表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

149/371

148.孫を頼む

 次の国王陛下にそんなこと言われてうかつに何か言ったら反逆罪になりそうだ。

 私が答えないので王太子殿下はかすかに笑って、その後は無言を貫いた。

 やっと終わったと思ったら、殿下と入れ替わるように私の前に立つ人がいた。

 知ってる。

 この初老のイケオジはサラーニア侯爵閣下だ。

「次は私でどうかな?」

 断れないよね。


「よろしくお願いします」

 次の曲はワルツだったのでゆったりと踊り出す。

 サラーニア侯爵閣下。

 言うまでもなくお茶会仲間のサラーニア子爵令嬢(ルミア様)のお祖父様だ。

 それだけじゃなくてテレジア王国の宰相閣下なのよ!

 ルミア様も大概だけど、王国の宰相なら切れるなんてもんじゃないだろう。

 それにしても宰相閣下、踊れるんだ。


「意外かね?」

「いえ。

 そういう訳では」

 王太子殿下の次に王国の重鎮である宰相閣下がお相手して下さるって、一応は手順を踏んでいるにしても意味深だ。

 踊りながら囁くように言われる。

 口が動いてないんですが。


「これから何人か、我々が君の相手(リーダー)をさせて貰う。

 一通り終わったら疲れたということで引いてくれ」

「それは、やはり(わたくし)を守って頂けるということでしょうか」

「そうだ。

 今日は他国の貴顕もおいでになっているが、それより危ないのはテレジアの反王家派だ。

 君は旗頭になり得る」


 それはそうだよ。

 テレジア公爵家って、つまり前テレジア王家だ。

 その旗を押し立てれば現王家に対抗出来てしまう。

 しかもその公爵はデビュタントが終わったばかりの小娘。

 取り入るのは容易だと誰でも考えそう。


「ありがとうございます」

「いや、こちらこそ礼を言いたい。

 君が覚悟を決めてくれて助かった。

 逃げでもして何かあったら取り返しのつかないことになっていたところだ」

 そうかな?

 それって私自身というよりは周りで色々とありそうな?


 曲が終わり、互いに優雅にご挨拶すると、間髪を入れずに相手が変わる。

 割り込みは許さないという覚悟を見た。

 どうみても事前に仕組まれていそう(泣)。

「次は私だ」

 さいですか。

 会ったことがない人だ。

 どなたでしょう。

「寡聞にして」

「申し訳ないが前から知り合っていたことにして欲しい。

 オシム・ヒルデガットだ」


 ヒルデガット辺境伯閣下。

 あー、そういうことか。

 モーリン様の祖父上だから、既に知己を得ていたということにするのか。

 身分で言えば厳密には公爵である(マリアンヌ)の方が上なんだけど、現実的にはどうみてもこの方が偉いよね。

「マリアンヌでございます。

 ごきげんよう」

 ちょっとふざけて言ったらにやりと笑われた。

「孫から聞かされていた通りだ。

 頼もしい限りだ。

 よろしく頼む」


 何を? とは聞かない。

 色々とあるんだろうな。

 王政府がらみで。

 多分、この方も王家派なんだろう。

 つまり陰謀仲間か。

 次の曲は何とフォックストロットだった。

 いきなりですか。


「行くぞ」

 ヒルデガット辺境伯様が言って、素早く動く。

 受けて立ちましょう。

 それからは一緒に跳ね回った。

 辺境伯様、やっぱりもう初老なんだけど鍛えられていて、私でもついていくのがやっとだ。

 私の前世の人が読んでいた乙女ゲーム小説に出てくる辺境伯ってみんなゴリゴリのマッチョだった気がするけど、実際には細マッチョタイプだった。

 そうよね。

 武人とはいえ辺境伯ともなれば前衛ってことはないだろう。

 戦う場合でも、それなりの機動はするかもしれないけど、むしろ駆け回って指揮か。

 だとすれば(パワー)よりは俊敏(ムーブ)を重視するべきだ。


「なかなかよく動くな」

「このくらいなら」

「うちの訓練に混ざらないか?」

「有り難いお申し出ですが、ご遠慮させて頂きます」

 お互いに高速で相手を振り回しながら意見交換する。

 息も切らさないのね。

 私もだけど。


 曲が終わる。

「楽しかった。

 孫を頼む」

「はい」

 またか。

 何なんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 怒涛のジジ活 [一言] 楽しげに相手してくれる孫と同年代の女の子におじいさんたちもニッコリ
[一言] これは護衛を兼ねた、王国重鎮である王家派当主との顔合わせですね。 …事前に場を設ける事すら困難だったという事イコール、現在進行形で国を割らないための舵取りの真っ最中なのが察せられますね。
[気になる点] 「知古(ちこ)」はボーっと生きてんじゃねえよと怒る女の子 「知己(ちき)」は「自分のことをよく理解してくれている人」や「知り合い」という意味
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ