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ミッション2 お金を手に入れよう



さて、異世界2日目の今井千尋から回想の続きをお伝えします。


牢屋の冷たい床でもぐっすりバッチリ爆睡し、疲れを取ることが出来ました。寝ることに関しては前世?からも大の得意です。


目が覚めると頭の中に声が響きました。

イヤホンから流れる音のような鮮明な声音は、声優さんの綺麗な耳心地の良い女性の声でした。



『ミッション発生 お金を手に入れよう』



正体不明の声ではありますが、この世界に来て初めて理解出来る言語はそれだけで救いのパワーを感じ、未来への活力になりました。



俺にとってはこの声が生命線だと使命感を抱きつつも、『お金を手に入れる』ことが現状困難なことも同時に悟っていました。


途方に暮れる檻の中、数人の衛兵さんが俺の前まで来て鍵を開け、槍を手に持ち警戒しながら俺の両手を拘束してきました。

あら?もしかしてこのままドナドナされちゃうのかしら?なんて危機感軽めに考えていたら案の定何処かの建物へと連れていかれました。



目的地の建物には丸に十字の模様が描かれ、雰囲気的には役所のようなお堅いイメージです。



受付のようなカウンターまで引っ張られ、男性職員さんが板状の何かを差し出してきました。


俺はなんのこっちゃ分からへん、といった態度を全力で表情に出したところで衛兵さんに右手を謎ボードの上に押し付けました。



すると謎ボードは淡く青白く発光し、衛兵と職員達は安堵と困惑を浮かべます。


俺の案内人たちが異世界語でこの正体不明の問題児をどう処理をするかを話し合っていたようで、結論が出たのか手縄を解いて代わりに黒い腕輪を両手に付けられた。



その後は衛兵が立ち去り職員と2人きりとなってこれからについての説明を受けるターン。

とは言っても流れは掴んでいるものの言葉は分からない。

職員さんはフレンドリーな感じが見て取れるから警戒心は薄れるもののこの先どうなるのかは不安でいっぱいだ。

黒板のある部屋で職員さんの身振り手振り、絵や実物を混じえての全力説明を受け、なんとか自分の立ち位置を理解することに成功した、と思う。



俺の解釈としては、犯罪は確認されなかったので処罰はされない、しかし入街税の支払いが出来ない無一文の男を野放しにすれば犯罪者予備軍として拘留が必要になる。その為、一時的に軽犯奴隷扱いとして入街税を支払えるまで身を落とし、払い終わった段階で解放する。

また言葉が通じない為、暫くは役所の人間が付き添い及び監視兼言語教育役として近くに居てくれるっぽい。



と、そんな訳で掃き溜めの清掃作業やらゴミ回収、孤児院での炊き出しなどの手伝いといった奉仕活動を職員さんの指示のもと行っていく。


一つ一つやり終えていく度にナイススマイルで肩を叩く職員さんとは言葉は通じないが心は通じていると、留学生のような気分を味わいつつ達成感もあった。


空の明るさも落ち始めたところで役所に戻ってきた俺たちは面談室といった趣きの小部屋で本日のまとめに入った。



半日以上の付き合いの成果として、お互いの名前を認知するまでに至った。

彼の名前はゾジーで、俺の事はチヒィロォというイントネーションで呼んでくれるようになった。

また少しずつこの世界の常識も教えて貰い、お金についても外枠を知ることが出来た。


この世界では基本的に硬貨で取り引きされている。

貨幣価値までは分かっていないが数種類の硬貨があり、大金貨、金貨、小金貨、大銀貨、銀貨、小銀貨、銅貨は少なくともあるらしい。それ以外の硬貨は一般市民には縁遠いのかそもそも無いのか、まぁ今は知らなくても良いことだと置いておこう。



入街税は銀貨1枚取られると黒板で説明を受けていてその支払いが今の俺の義務であり、滞ればそれだけ奴隷の身分からは抜け出せないのだ。


ゾジーは今日行った奉仕活動の報酬として小銀貨5枚と銅貨3枚を小袋に入れて机の上に置いた。



この世界で初めて稼いだお金に手を伸ばしたがゾジーは意地悪なのか小袋を掴み取り小銀貨3枚を残してから「どうぞ」と手を俺に向ける。


なんで搾取されたんだ!?と顔に出ていたのかゾジーは必死に弁明した。


これは付き添いとしての世話役の料金と昼に食べた不味いパンと塩辛い干し肉の立て替えた代金だったようだ。

腹黒い職員だと疑ってごめんなさい。



お互い意思疎通は出来るようになったので苦笑いを浮かべてから若干の気まずさを小部屋に残して本日の宿へと案内された。


ゾジーのジェスチャー言語によると役所と提携している安宿らしく小銀貨2枚で泊まれるらしい。

これで報酬の残金は小銀貨1枚となってしまった。

異世界世知辛い。

いや、これはどこの世界でも同じか。金が無ければ心も貧しくなっていく。


むしろここまで世話をして貰えるだけ好待遇といえるだろう。


宿部屋に入ると牢屋よりも狭く2畳ほどのシングルベッドよりも細く感じる寝具があるだけだった。木の板をはめただけのシンプルな作りで薄地の布が一枚置かれただけの如何にもなサービス体制だ。


それでも囲われた空間に一人きりになったことで人心地につくことが出来たことでこの世界で初めてのストレスフリー。



疲れもあるが俺には一つだけ確認しておかないといけないことがある。徐ろに小袋から一枚の小銀貨を手に取ると、



『ミッション達成』


『報酬として言語理解LV1を獲得しました』



「おおっ!これで明日からは不自由なく話せるようになるかもしれない!よっしゃああああ!!!」



(ドンッ)



『ウルセーゾ!』



さーせん。


あれ?なんかカタコトじゃね?お隣さん外国人?

ワタシニホンゴシカワカリマセーン。



ま、いっか。とりあえず唐突な新天地だとしても生きていけるような気がしてきたし寝よ。









スキルゲットってもしかして俺ってチートキャラなのかな?と夢想するとニヤニヤが止まらずなかなか眠れない。

「よーし!明日も頑張るぞー!!」



(ドンッ)




あ、さーせん・・・



最後まで読んで頂きありがとうございます。

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