モルズ伯爵閣下はユベニア様のお父上だ。

 やっぱり王家派なんだろうな。

 だって王都を防衛する師団のトップだよ?

 そんな人が反王家であるはずがない。

 もしそうならとっくに更迭されているはず。


 つまり、モルズ様たちのお茶会って高位貴族令嬢のお友達仲間じゃなくて、むしろ親や祖父世代の意向で集まっていたんじゃないだろうか。

 派閥という奴?

 だとすると、私があのお茶会に呼ばれたのって、ミルガスト伯爵様の令嬢の意図なんかじゃなかったことになる。

 その頃から次期テレジア公爵()の囲い込みが始まっていたと。

 同時に私を見極めるためだったんだろうな。

 更に言えば教育か。

 モルズ様たちってお茶会を開きながら私の礼儀(マナー)に駄目出ししていたものね。

 何てこった。

 全部仕組まれていたみたい。

 しかも地雷原だった。

 よく踏み外さなかったものだ。


「娘が失礼をした。

 お詫びさせて頂く」

「無用です。

 むしろ私からは感謝を」

 曲はワルツだったのでターンしながら言葉を交わす。

 モルズ様の踊りは何というかメリハリが利きすぎているような気がする。

 軍人だから?


「すまんな。

 滅多に踊る機会がなくて」

「仕方がないかと。

 軍務が優先でございましょう」

「判ってくれて有り難い。

 今回も陛下の命令でやむなく」

 そうなの。

 大変ですね。

 現役の将軍閣下だったら舞踏会でフラフラ踊っている暇なんかなかろう。

 出席はしてもどなたかと会話して終わりなのでは。

「若い頃は散々踊ったものだが」

「今でもお見事と思います」

 私は何をおべんちゃら言っているのか。

 でも実際、踊りやすいのよね。

 肉体派だからかなあ。

 無意味な応酬をやっているうちに曲が終わった。


「次は私だ」

 はいはい。

 シストリア侯爵閣下。

 お屋敷にお邪魔したときにご挨拶させて頂いたことがある。

「よろしくお願いします」

 何してる人だったっけ。

 忙しすぎてお屋敷に帰れないという話だったけど。

 踊り出す。

 続けてワルツなので助かった。

 さすがの私でもこうもぶっ続けではグロッキー気味だ。

 それが判っているらしくてシストリア侯爵閣下のリードは落ち着いていた。

 変な捻りとか急な加速とかがまったくない。

 お手本みたいな踊り(リード)だ。


 しばらくお互いに黙って踊っていると不意に言われた。

「ご苦労をかける。

 出来るだけの援助はする」

 いきなり何でしょうか。

「……とのお言付けだ」

「……陛下から?」

「そうだ」

 思い出した。

 この方、これといった役職にはついてないんだけど宮廷に出仕しているのよね。

 国王陛下の懐刀。

 つまり参謀か。

 ある意味、そのお言葉は国王陛下の直言に等しい。


「ありがとうございます、とお伝え下さい」

「うむ」

 それ以上は何も言わない。

 伝言板に徹するおつもりらしい。

 それにしても皆様、たかが元男爵家の小娘に期待しすぎではないのか。

 何度でも言うけど私が普通の男爵令嬢だったらとっくに潰れてるぞ?

 私は大丈夫だけど。

 ていうか、だんだん面白くなってきたりして。


 何というか、今までは規則(ルール)も判らないゲームをさせられていたのに、ここに来て勝利条件が見えて来た気がする。

 生き残ればいいのよね?

 私の場合、特に何かやりたいこともないし、サバイバルだったら今までやってきたことと同じだ。

 問題ない。

 例え負けて殺されたりしても、孤児院にいたままだと同じような結末になっていたはず。

 だから私は何も怖くない。


 そう決めたら心が落ち着いた。

 ダンスが終わる。

 お互いに礼をとると、後ろからふわっと腰を抱き抱えられた。

「こちらへ」

 振り向いて見たらシストリア子爵令息だった。

 例の歌劇(オペラ)の企画会議で顔を合わせたから知っている。

 シストリア侯爵閣下の直系のお孫さんだ。


 誘導されて歩き出すと周りに集まっていた殿方たちが置いてけぼりにされていた。

 危ない危ない。

 次のダンスのパートナーとして狙われていたらしい。

「ありがとうございます」

「お祖父様の命令ですからね。

 疲れているだろうからひとまず休んで頂きたいと」

 言葉が丁寧なのは私が公爵の爵位持ちになったからだな。

 前に会った時は可愛いとか言っていたのに、今は真面目腐ってつけいる隙もない。

 やっぱり高位貴族って凄いなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり主人公すごいですね。開き直りというか肝が据わっているというか。転生者だからか、王家の血筋がそうさせるのかわからないけどなんとも魅力的ですね。面白くなってきました。
[一言] >ていうか、だんだん面白くなってきたりして。 (中略) >だから私は何も怖くない。 だからそういう所やぞ… (※今宵のイケオジ方だけでなくこれまで出会った味方側の皆さん全員の総意)
[気になる点] >言葉が丁寧なのは私が公爵の爵位持ちになったからだな。 公式に公爵になったのに丁寧な言葉で接してきたのがお孫さんだけ… おじ様達は爵位は下でも力と実績があるから、割と上からな態度なのか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ