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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第四章 離宮

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130.専任

 ぞっとした。

 これこそが乙女ゲームの強制力なのかもしれない。

 いやむしろ復元力?

 アクシデントがあって道筋を逸れても、いつのまにか元の道筋に戻っているという。


 それが本当かどうか判らないけど、もうどうしようもない。

 普通の乙女ゲーム小説では前世を思い出したヒロインや悪役令嬢が色々と足掻いて物語(ストーリー)を改変しようとする。

 でも、実際には無理だ。

 少なくとも私は男爵の庶子でしかないし、都合がいいチートなんかないもの。

 というより、メチャクチャやれば何とかなるかもしれないけど、そんなことしたらあっさり消されて終わりだろうし。


 だってテレジア王国は封建国家だ。

 国王が絶対支配者で貴族が力を持つ。

 貴族は自分が生き残るためなら何でもやる。

 規則や法律があっても、時としてそれを無視して平然と動いたりするのよ。

 王国の歴史を学んだ私は知っている。

 はっきりとは書いてないけど不自然な死や没落が多すぎる。

 成り上がる理由もよく判らない。

 公式の歴史書には載らない裏歴史があるんだろうな。


 私の前世の人がよく読んでいた王家や貴族社会を描いた小説では、時々「影」とかいう諜報員や工作員が出てきたけど、ひょっとしたらそういうお役目の人って本当にいるのかもしれない。

 もちろん、いつもは普通に貴族や平民として生活していて、だけど命令があれば動く、という。

 別に超人的な暗殺技術なんかなくても情報を流したりちょっとした工作をしたりって出来るものね。

 実際、グレースとかコレル閣下ってそれっぽい動きをするからなあ。

 そういう存在がいるものとして行動するべきなのか。


 でも、それが判っても私の動きは特に変わらない。

 むしろ何が起きても対処出来るように備えておく事が重要でしょう。

 そう決めてしまったら気が楽になった。

 だからグレースに案内されて行ったお部屋で大量のドレスを試着させられたり、テーブル一面に並べられたアクセサリーから気に入ったものを選ばされたり、靴なんか何十足もあってそれを全部履かされたりしても唯々諾々として従った。

 抵抗しても無駄だ。

 でもねえ。

 ドレス、デザインや様式はそれぞれ違うんだけど、全部が白かったって(泣)。

 デビュタント用だけでこんなに用意したのか。

「それが公爵家というものでございます」


 グレース、あんた凄いよ。

 騎士爵の奥方で伯爵家のメイドだったはずなのに、しれっと公爵家に適応していたりして。

 しかも、いつの間にか配下のメイドさんが増えている。

 確か見習いメイドが数人だったはずでは?

「私はお嬢様の専属メイド、いえ腹心ということで昇進してお嬢様担当の専属メイド頭でございます。

 公爵家のメイド長直属です」

 そうなの。


 聞いてみたら、公爵家のメイドは担当ごとにメイド頭がいて、その担当範囲についてはメイド頭が権限を持っているそうだ。

 グレースは私の専属メイドで、つまり私担当の責任者になる。

 私の世話をするメイドさんは全員、グレースの部下だとか。

 その他にもお城の維持担当とか厨房担当とか、あるいはそれ以外の雑事担当のメイド頭がいるんだけど、そういう人たちは基本的に私とは関わらない。


「パーティとか舞踏会とかを開くときはどうするの?」

「メイド長が仕切ります。

 といっても誰かに丸投げするみたいですが」

 そういう臨時のお仕事は担当者だけ決めて、あとは外部から専門職を雇うのだという。

 そういえばミルガスト伯爵家でも執事の人(アーサーさん)がそんなこと言っていたっけ。


「まあいいけど。

 つまり私についてはグレースが全責任を持つと」

「お世話だけでございますよ?

 社交などについてはサンディが」

 そう、サンディも公爵家に入っていた。

 お仕事は侍女だけど、領地伯爵家と公爵家とではまったく違うのでは。


「今のところは侍女見習いですね」

 サンディが淡々と言った。

「サンディはそれでいいの?」

「侍女は何より経験と知識がものを言いますので。

 当面は王家が手配した侍女がつくと思いますが、デビュタントまでには」


 後で聞いたら侍女って単に知識と経験があればいいというものではないそうだ。

 一番重要なのは仕える主人との親密度というか信頼。

 それはそうか。

 いざというときに侍女が信頼出来なかったらどうしようもない。

 なので、基本は私の腹心であるサンディが専属侍女を務めることになる。

貴方(サンディ)、私の腹心だったの?」

「他のものよりはマシでございましょう」

 まあ、そうね。

 胡散臭い所はあるけど、サンディが有能で誠実なのは間違いない。

 腹心といえば私よりはコレル閣下のという気もするけど。


「コレル閣下も公爵家に移籍されますよ?」

 サンディが爆弾宣言した。

「え?

 だってあの方、ミルガスト伯爵家の准男爵で渉外なのでは」

「引き抜かれました。

 今はテレジア公爵家の次席執事でございます。

 いずれ男爵位を賜ることになっているかと」

 いいのかよそれ。

 本人自らが工作した疑いが濃いけど。


 だってそういう人事、普通だったら当事者である私が決めるべきでしょう。

 というか最終的には私の承認が必要なはずなのに。

 デビュタント前だから私にはまだ権限がない。

 というよりはむしろ正式には公爵家のものではない。

 それをいいことに好き勝手やってる人がいるな。

 別にいいんだけど(泣)。

 まあ、私としても、今更知らない人がいきなり執事とか家令とかで割り込んできたら困るからいいか。

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