101.専属
立て続けに衝撃的な事実を突きつけられて唖然としてしまった私をよそに、この変則的な集まりは侃々諤々の議論に突入していた。
内容は今後の私の支援体制。
とりあえず、コレル閣下以外のここにいる要員が私の専属になることが決まった。
というか、ミルガスト伯爵家の意思で最初から決められていたらしい。
私の専属メイドなグレースは引き続きその任に当たるけど、今後は複数名の配下がつくことになる。
なので主任になると。
グレースは頬を染めて張り切っていた。
何でそんなに私に入れ込むのかね?
サンディさんはミルガスト伯爵家の侍女なんだけど、とりあえず私の専属侍女をやってくれるとのこと。
もっともこれは暫定的で、状況によってどうなるかは判らない。
ただ、私の専属を外れることはない。
意味不明だよね。
そして執事の人が一番大変だった。
やっぱり私の専属にされてしまった。
「家令」という立場になるらしいけど、何なのそれ?
私の身分は男爵令嬢で別に「家」を持っているわけじゃないんだけど(泣)。
「今は」
不吉な!
何かデスゲームがどんどん近づいてくる気がする。
だけど断れないんだよね。
そもそも私の意思なんか誰も気にしてなさそう。
「コレル閣下はどうなさるのでしょうか」
サンディさんが聞いてくれた。
「俺はミルガストの渉外だからな。
すぐにはその立場は崩せん。
まあ、今は連絡係というところか」
だからよろしくな、と言われて引き攣る執事の人。
大変だなあ。(ひとごと)
「お疲れの所をお引き留めして申し訳なかった。
どうぞお休み下さい」
コレル閣下に言われて私は飛びついた。
早く寝たい。
眠ってとりあえずこの地獄から脱出したい。
グレースに先導されてお部屋に戻ると聞かれた。
「ご入浴なさいますか?」
「いいです」
「お心のままに」
グレースの言動が変わっちゃってる!
それ、王族に対する言葉じゃない?
もういい。
寝間着に着替えさせて貰ってトイレに行ってからベッドに飛び込んで毛布を被って寝た。
やっぱり疲れていたみたい。
目が覚めたらカーテンから光が漏れていた。
よく寝たらしい。
そしてブレない私の専属メイドがやってくる。
「おはようございます」
今日も元気いっぱいだなあ。
私は起き抜けからもう疲れているのに(泣)。
「おはよう」
「お風呂の準備が出来ております」
さいですか。
とうとう朝風呂が基準になってしまったらしい。
どこの王侯貴族だよ!
テレジア家か(泣)。
それから私は寝間着を脱がされ風呂に放り込まれて身体を洗われた。
グレースじゃないメイドが二人がかりで洗ってくれた。
見覚えがないんですが?
ミルガスト伯爵家タウンハウスのメイドは一応、全員顔見知りのはずなんだけど。
「「本日よりお嬢様のお世話をさせて頂きます」」
新しく雇われたらしい。
正確に言えばミルガスト伯爵領から王都に出てきたそうだ。
二人とも伯爵家の家臣の娘で、ということは平民だけど貴族に近いわけか。
聞いてみたら私より若かった。
学院にも行ってないので、基本的にはミルガスト邸での勤務になる。
私専属ってこと?
何かもうよく判らないから無視することにする。
ていうか、私の世話ってそんなに人いらないでしょう!
私自身がついこないだまでメイドやってたんだし。
グレース一人でも身に余るのに。
そのグレースはメイド頭というか、私の専属メイド隊を指揮する立場になったとかではりきっていた。
「大出世でございます」
そうなの。
お給金も上がるそうだけど、誰が払うんだろう。
考えるのはよそう。




