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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第三章 育預

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119.中堅国家

 もちろん舞踏会は王家だけが開くわけではなくて、原則として爵位持ちの貴族なら誰でも開ける。

 ていうか平民でも許可があれば開催出来る。

 主催は無理みたいだけど、その場合は誰か貴族に名目上の主催者になって貰うわけ。

 でも会場を用意して楽団を手配して、内装やお食事、そしてウェイターやメイドを雇って、となるともの凄い費用がかかるから、まず高位の領地貴族じゃないと無理。

 逆に言えば社交シーズンにそういう催し(イベント)を開かないと高位貴族としてどうか、というお話になったりして。


 いや、エリザベスの家みたいな男爵だけど大富豪なら可能だけど、そういう家が開く舞踏会(イベント)って商売がらみだものね。

 男爵クラスが招待しても高位貴族はまず来ないし。

 招待状を出すのは主催者の自由。

 でも出席するかどうかも参加者の自由だから。


 執事の人(アーサーさん)が言っていたけど、ミルガスト伯爵家でも年に何度かはタウンハウスで舞踏会を開くそうだ。

 その都度、人を雇って会場を手配してご招待して、という面倒くさいお仕事が降りかかってくる。

 お金もかかる。

 ちなみに何でタウンハウスで開くのかというと、領地で開いても誰も来てくれないから(笑)。


 だってそうでしょう。

 わざわざ舞踏会に出るためだけに遠いよその領地に出かける貴族なんかいるわけがない。

 来てくれたとしたって隣の領地とかの貴族だけだ。

 貴族の社交は王都や、国内の比較的大きな街でしかやらないのはそういう理由。

 まあ舞踏会はね。

 参加する人も、特に淑女はドレスを用意しなければならないし、毎回同じドレスだったら馬鹿にされるから何着も作らないといけない。

 貧乏な家にはきつい催し(イベント)よね。


 もっとも地方の有力な領地貴族が自家の寄子を招いて小規模の舞踏会を開くことはある。

 でもそれ、むしろ寄親貴族の寄子に対するサービスだそうだ。

 舞踏会の目的って参加者の親睦を深めるのが第一だ。

 まあ、派閥を強化するために開催する場合もあると。


 パーティは舞踏会よりは格落ちというか、気軽に参加出来る催し(イベント)だ。

 開く理由は何でもいい。

 貴族家当主や正室、あるいは嫡男の誕生日とか、どなたかの爵位継承、授爵とか。

 招待客も自由で好きな人を呼べる。

 でも王家には儀礼上、必ず招待状を送ることになっている。

 大抵はお断りされる。

 それはそうだよ。

 そんなのに全部出ていたら王家の人たちは過労死してしまう。

 もっとも、例えば暇な王子とかが興味を引かれて出ることもあるそうだ。

 その場合は例によって子爵を名乗るそうなので、出席者は気づかないふりをするのが礼儀(マナー)だ。


 もっと気軽に開催出来るのがお茶会で、私が最初に招待されて出席したモルズ伯爵家の集まりがそれだ。

 これは文字通り「お茶会」なので、招待されれば誰でも参加出来る。

 開催の主催も自由。

 貴族家当主じゃなくて令嬢や令息が主催してもいいわけ。

 ただ、これも招待されないと参加出来ないのよね。

 だからまず、貴族はそういった催し(イベント)に招待されることを目指すんだけど。


 いざ招待されて、相手や参加者の事を知らなかったらそこで試合終了どころか対外試合禁止になってしまう。

 なので、そういった招待状には大抵、同席する参加者のリストがついている。

 ついてない時は調べる必要がある。

 でも、それだけでは駄目だ。

 招待客以外にも招かれた客がいるかもしれないから。


 その方と接近遭遇して会話する場合、相手の事を何も知らないのと、爵位や背景情報をある程度知っているのとでは天と地ほど違ってくるわけ。

 初手で失敗したら信頼回復は大変だ。

 逆に、初対面の相手が自分の事をある程度ご存じだったら好意を持たずにはいられないでしょう。

 というような理屈で礼儀(マナー)のシシリー先生に申しつけられた宿題がこれ。

 分厚い貴族名鑑と王国の地図を渡されて全部覚えろと(泣)。

 無理。


「全部というのは言葉の綾です。

 出来るだけでよろしい」

「それでも莫大過ぎるんですが」

「公爵家の当主には必要なことでございます」

 鬼め!


 しょうが無いので空き時間には地図とにらめっこしている。

 おかげで結構自分が住んでいる国の事がわかってきた。

 テレジア王国は領土の一部が海に面しているけど、基本的には内陸国家だ。

 大陸の南方に位置していて、周りに結構たくさん国がある。

 大昔に大陸全土を支配していた大帝国があって、それが何やかんやで分裂して長いことお互いにやりあっていたんだけど、何とかまとまってきたのが数百年前。

 今の大陸には突出して強力な国はない。大国と呼べる国がいくつかあるけど。


 テレジア王国は中堅国家ということで、似たような国とほどほどにお付き合いしているとか。

 戦争していたのは百年くらい前までで、その後は落ち着いて緩やかな同盟を結んでいるらしい。

 なぜかというと、他の大陸との接触があったから。

 身内で争っている場合じゃない、ということになったらしいのよね。

 他の大陸がどんな状態なのか、そもそもいくつあってどんな国があるのかは調査中ということだった。

 学院で世界史担当の教授に質問してみたんだけど。

「判らない、という結論です。

 それについては王政府の専管事項ですので」

 どうも情報統制されているみたい。

 外交的に何かあるのかも。


「貴方はまだテレジア王国のことすらよく知らないのですから、そんなことを気にする前に自分の国の事を学びなさい」

 これ、私にじゃなくて同席していた知らない淑女が言われていた。

 みんな考える事は同じみたい。

 まあ、それはそうよね。

 自分の国の事も判らないうちに外国の事を教わっても無意味だ。

 増して他の大陸のこととか。

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― 新着の感想 ―
[一言] 規模と深度は違えど 全て「営業」 で、貴族は家族経営の中小企業のオーナー社長 そして領地と柵からは逃げられない 貴族の当主 寿命短そうだ
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