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転生ヒロインの学院生活  作者: 笛伊豆
第三章 育預

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114.血筋

 いや、何となくは判ってはいたのよ。

 私の前世の人が読んでいた乙女ゲーム小説って、設定は荒唐無稽だけど物語(ストーリー)はしっかりしていた。

 (ヒロイン)が攻略対象を虜にしていく過程もキテレツではあるけど論理が通っていたし。

 問題は(ヒロイン)が元孤児の男爵家庶子であることだけで。


 でもそれ、実は母方の血筋が、という伏線が敷かれていたのよね。

 途中までしか読んでなかったみたいなので結末は判らないけど、身分が問題になった時点で母方が出てくることは予想出来る。

 何たって「王家に連なる血筋」だ。

 攻略対象の殿方は高位貴族の貴公子だけど、血筋で言えば勝るとも劣らない。

 だから意外じゃないんだけど。

 まさかテレジア家とは。

 それって「王家に連なる」んじゃなくて、モロに前王家じゃないの!


「ですが大丈夫なのでしょうか。

 私は何も聞かされておりませんし、母は公爵様に認知されていないと聞きましたが」

 そう、身分上も血筋上も公的には無関係だと思う。

 庶子として認められるには、つまり血筋を証明するには認知されている必要がある。

 私にはそれすらなかったはず。


「王家が認めた。

 それがすべてだ」

 コレル閣下が重々しく言った。

「そもそも身分などというものは王家が認めているから成立しているにすぎない。

 例えばミルガスト伯爵家や、失礼だがサエラ男爵家も王家が伯爵や男爵だと認めたからそう呼ばれているだけで、それ以外に何ら根拠があるものではない」


 そう、なのか。

 そういえばエリザベスが言ってたっけ。

 国の土地はすべて王家の所有で、領地貴族はその土地の統治権を王家に認められているだけだと。

 爵位もそれと同じなのか。


「極端に言えば、今王家というか王政府がミルガスト伯爵家から爵位を剥奪する、と発表すれば我々は貴族ではなくなる。

 もちろんそんなことをしたら内乱にはなるがな」

 いや、本当に極端なので止めて下さい。


「だから、王家が(マリアンヌ)をテレジア公爵家を継ぐに相応しいと言えば、それが真実になる。

 血統などは二の次と言っていい。

 実際、貴族の血筋などはかなりいい加減というか、怪しいものだからな」

 コレル閣下、笑いながらそんな恐ろしいことを言わないで(泣)。

 私が衝撃のあまり黙っていたらサエラ男爵様(イケオジ兄上)が優しく言った。


「コレル殿。

 (マリアンヌ)は混乱しているようだ。

 とりあえず休ませては」

「そうですな。

 いきなりでは衝撃が大きかっただろう。

 今日はここまでにしておこう」

「……ありがとうございます」


 かろうじてお礼は言えたけどねえ。

 グレースに付き添われて自分のお部屋に戻った私は、そのままベッドに倒れて寝てしまった。

 よく出来たメイドのグレースが素早く人払いしてくれたから助かった。

 目が覚めたら、やっぱり真夜中だった。

 夕食食べた覚えがないからお腹が鳴っている。

 鈴を鳴らすと即座にワゴンを押したグレースが現れた。

 完璧メイドだ。


「お夜食でございます。

 サンドイッチと、申し訳ありませんが冷たいスープで」

「ありがとう」

 スープが冷えているのは仕方がない。

 ていうか飲んでみたら美味しかった。

 もともと冷スープなようだ。

 サンドイッチも素晴らしい。

 伯爵令嬢っていいなあ(違)。


「ねえグレース」

「何でございましょう」

「さっきのあれ、夢とかじゃないよね?」

 悪夢だったらどんなにいいか。

「本当でございます。

 お嬢(マリアンヌ)様はテレジア公爵家を継がれると」

 あっさり言ったグレースだけど、何その満面の笑みは。


「無理だと思う」

「そんなことはございません。

 というよりは王家のご命令ですよ?

 無理でも何でもやるしかないのでは」

 そうなんだよ!

 礼儀(マナー)の講義で嫌と言うほど叩き込まれた。

 王家の命令は絶対だ。

 貴族である限り、逆らうことは許されない。


 これ、別に王家が偉いからとかじゃなくて、そうすることで体制を維持しているからなのよね。

 王が命令して臣下が従う。

 それによって王国が成立する。

 臣下が王に逆らっても許されるんだったら、王国なんかあっという間に崩壊してしまう。

 だから貴族は理不尽だろうが無理だろうが王家が命令したら素直に従うのよ。

 もっとも、あんまり無理や馬鹿げたことを押しつけると反乱になるけど。

 その権利は認められているとか。


 そういえば私の祖父、ということになるテレジア公爵様で前王子がやらかした事で、貴族が一斉に当時の王家に反発したんだった。

 その圧力に耐えきれずに、前テレジア国王は退位しただけじゃなくて王位を傍系の公爵家に譲ってしまった。

 もっともやらかした王子以外の子弟は新しい王家の養子に迎えられて王族の身分を維持したらしい。

 全員、女性だったから。

 これは別に温情とかじゃなくて、政略結婚の駒として王女にしておいた方が値打ちが上がるからだろうね。

 王女と公爵令嬢では他国から観てやっぱり差が大きいし。


 それはいいとして、つまり王家も万能だとか不可侵とかじゃないってこと。

 王は貴族が支えているからこそ王として存在出来るわけで、貴族が反発するようなことは滅多には出来ない。

 ていうか何か理由がないと命令出来ないというべき?

 私の前世の人が読んでいた乙女ゲーム小説では、馬鹿な王子が自分が王子だから何してもいいとか言っていたけど、実際には無理なのよね。

 いや、何をしても良いのは確かなんだけど、ちゃんと理由がなくちゃ駄目だ。

 逆に言えば理由があればやってもいい?

 まあいいけど。

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