表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第四章 離宮

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

133/371

132.後半は余計

 それはそうか。

 貴族にダンスを教えるとしたら少しの瑕疵も許されない。

 出来て当たり前。

 成果が上がらなければ下手すると首が飛ぶ。


「三人で組んだのは?」

「お相手によって適性が違いますので。

 お嬢様のようなデビュタント前の淑女もおられますし、より年若い方も」

「時にはお歳を召した方に呼ばれることもございます。

 どのような依頼にも応えられるようにと」


 なるほど。

 それぞれ担当が決まっているのか。

 お客様はダンスを覚えた後にどんな相手と踊るのか判らないわけだ。

 お相手が小柄だったり大柄だったりするかもしれない。

 そういう時の練習(エクササイズ)のための男装美女(イケメン)であり黒髪少女か。

 これはこれで立派なビジネスモデルなのかも。


 話してみたら色々と教えてくれた。

 貴族家の者、とされている人は実は結構たくさんいる。

 最初から貴族名鑑に載っている人はもちろん、載らないまでも実家に余裕がある場合は学院に通わせて貰える。

 なぜなら成人後の収入が段違いだから。

 貴族社会に属さないとどうあっても芽が出ない。

 平民だと人生の方向性が酷く限られるらしい。

 大多数の人は一生下積み。

 私なんか孤児だったから最初から底辺だったんだけど、普通の平民家庭に生まれても似たようなものだ。


 まず教育を受けられないし、コネがないから碌な勤め先がない。

 希に下積みから這い上がる人もいるけど、それはやっぱり何かのコネで引き上げられる必要がある。

 偉いというか力のある人の目にとまるためには、まず力がなくちゃ駄目みたい。

 具体的にはやっぱり教育ね。

 だから貴族家は子弟をできる限り学院に通わせる。

 将来平民になる予定の人でも。


 もちろん専門職、例えば職人や商人、あるいは軍人や役人を目指すんだったらそれなりの進路(コース)があるんだけど、学院はそういった学び舎の上位互換だ。

 学院でメダルを頂ければ、ただそれだけで貴族界にコネが出来る。

 この場合の貴族界は爵位持ちの貴族やその親族だけではなく、雇われたり仕事を受けたりする使用人層も含む。

 つまり貴族から仕事を受けやすくなるのよね。


「ダンス教師は信用が第一です。

 子弟の教育を任せるわけですから」

「特に貴族家では学院出ではない家庭教師は論外ですので」

「実力はもちろんですが、実績を積むためにはまず最初に信用していただけなければならないと」

 確かに。

 難しいものね。


 ダンスの技能だけだったら劇場や劇団所属のダンサーが一番上手だろうけど、そういった人は貴族家の家庭教師にはなれない。

 信頼されないから。

 誰か貴族の保証があれば可能だろうけど、それはそのダンサーが貴族のお抱えになることを意味する。

 そうなったら命令されるままに動くしかなくなる。

 無理な要求や割の合わない仕事を割り振られても文句を言えない。


 それが嫌だったら独立して仕事するしかないけど、その場合は客が限定される。

 下位貴族か、せいぜい大商人くらいか。

 なぜならダンス教師を雇えるほどの資産を持つ層が限られている上、そもそも社交ダンスの技能を必要とする人は更に少ないからだ。

 下位貴族の令嬢が婚活のためにダンスを習おうとしても、それだけの費用を捻出出来るとは限らない。

 払えても安いとか。


「なるほど」

「私共はまず、学院のメダルを頂いて修了資格をとってから実家のコネで営業を始めました。

 最初は平民の商人や下位貴族家の方でしたが、ご満足して頂けたら知り合いをご紹介頂く形で」

「軌道に乗せるまでが大変でしたが、現在では高位貴族家からも依頼を頂けています」

 テレジア公爵家からも依頼があったと。


 そうでしょうね。

 私はまだテレジア公爵家の者ではないし、かといってサエラ男爵家令嬢やミルガスト伯爵家の育預(はぐくみ)という立場ではなまじのダンス教師に依頼しにくい。

 平民は論外。

 信用がおけないという意味では貴族のお抱えや劇団なんかも難しい。

 どこの誰の息がかかっているか判らないから。


「私共は、純粋にダンス技能を教授するために来ております。

 お嬢様がどこのどなたかは関係ありません」

 男装美女(イケメン)の人が言い切った。

 でもすぐに普通(笑)の人が「お嬢様にご満足頂けるように全力を尽くします。なのでその暁には是非ご贔屓を頂きたく」

 台無しよ!

 でもそういう開き直った態度は嫌いじゃない。

 何より痛快だし。


「判りました。

 よろしくお願いします」

「「「おまかせあれ」」」

 言い方がなあ(笑)。


 どことなくふざけた三人組のダンス教師だったけど、腕は確かだった。

 というか多彩だった。

 貴族の社交ダンスというと普通はワルツと、あとはせいぜいクイックステップや弾けてもフォックストロットくらいなんだけど、この三人は何でも教えてくれた。

 劇団仕込みなのでラテンとかチャチャチャとか、サンバにルンバまで。

 ジャイヴなんてもの見せてくれたけど、そんなの淑女には必要ないというか無理だから(笑)。


 淑女は舞踏会では装飾過多なドレスを着て踊るんだから、基本的に激し過ぎる動きは禁止(タブー)だ。

 もっともたまには出るらしいけど。

 でもデビュタント前の淑女がそんなの覚えてもしょうがないしね。

 大体、相手してくれる殿方がいないだろうし。


 それでも一応は教えようとしてくれたので、適当に相手していたら言われた。

「驚きました。

 お嬢様は何者ですか?」

「何者って」

「これだけ動ける方は女性騎士でも滅多にはいません。

 ステップはメチャクチャですが」

 後半は余計よ(笑)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ