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ミッション6 魔物を討伐しよう



『報酬として恐怖体制LV1を獲得しました』



初心者装備セットを購入することができ、一度装備した段階でミッションを達成した。

結局剣だけでよかったのか装備一式揃ったからクリア扱いになったのかは分からなかったが、

これで次のミッションに移行できる。



それに冒険者となって街の外にも出られるようになった。

俺はこの世界で一応の自由を手に入れたんだ。

ならこれからどうしたいか。

なぜこの異世界へ連れてこられてしまったのか。

何かの理由があって俺だったのか、それともたまたまなのか。



疑問は払拭できないが自分が何者なのか、自分に期待しているわけではないけど二十歳の男が異世界に来たのだ。どこまでやれるのか心躍らせたって不思議ではないだろう。

非日常に投げ出されてそう思ったが、元の世界だって同じかもな・・・なんて達観した考えにも至った。

達観というよりかは多角的な視点を得たというだけなのだと思う。


人は、地続きの日常でなかなか立ち止まって考えることは難しい。

それは学校や仕事、宿題に遊び、恋愛だったり子育てだったりをしているうちに年を取っていく。

目の前の"何か"にいつも一所懸命だからだ。

立ち止まった時に気付いたらおじいさんだった、なんてこともよく聞くご高説だ。

まぁ、これは俺のじいちゃんからの受け売りだが。

その時のじいちゃんは笑って続けた『後悔もあるが今笑っとるから勝ちじゃ』と。


不意に元の世界の記憶を齧ったことで少しばかり感傷に浸ってしまった。

それと同時にじいさんになる前にこうやって立ち止まって考えることが出来たのはこの世界に来て良かったことなのかもしれない。


「よしっ!」と意気込んでからゾジーの元へと駆けだした。


結局立ち止まったはいいものの漠然とした未来に答えなんて見出すことは出来ない。

何をするにもまずは情報収集だ、と。




『ミッション発生 魔物を討伐しよう』




うーん、やっぱりいるんだ。魔物って・・・

もしかしてあの狼も魔物の一種なのかな?

この世界の知識に疎い為、自然動物が自由に食物連鎖を繰り広げているのかもしれない、くらいに考えていた。というのは希望的観測で、初日から剣や盾を身につけた冒険者の姿を見ていたから魔物の存在を想定くらいはしていた。

漫画やゲーム、それにラノベならありがちなパターンなのでそれなりに免疫はあるみたいだ。

だがリアルに魔物、というか狼一匹現れただけでもかなりビビる。

死の恐怖で混乱するし、手足も思ったように動かない。

我ながらよくあの状況から五体満足で生き残れたな、と思う。

ビギナーズラック万歳!よくやった自分!



ゾジーのいる総合役場までの道程で気分を上げた。



「やぁ、ゾジー。お疲れ様!」


「やぁチヒィロォ!初日で装備まで手に入れるなんて凄いじゃないか!頑張ったんだね、チヒィロォォォォ」


見た目の変化で驚かれるかな?くらいには想像していたが思いの外、号泣する程に感動して抱き締めてくるゾジーに逆に自分が驚愕してしまった。



暫く号泣する小太りのおっさんと青年という絵にならない被写体を怪訝な視線を集めたが、落ち着いたゾジーは気にも止めずにいつもの小部屋にチヒロを連れて行った。

それがまた周囲に何かしらの意味を持たせてしまって数日間は民衆の好奇心の的になってしまう・・・、がこれはまた別の話。




「それでチヒィロォ、冒険者ギルドでの仕事はどうだったんだい?」


「ああ、薬草採取の依頼を受けてなんとかやり遂げることが出来たよ、これもゾジーやみんなのおかげだ、ありがとう」


「ははは、やり遂げたのはチヒィロォさ。その手柄はちゃんとチヒィロォが持っているべき事実だよ。それよりもなんとか、ってのは何か問題があったのかい?」


ゾジーに薬草採取での出来事をボディーランゲージも使って臨場感たっぷりに報告した。言葉が通じなかった数日間がいつの間にかチヒロに表現力の向上へと繋がっていた。



「ふむ、茶色い狼か。それはきっとブリックウルフだね」


「ブリックウルフ・・・?」


「チヒィロォはほんとに何も知らないんだね!ブリックウルフはこの辺りに生息している魔物だよ、しかも低級のね」


やはり魔物だったのか、という納得と低級というワードに魔物への脅威レベルが一段階上昇した。

石を噛み砕く程の脅威を目の前のゾジーが言ってのけたのだ。この世界の人間にとってはあの狼、ブリックウルフは雑魚とでもいうのだろうか。


そんな不安気な胸の内を察したのかゾジーは不思議そうに首を傾げる。



「魔物ってあんなのばっかりなのか?」


「あんなの?どういう意味かいまいち分からないけど狼の魔物ばかりじゃないさ。普通にゴブリンやスライムだっているよ」


ゾジーの言う普通とは意味を履き違えてはいるが確かに普通だと感じた。

ある意味異世界への予習はしてあるとも言えるので異世界で魔物、つまりモンスターがいるのであればゴブリンやスライム、ドラゴンなんてのは普通だと妙に納得した。


「やっぱりドラゴンとかもいるのか?」


「ドラゴンももちろんいるよ、でもこの辺りには居ないよ。魔境やダンジョンならいると思うけど・・・、でも上級魔物の討伐なんてのはチヒィロォにとっては文字通り格上の冒険者の仕事だよ」


「そりゃそうだ。聞いてみただけだよ」



その後も魔物についてあれこれ聞きつつ、何かの魔物を倒してみたいと相談すると「詳しくは冒険者ギルドで聞いてごらん」と梯子を外された気にもなったが、餅は餅屋ということらしい。



明日は討伐達成の報告が出来るように頑張ることを告げて宿屋へと向かった。



◇◇◇



「この辺りにファングラビットがいるんだよな・・・」


未開の地を警戒しながら歩を進めるチヒロは恐怖心を誤魔化すように独り言ちる。


翌早朝から冒険者ギルドで討伐の依頼を聞くと【ファングラビットの牙と肉の採取】という依頼を勧められたのだ。


前日の草原から二本木に向かって少し北に行くとファングラビットの生息域に入るらしい。

草原よりも木が多く、実りのある植物が見られることもあり生命の気配を感じられる。



話によるとゴブリンやスライムもこの辺りに餌を狩りにくるらしいので事前にギルド職員から情報は聞き出しておいた。早朝だからかチャミーは居なかったが男の職員は眠たそうにしながらも親切に答えてくれた。




「いた・・・」



茶色い毛玉のような生き物に赤い目が二つ、何かを捕食しているのか鋭い牙が獲物を刺している。


剣を鞘から抜き、そろりと近づいていくと気配に気付かれたのかこちらをじっと見つめてくる。


目が合ったまま数瞬の時間停止。


更に間合いを詰めるべく一歩足を進めると覚悟を決めたのか食いかけの獲物を放り出して真っ直ぐこちらへと向かって駆け出してくる。



「うりゃあぁ!」


基本も何も無い剣筋は空を切り、ドゥッという鈍い音を地面で鳴らすだけ。回り込んだ牙兎はすかさず足首の辺りを噛み付こうと大きく顎を裂いたと思ったらすぐにガチンッと音を立てて閉じる。


「あっぶね!」


「うりゃ!」


ドゥッ


ガチンッ!


「おりゃ!」


ドゥッ


ガチンッガチン!


「ふんっ!」


どんっ!ばたばたばた・・・



結局最後は蹴りによる攻撃でファングラビットは地面を転がり瀕死となった。


殺すことに忌避感は少なからずあったが死闘を繰り広げた相手に無礼だと納得させる理由を無理やりつけて一思いに剣を刺す。



剣先からじわりと赤い血が漏れてきて少しすると赤く輝く目から光が失われていき、呻くような動きを止めた。



「はぁぁ〜」と大きく息を吐き、精神の摩耗を緩和させる。



やった、やったぞ!


最下級の魔物とはいえ、これでミッションは達成したはずだ。




どうだ!ミッション様よぉ!見てたならさっさと報酬くれやぃ!



『ミッション達成』


『報酬として〈冒険者の記録〉機能を追加します』



なんか良く分からんけどやったぜ!






ガサガサガサ・・・




えっ?

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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