14.貴族の義務
「他にはない? 地雷」
「いっぱいあるわよ。私も全部は知らない」
エリザベスは声を落とした。
知らない方がいいような知識もあるらしい。
特に廃嫡された高位貴族とか、廃絶になった貴族家とか。
「下位貴族には関係ない話も多いから、ほどほどにしておきなさい。好奇心が身を滅ぼすのって現実だから」
「はい(汗)」
値金言だ。
肝に銘じておこう。
ところで驚いたんだけど、何とテレジア王立貴族学院には「休日」がある。
その日は講義や実習や試験がないし、教授の方々も出勤しない。
生徒は登院してもいいんだけどね。
でもほとんどの人はお休みする。
もっとも学院の生徒はそんなものがなくったって自由に休める。
講義などがない日は登院してもやることがないから。
それに、貴族って実は結構義務が多いのよ。
自分の貴族家からの命令は最優先で、どこそこに行けとか何をしろ、という指令が来たら無条件で従わなければならない。
寄親の高位貴族が何かするので鞄持ちしろとか。
パーティがあるから準備を手伝えとか。
特に男爵以下の下位貴族の子弟は使い勝手がいいので、ことあるごとにかり出される。
私も伯爵家の執事の人に依頼されて、舞踏会やパーティのメイド役を何度か務めたことがある。
そういうことで恩を返すというか、寄子の使命を果たす訳ね。
その他、王家や王宮から貴族に対して色々要請や命令があったりしたら、これも無条件で受け入れだ。
私みたいなまだデビュタントも済んでないような木っ端令嬢にはあんまり関係ないけど、何かの式典とかパレードとかでは貴族の列席が必須なことが多い。
高位貴族ほどそういうことで時間を取られるみたい。
領地貴族家(例えばミルガスト伯爵家)や地方の代官(例えばサエラ男爵家)などはそうでもないけど、侯爵以上ともなると領地はあっても統治や管理は代官に丸投げなことが多いため、領主や後継者は宮廷とか外交とかにかり出されてほとんど領地にはいられないとか。
伯爵家辺りは自分の領地に専念するので、王宮や王政府とは基本的に関わらないらしい。
現にミルガスト伯爵様や嫡男の方は王都にあんまり来ない。
普通は代わりに奥方様が社交に明け暮れていたりするらしいけど、領地貴族が王都の社交界に出てもあんまり旨味がないからね。
お金もかかるし。
というわけで私は伯爵様やご家族にほとんど会ったこともない。
向こうは私を認識していないのかも。
ということで私は自由だ(泣)。




