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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第五章 公爵

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144.雌虎

 孤児院時代は毎日のようにやっていたし。

 襲ってくる少児愛好者(ロリコン)や誘拐目的のならず者は基本、狭い路地に誘い込んで目潰しくらわせて骨を折ってやった。

 屈強な男でも急所蹴ったら一発だ。


 ちなみに助けを求めて叫んだりはしない。

 無駄だから。

 だって、下手すると孤児院の仲間や職員すら信用できなかったのよ。

 小遣い欲しさに私を裏切って(かどわ)かしに協力した奴もいた。

 もちろん潰しましたとも(笑)。

 孤児院での私の渾名(あだな)は「雌虎(タイグリス)」だった。

 最初は「お人形さん(ドール)」だったんだけど、一番の乱暴者を叩き潰してからは遠巻きにされてたっけ。


 私のそういう部分、多分王家は知らない。

 知ってたら公爵なんかにしないだろうし。

 私としては封印したつもりのそういう技能が役に立つのは嬉しかった。

 だって合法で()れるんだよ?

 誰かが襲撃してくるのが待ち遠しいくらいだ。

 ギルボア様からそういう私の情報が伝わったらしくてグレースが更に変になったのは誤算だったけど。

 何かコメディっぽくなってしまった。

 私からみたら生き残り(サバイバル)の方法でしかないのになあ。


 つらつらそんなことを考えていて、思いついて靴はローヒールにして貰った。

 平底より打撃力が増すから。

 着付けのメイドさんたちは不満そうだったが、ハイヒールなんか履いて戦えるか。

 幸いドレスは足首まで隠れるタイプだから見た目には判らない。

 私はもともと小柄だからヒールがなくても目立たないしね。


 そう、小柄ってのも重要な要素だ。

 か弱く見えるのはマイナスだけど、襲ってくる奴は例外なくこっちを舐める。

 油断した奴なんか、どんなに屈強でもカモよ。

 いかんいかん。

 つい孤児院時代に戻ってしまった。

 今の私は公爵。

 周り中に護衛がいるし、少なくとも大規模に襲われるってことはないでしょう。


 でも言われたのよね。

 王家や王政府の中にも対立があって、誰がどんな思惑で動いているのか不明。

 そして今の私は公爵位を得たとはいえ、実質的には無力な小娘だ。

 取り込もうとする奴は何をして来るか判らないと。

 だから王宮の中でも油断はしない。

 これについては何日もかけてあらゆる事案(ケース)を考えておいた。

 騎士隊長(ギルボア様)に相談もしたし。


 だけどギルボア様ご自身は身分のせいで王宮に入れないのよね。

 単なる騎士では役者不足。

 王宮内で貴顕の護衛をするためには、少なくとも近衛騎士の爵位がないと駄目だ。

 警備するだけでも近衛兵の資格が必要。

 テレジア公爵家の騎士はまだ近衛じゃない。

 そういうのは公爵が直接叙爵しないといけないとか。

 私が公爵じゃ無い段階ではテレジア公爵家騎士団自体が近衛になれなかったりして。

 公爵になった今ならすぐにでも叙爵するんだけど。

 まあいい。


 支度が調った後、私は豪華なお部屋に案内された。

 それはもうびっくりするくらいどこもかしこもピカピカというか、これって多分国外の貴顕それも王族をお迎えするための部屋だ。

 応接間かな。

 寝室はまた別にあるんだろう。

「ここ、使って良いの?」

 海外から王族や高位貴族が来ているのではと思って誰にともなく尋ねたらいつの間にかいた家令(ヒースさん)が教えてくれた。

 古巣だから詳しいのかも。

「あちらは迎賓館にご案内すると聞いております。

 舞踏会開催前に接触しないようにとのご判断かと」

 そうなの?

 まあ、自国の王族や貴族にお披露目する前に新任の公爵が他国と会うのは拙いか。

 そこら辺も王政府の思惑なんだろうな。

 でも私、何をすればいいのか。


「これからの予定は?」

「異例でございますが、舞踏会は日が高い内に開催されます。

 夜間に及びますと何かと問題がございますので」

 襲撃されやすくなるとか?

 まあいいや。


「私のお役目は?」

「今回は殿下のお披露目でございますので、出来るだけたくさんの方に見覚えて頂くのが望ましいとのことでございます。

 もちろん、無理をする必要はございません。

 殿下の判断でいつでも切り上げても良いとお言葉を賜わりました」

 公爵家の家令に命令出来るんだから、間違いなく王政府の偉い人からの指示だろうな。

 ひょっとしたら王族かもしれない。

 ていうか私の敬称(呼び名)が「殿下」になってる!

 既に公爵だから(泣)。


 そういえば肝心な事を聞き忘れていた。

「外国の貴族や王族が来ているのは判ったけど、テレジアはどうなの?

 国王陛下はいらっしゃる?」

 言ってしまってから馬鹿な事を聞いたと思い当たった。

 外国の王族が来るとしたら、テレジアの最高権力者が出迎えないわけがない。

 そうでないと失礼になる。

 まあ、おいそれと外国から国王が来ることはないだろうけど、それでも王太子クラスは来るかもしれない。


 ……私、何考えてるんだろう。

 私の前世の人が読んでいた小説(ライトノベル)じゃないんだから、私ごときが国家の最高権力者の動向を気にする必要ってないのでは。

 でも私、もう公爵なのよね。

 ハリボテもいいところだけど。


 すると後ろに控えていた家令見習い(アーサーさん)が懐から紙を取り出した。

「国王陛下と王妃殿下、それに王太子殿下は確定ですね。

 それから王政府の主立った閣僚と軍や騎士団のトップも参加予定になっています」

 もちろん流動的ですが、とアーサーさん。

 ちゃんと仕事してるんだ(笑)。

 それにしてもテレジアの中枢が丸ごと参加か。

 何かあったらテレジア王国、壊滅しない?


「それを見越して警戒は厳重でございますが。

 問題が」

 ヒースさんが腹立たしげに言った。

「見たところ、守りが王族に集中しすぎております。

 その分、他の方々への配慮が欠けるとまでは言いませんが」

 薄くなる、と。

 それはしょうがない。

 王族を守るのが最優先なのは確かだ。

 私?

 理屈で言えば公爵と言っても一貴族でしかないし、自前の領地を持っている建前だから自分は自分で守れということね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一般的に「近衛騎士」は役職・地位であって「爵位」ではないのではないかと。
[一言] >守りが王族に集中しすぎております。 (中略) >自分は自分で守れということね。 あからさま過ぎても食い付かずにはいられないであろう特大の釣り針な気が… 飛んで火に入る馬鹿者や各種不穏分子…
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