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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第三章 育預

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124.諸悪の根源

「なるほど」

「確かに、例えば王家に対する反逆を未然に防いだ、というような理由でしたら(おおやけ)には出来ませんね」

「商人の授爵にしても、特段の働きがあったというような曖昧な理由が多いのですが、それが何なのかは不明なままでございます。

 人前では言えない貢献があったと考えた方がよろしいかと」


 するとエリザベスのお父上なんかもそうなんだろうな。

 王家の「手の者」を務めた、というような理由だったら表には出せないか。

 つまり、貴族はそれだけ裏があると考えた方がいい。

 男爵レベルでもそうなんだから公爵なんかもう(泣)。

「そのうちに何か発表があると思いますので」

「ですわね。

 サエラ様」

 はい?

「何か」


 モルズ様が私を見つめて言った。

「何が起ころうとも(わたくし)共は御身の味方でございます。

 微力ではございますが、緊時の際にはご遠慮無くお頼り下さいませ」

「というよりは、(わたくし)共が率先して駆けつけますので」

「これはシストリア家の総意と受け取って頂いてかまいません」

「武門の力が必要な場合は是非」


 何なのよ!

 いかにも何か起こりそうなこと言わないで下さい!

 私は男爵の庶子なんだよ!

 何で高位貴族家に後援されなきゃならないのよ!

 困る。

 まあ、嬉しいことは嬉しいけど。


「ありがとうございます」

「よろしくてよ。

 それにしても、サエラ様と友誼を結べて本当に良うございました。

 あれ以来、毎日が楽しくてワクワクが止まりませんの」

 私は歩く娯楽(エンターテイメント)かよ!


 やるせない想いを抱えながらミルガスト伯爵邸に戻り、夕食までふてくされながら王国の歴史について復習していると興味深い記述があった。

 テレジア王国は建国からまだ二百年くらいしかたってない比較的新しい国だ。

 大昔に栄えたという大帝国が分裂して独立した各領地が勢力争いをしていた時期がかなり長く続いたんだけど、それが落ち着いてきた頃にどさくさに紛れて成立したらしい。

 というよりは、もともと今のテレジア王国の領土内でやりあっていた弱小勢力が面倒くさくなったのかどうかは知らないけど、ここらで連合して国になろうやという相談がまとまったと。


 その話は建国神話になっているんだけど、まだ二百年くらいしかたってないから神話どころか単なる歴史でしかない。

 一応、初代国王が神から啓示を受けたというような伝説もあるけど誰も信じてない。

 別に聖剣とか聖遺物とかが伝わっているわけでもないし。

 王家にしても、集まった勢力の中で一番強かった家が戴冠したというだけだ。

 後はみんな公爵家になった。

 だから王家はひとつだけど公爵家は何系統もある。

 もちろん二百年の間にお互いに嫁取り婿入りして血縁ではあるんだけど、根元が一緒とは言い難いのよね。


 その本には王家の系図も載っているんだけど、何というか王位の継承ごとにめまぐるしく権力者が変わっているような?

 だって歴代の国王陛下が迎える王妃殿下は例外なく国内の公爵家の娘なのよ。

 普通の王国だったらそんなことしたら血が濃すぎて問題になりそうだけど、テレジア王国には公爵家がいっぱいある。

 王子と嫁の公爵令嬢は血はかろうじて繋がっていてもほぼ他人。

 だから上手くいっていたんだけど。


 どうも、私の祖父(じいちゃん)の代でそろそろ他国の血を入れよう、という話になったみたい。

 国内の公爵家の勢力が拮抗して、どれかの公爵家から将来の王妃を娶るのが難しくなってきたこともある。

 いや出来なくはないんだけどマンネリというか。

 なので、くだんの王子は政略の一環として幼い頃から外国の王族の子弟と親しく交流していたらしい。

 そして某大国の姫君を婚約者にして順風満帆だったはずが。

 辛かったのね、祖父(じい)ちゃん(泣)。


 思わず同情してしまったけど、そこで気がついた。

 舞踏会で婚約破棄したのよね。

 その結果、婚姻は取り消しになったんだけど、当の王子で初代のテレジア公爵はその後、結婚しなかった。

 別に寵愛した男爵令嬢とかがいたわけでもなかったみたい。

 独身のまま病没して、それはいいんだけど、婚約破棄された大国の王女殿下はどうなったんだろう?


 本をめくってみたけど書いてなかった。

 それはそうか。

 テレジア王国の歴史には関係ないものね。

 その大国の歴史書にも載っているかどうか。

 そんな不名誉な事実を誰でも読める本に載せるとは思えないし。


 晩餐(ディナー)に珍しくコレル閣下がいらっしゃったので聞いてみた。

「テレジア公爵、いや元王子の婚約者?

 そういえばどうなったのかな。

 私も知らないが」

「酷い醜聞(スキャンダル)ですよね。

 傷物にされてしまったわけで」

「そうだな。

 当然帰国したとは思うが。

 他国の話で、しかももう数十年たっているから情報が皆無だ。

 王家なら何か知っているかもしれんが」

 ミルガスト伯爵家程度では判らないと。


「気になるのか?」

「それはそうです。

 だって私が押しつけ……継ぐことになっているテレジア公爵家って、その国の王家にしてみれば諸悪の根源みたいなものじゃないですか。

 今までは後継が絶えたということで見逃されてきたのかもしれないけど、復活したら難癖つけてきません?」

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