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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第四章 離宮

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136.お披露目

 そんなある日、唐突に言われた。

「デビュタントが決まりました」

 さいですか。

 いつ?

「1週間後でございます」

 急ですね(泣)。

 別にいいですけれど。


「あの、ダンスがまだ」

「十分に上達されておられるとダンス教師から伺いました。

 礼儀(マナー)についてもとりあえず合格と」

 そうなのか。

 未だに駄目出しされるんだけど、基準には到達していたみたい。

「私は何をすれば」

「すべて、こちらで用意いたします。

 つきましては要員(スタッフ)を紹介させて頂きます」


 コレル閣下、じゃなくてコレル男爵が合図すると人がぞろぞろ入って来た。

 慌てて立ち上がる。

 今の私はまだ男爵家の子女だものね。

 どう考えてもこっちが下座だ。

 コレル男爵だって今の私なんかより身分が上なのよ。

 敬語を使われてるけど。


「こちらは公爵家筆頭執事のホイットコム子爵閣下です」

 立派な風采の初老の殿方だった。

 子爵が筆頭とはいえ執事なの?

「ヒース・ホイットコムでございます」

 きちっとした姿勢で頭を下げるヒース様。

 家名だけじゃなくてお名前を名乗ったということは、そういう関係にならなければいけないということね。

「マリアンヌでございます。

 よろしくお願いします」

 軽く(カーテシー)をとる。


 ここら辺が難しいのよね。

 私は将来はともかく今は男爵家の子女でしかないし、ヒース様は子爵だ。

 どう考えても私がへりくだるべきなんだけど、ヒース様が先に名乗って頭を下げてきた。

 つまり、現時点で既に私の下に付くという意思表示だ。

 いや、敬意を払っただけもしれない。

 私はテレジア公爵家のお客様ということになっているからね。

 でもお名前を名乗られたのよねえ。

 こっちも名前を出すしかない。


「これはご丁寧に」

 ヒース様は年齢や身分差をまったく感じさせない暖かい笑顔をくれた。

 ヒース様が下がると次の方が進み出る。

「侍女頭のアナと申します」

 こちらも初老の威厳のあるご婦人が(カーテシー)をとってくれた。

 身分は何だろう?

 既婚なのは間違いないけど、ひょっとしたら未亡人かもしれない。

 爵位は持ってないのね。


「マリアンヌです。

 お世話になります」

 とりあえず、淑女に対する礼をとっておく。

 それから似たような事が延々と続いた。

 執事長、厨房頭、馬丁頭、騎士団長、その他色々。

 もう騎士団があるらしい。

 騎士団長は残念ながらギルボア様じゃなかった。

「ブレン・サーシスでございます」


 公爵家は王族だから騎士は近衛になる。

 でもそれって直近というか公爵に近い騎士だけで、領地の騎士団や正騎士以下は普通の騎士爵らしい。

 もちろん平騎士や見習いは爵位持ちではない。

「現在、創設を進めております。

 領地騎士団は公爵殿下の授爵までには整えられるかと」

 テレジア公爵領は今までは王家直轄領だったので近衛騎士団の分隊が駐留していてくれたそうだ。

 でも独立するので自前の騎士団が必要になる。

 騎士団長と名乗った理知的な風貌の色男(イケオジ)が教えてくれた。

 団長ともなると、やっぱり中年から上なのよね。


 私の前世の人が読んでいた乙女ゲーム小説というか軽小説(ライトノベル)だと騎士団長や副長が二十代だったりしていたけど、実際には無理だ。

 能力や実績だけで組織のトップは務まらない。

 人間関係やコネ、人心掌握術、何より組織の中での立ち位置が重要で、特に他の組織と軋轢を生まないような立ち回りの上手さも必須だ。

 礼儀(マナー)の講義でそう教えて貰った。

 そういうのって何より経験がものを言うから、若いというだけで無理なのよね。

 経験値が圧倒的に不足する。

 それに偉い人って基本的に高齢だから、そんな中に若造が入って行っても無視されるだけだとか。

 若い騎士団長とかってヒロインとの釣り合いを考えて持ってきているんだろうね。

 でも私はいいのだ。

 イケオジは大好き。

 残念な事にイケオジ騎士団長様は既婚で息子も騎士らしかった。


 一通りの挨拶が終わると、公爵家の重鎮の方々は退出した。

 残ったのは家令のヒース様と侍女頭のアナ様、コレル男爵。

 ロンバート様がいないけど、何かあるのか。

 もちろん私の専任侍女であるサンディと専属メイドなグレースもいる。

 私の後ろに控えているだけだけど。

 発言権はないんだろうな。

 ちなみに私はソファーに座っている。

 他の人たちは立ったままだ(泣)。


「デビュタントでございますが」

 ヒース様が言った。

「式終了後に舞踏会にてマリアンヌ様のご披露を行う事に決まりました。

 王国の主立った貴族に加えて外国の貴顕の方々もご出席になられます」

 え?

 聞いてないよ?

「そのような場でデビュタントの儀式が出来るのでしょうか」

「今回、デビュタントに参加されるのはマリアンヌ様のみでございます」

 爆弾宣言!

 何よそれ?


 普通、デビュタントといったら成人する淑女が集められて国王陛下に拝謁して一人前として認めて貰う、というものじゃないの?

 礼儀(マナー)の講義でもそう習ったし、私の前世の人が読んだ乙女ゲーム小説だと定番なのに!

 絶句している私を尻目にヒース様が淡々と続ける。

「手順としましては、舞踏会の開催前に略式にてマリアンヌ様の成人式(デビュタント)を行い、続いてテレジア公爵位の授爵式を行います。

 その後、舞踏会にて新公爵殿下(マリアンヌ様)のお披露目を」

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― 新着の感想 ―
[一言] 「筆頭執事」と紹介された人が後に「家令」と言われてて、その人とは別に「執事長」がいる、というのは、読んでてちょっと混乱します。 あと、「馬蹄頭」は「馬丁頭」じゃないのかと思うのだけど、私の…
[一言] うーむ 読んでいて、王都貴族社会の部屋住みと言うかストック人材「群」にとって いきなり巨大な鉱山が発見された様なものなんだな しかも、子々孫々権利が継承出来るタイプの 家臣団創設に、どんだ…
[気になる点] 若い女性とはいえ 公爵の敬称が閣下ではなく殿下なのはなぜなんでしょう
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