11.徒歩通院
ついでに登院について説明すると、もちろん歩きだ。
学院は王都の中心から少し離れた所に建っていて、ちょっと小高い丘の上にある。
私が住んでいるミルガスト伯爵邸は貴族街つまり王都の中心部にあるので、そこから歩いて20分くらいかな。
ちなみに王都の中心から学院までは結構大きな通りが通じている。
これは学院が元々はお城で、もっと言えば王宮の支城というか砦だったためらしい。
万一の場合は軍隊が移動出来るようにということで、もちろんそんな必要があったのは何百年も前だそうだけど。
でもそのせいもあって通りには所々に警備隊の詰め所があるし、騎士が頻繁に行き来していて安全この上もない。
だから私みたいな無防備な貴族令嬢も一人で歩けるわけだ。
というよりはこの辺って貴族街だから、貴族以外は許可を得た平民しかいない。
後は商人だけど、それだって特別に貴族街での商業許可を得ている人たちだけだから平民の中でも上位身分。
浮浪者とかならず者的な人って見た事もない。
平民街には結構彷徨いているけど。
孤児だった頃は私も似たようなものだったし。
私が通りを歩いていると紳士淑女の方々とすれ違ったりするけど、そもそも通りを歩いているような人は下位貴族や平民だけだからね。
いちいち貴族の挨拶を交わしたりはしない。
でも警備隊には頭を下げるし、騎士の方には淑女として簡単な礼はする。
私は男爵令嬢だから警備隊や騎士よりは身分が高いんだけど、ことさらに反感を買ったり敵を作ったりしたくないからね。
警備隊って基本は平民だけど隊長はひょっとしたら貴族の可能性があるし。
騎士も希に爵位持ちがやっていることがあって、難しいのよ。
てくてく歩いて学院に着くと門番がいるけど、ドレス姿なら止められることはない。
女性は生徒か、それでなくても貴族身分であることは間違いないから。
むしろ男性の方が怪しまれて身分を証明する必要があったりする。
あ、そういえば登院する道には男女の区別がないので一緒だ。
門を入った途端に分かれるけど。




