表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第三章 育預

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/371

116.公爵

「それは判った。

 でも、ミルガスト家はいいの?」

 さっきも言ったけど、今まで手間暇も金もかけて育ててきた有能な家臣や使用人を取り上げられることになるのでは。


「むしろ王家に貸しを作れるので」

 グレースがこともなげに言った。

「今回の件でミルガスト伯爵家は株を上げました。

 何と言ってもお嬢様を育てた、と主張出来るわけですからね。

 育預(はぐくみ)として扱ったという事実は今後も大いに効いてきます。

 次期テレジア公爵が育預(はぐくみ)だったのですよ?

 これは乳母を出すことに匹敵する実績(コネ)です」


 なるほど。

 貴族は名誉を尊ぶ。

 同時にコネ社会だ。

 公爵家と強い繋がりがある領地伯爵家って、立場的に相当伸してきそう。

「それに比べたら使用人を持って行かれるくらいは安いものだと」

「それどころか公爵家の使用人とも繋がりが出来るわけです。

 八方美味しいお話と思います」

 うーん。

 つまり今回の話はミルガスト伯爵家にとっては大いに利益があるお話だったわけか。

 私としてはミルガスト家にはお世話になったわけだから異論はないけど。


「そういえばグレースがメイド(かしら)でサンディが侍女長になるの?」

 聞いてみた。

「それは無理です。

 公爵家ですからね。

 侍女もメイドも、高位貴族家というよりはむしろ王家の仕来りに詳しくなくては務まりません。

 どなたか経験を積んだ方が王家から紹介されると思います」

 でもお嬢様の専属メイドや侍女は私たちですので、と誇らしげなグレース。

 本当に何でこの人、こんなに私に入れ込むんだろう。

 あ、そういえば。


執事の人(アーサーさん)は?

 家令とかになるの?」

 確かコレル閣下にそう命じられていたような。

「アーサー様はとりあえず家令見習いですね。

 公爵家を仕切るには何もかも不足しているとご本人もおっしゃっていました」

 さすがに判っている。

 領地伯爵家とはいえ、たかがタウンハウスを仕切っていた経験しかないのでは、いきなり公爵家の家令とか無理でしょう。

 その公爵家が身分だけの張りぼてだったとしても。


「家令や執事はやっぱり王家から来るのね」

「主要人事は基本的に王家の差配でしょうね。

 ただ、お嬢様の近しい者はミルガストから参ります」

 ですからお嬢様はご安心を、とグレース。

 何をどう安心したらいいのよ(泣)。

 公爵令嬢やらされるのは私なのよ?

 いくら乙女ゲーム小説のヒロインだからといったって無理がありすぎる。


「お嬢様は公爵令嬢にはなりませんよ?」

 グレースが当たり前のように言った。

「本当?

 やらなくてもいいの?」

「そうではなくてですね。

 コレル様から伺ったところ、お嬢様はテレジア公爵家を継ぐので当主になるそうです。

 敬称は令嬢ではなくて殿下です」

 パネェ(泣)。


 グレースと話して疲れてしまってまたベッドに戻って目を閉じて開けたら朝だった。

「お嬢様。

 ご起床のお時間です」

 グレースがカーテンを開けたらしくて天蓋ベッドのカーテンごしでも明るい光が押し寄せて来ているのが判った。

 今日も快晴か。

 こっちは朝っぱらからどんよりとした気分なのに(泣)。


「起きます」

 自分で天蓋ベッドのカーテンを明けて踏み出すと、グレースの他に2人のメイドさんが待機していた。

 ワゴン押したりしているけど、それは?

「まず、湯浴みを。

 朝食はその後になります」

 いちいち説明してくれなくてもいいよ!

 ちょっと前までは夜明けと共に起きて裏の井戸から水汲んで頭から被っていたのになあ。

 それが朝から湯浴みか。

 未だに慣れない。


 私はぼけっとしたまま夜着を脱がされてお風呂に放り込まれて洗われた後、髪を乾かしながらお化粧された。

 朝飯前にここまでやるのか。

 育預(はぐくみ)だと言われた頃より加速してない?

「世が世なら御身は王女殿下でごさいます」

 いや、今はその世じゃないから!


 朝食は美味しかったけど落ち着かない。

 だってグレースを含めて3人のメイドさんが給仕してくれるんだよ。

 ところで二人とも見かけない顔だけど、そちらは?

「二人ともお嬢様がお尋ねです。

 名乗りなさい」

「はい! タマラでございます」

「スーザンと申します。お嬢様」

 タマラさんにスーザンさんね。

 見るからに平民だけど、平民の中では上層(アッパークラス)くさい。

 大商人とか准男爵家レベルの家の子女じゃないかな。

 私、何を偉そうに(泣)。


「ただいま訓練中でございます。

 つたない部分はお見逃し下さいませ」

 グレースがよそ行き言葉になってる!

 配下の前だからもあると思うけど。

 私はボロを出さないように澄まして上品に食事を終えた。

 これくらいは出来るようになった。

 誰か私の努力を認めて(泣)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 周りの人は皆貴女の努力を認めているよ! だからこそこうなっているんだがなブヘヘ
[良い点] 見ていてかわいそうなシンデレラストーリー [気になる点] 学校ではどういう扱いになるのやら
[一言] ほぼ底辺だった主人公がとうとう殿下と呼ばれる雲上人に! 女侯爵になるのかな? 内密に結婚相手も決められていそうで心配です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ