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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第四章 離宮

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139.断念

 さて。

 デビュタントとお披露目が決まったことで私というよりはテレジア公爵家の準備も最終段階に入った。

 私は完全に軟禁状態。

 専任のお世話係以外は近寄れない。

 それどころか離宮の出入り自体が制限されたそうだ。

 何でも反王党派の貴族の皆様からの接近要求(アタック)が益々加速しているようで。

 あの手この手で入り込もうとしているとか。

 怖っ。

 私に会ってどうしようというのか。

 私自身、私のすることを決められないのに。


「やり方は色々あるぞ。

 例えば」

 コレル専任執事が恐ろしい事を教えてくれた。

 私に言うことをきかせる方法は無数にあると。

 乙女ゲーム小説で聞いたことがあるぞ。

 あれ、本当だったのか!


「攫われて男と同じ部屋に閉じ込められるとか」

「それだけでは弱いな。

 あられもない格好を晒されるとか、性交(セックス)を目撃されるとか」

「媚薬を盛られるとか?」

「よく知ってるな。

 それが常套手段だ」

 デビュタント前の淑女にそれやるって?

 狂ってる。


「いや。

 デビュタントというか、爵位を授爵する前にはまあ、ないだろう。

 それが瑕疵になって授爵が取りやめになる可能性があるからな」

「ああ、そういうこと。

 私が爵位を得てからじゃないと乗っ取り出来ないと」

「そうだ。

 まあ、本来なら君を口説いて婿入りするのが一番なんだが無理だからな。

 だったら強引に行く」

 聞き捨てなりませんね。

 私を口説いても無駄だと?

「そうだろう。

 (マリアンヌ)についての調査結果を読んだが、徹底している。

 孤児院時代を含めても男の影が一切ない」

 言われてしまった。


 そう、私には恋愛とか男女交際といった経験がまったくない。

 前世の人の人生を含めて。

 どうも、私ってそういった惚れたはれたというような感情がごっそり抜けているみたいなのよね。

 ひょっとしたら私って前世の社会で言う所の「無性愛者」だったのかもしれない。

 そしてその性質は現世でも引き継がれているような?


 だって私、孤児院仲間の男の子に対して全然、好きとか気になるとか思わなかったのよね。

 イケオジ好きだったこともあるし。

 この容姿だから私に声をかけてくる男はたくさんいたけど、まったく心が動かなかった。

 別に男が嫌いというわけでもないし女の子が好きなわけでもない。

 ただ関心がない。

 生き延びるのに精一杯だったこともあるけど。


「王家は最初は君の輿入れを考えていたようだが、早々に諦めたそうだぞ」

 コレル男爵じゃなくて専任執事が面白そうに言った。

「そんな話が」

「普通に考えたらそれが一番早い。

 もともとテレジア公爵位は王家預かりになっているし、王族の誰かを臣籍降下させて君を娶れば公爵位と領地がついてくる。

 八方満足だ」

 それはそうかも。

 私に無理矢理公爵位なんか渡しても、どうにもならないんだし。


「どうして駄目だったんでしょうか」

「ひとつは適齢期の王子がいなかったことだな。

 王太子殿下の弟君は既に婿入りしているし、その他の近親も臣籍降下済みだ。

 次の世代となると、王太子殿下のご子息が一番年上だが、まだ八歳だしな」

 それはちょっと。

 私としては旦那様は出来れば年上でいて欲しい。

 なるったけイケオジで。


「ですが貴族の結婚って、そういうのも有りなのでは?」

「あるかもしれんが、相手が(マリアンヌ)だからな。

 恐れ多くも皆様ビビッて取り込みを諦めたそうだ」

「何で?

 元孤児で平民で貴族の庶子だったから?」

 いや、それって真っ当な理由なのでは。

 男爵令嬢だとしたって身分違いが酷いのに、平民の孤児を王族に入れるのには無理がありすぎる。

 身分を気にする人って結構いそうだし。


「それは問題にはならない。

 (マリアンヌ)は血筋で言えば今の王家に勝るとも劣らないどころかむしろ正統といっていい」

 違うでしょう!

 そんな恐ろしいことを言わないで下さい。


「だったらなぜ?」

「ミルガスト伯爵家の報告書(レポート)だ。

 特に大きかったのが朝一番の水浴びだそうだ」

 あれかーっ!

 いやそれはドン引きするよね。

 孤児院では当たり前だったけど、平民すら引くかもしれない。

 気品とか節制とかの対極にある行動だものなあ。


「別に好きでやっていたわけでは」

「それは判っている。

 問題はそれを平然とやってしまえる精神(こころ)だ。

 それでいて男爵家に引き取られてからはわずか数年で貴族令嬢になった。

 かと思えば伯爵邸で使用人の真似事を」

 だって使用人宿舎に入れられたし。

 そういうものかと思ってたんだけど。


「やはり庶民臭すぎるということでしょうか」

「違う」

 コレル閣下、ああいやもうそれでいいや、が断言した。

「どんな状況でも自分を見失わず、自ら選んだ道を突き進む。

 しかも矜持を持って。

 実際、君はその矜持だけで学院の教授や学生のみならず高位貴族の令嬢まで魅了してみせたではないか」

 あ、それ勘違いですので。

 私は足掻いていただけで。


「ある意味王家に相応しいとすら言える。

 だからこそ、王家は君の取り込みを断念した。

 こんな化物(モンスター)を身内に入れたら全部乗っ取られかねないと」

 何それ。

 しねえよそんなの。

 ていうか今でも逃げたい気持ちで一杯なんですが。

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― 新着の感想 ―
[良い点] のんびり読んでるのでなんで化け物と言われるほど評価されてるんだろうと主人公と同じ感覚に笑 王家視点で1から読み返して楽しんできます
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