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04「局地マジカルバナナ」

 体育棟を真上からみると、ゲーム機の左側についているボタンのような形をしている。

 それぞれ東西南北をつけて呼べば、それがそのまま通称になる。

 ”北”体育棟は1F2F部分が武道室で、その上の3Fに上がると何があるかというと、やはり武道室である。

 武道系の部活が妙に豊富なので、これだけ用意されてるのも頷けるものだが、実をいうと剣道部と柔道部以外はほとんど活動をしていない。仮に朝練があったとしても顧問の立ち合いもなければ、走るコースが埋まっているのが現状だ。

 しかし、ほとんどの”例外”が問題で、空手部の部長にして唯一の部員である、鬼神と呼ばれる三年生”桃島キイロ”という人物が、今、目の前に現れた。

「え?」

 突然のことに、”万水”が驚きの声を上げた。

「51人目がいたとはね…」

「この時期に体育棟が開くとは何事ですか」

 キイロ先輩は丁寧かつ鮮やかに鋭い。そして狂っている。彼女は平然と”監獄棟”と呼ばれる場所に朝練をしに行くのだ。

「まさか鬼神先輩、朝練ですか?」

 彼女は、道着を着ていたのだ。学生服の何倍も頑丈でかつ、しかし堅牢とは言えない衣装。

「ええ。先生方には黙っていてくださいね」

 何をしていたか知らないが、玉のような汗をかき、ほほも真っ赤に上気させている。

「当然いわないよ。いったら僕らも怒られるし」

「しかし、どうやってここに?」

「三階の窓をあけてあるんですよ。こっそり」

 まさか、出入口がほかに存在するとは。とはいっても、常人用ではないことは明らかだ。ただ、出られるなら方法を選ばず脱出を選ぶ人もいるかもしれない。

「三階にほかの人はいませんでしたか?」

「二時間ほどいましたが、誰も来ませんでしたよ。二人だけでも珍しい」

 ならば、無謀な脱出を試みた人は、今のところいないのだろう。

「窓から飛び降りるなんてね。しかし…四つのカギで封鎖ってのは嘘じゃないか」

「鍵を壊せればその限りではありませんからね。」

 鬼神キイロ先輩は、窓まで歩きよって、”鍵”を軽く叩いて見せた。

「つまり遠隔で同期してるってこと? 扉を封鎖するだけじゃ不足って訳か」

「いえ。ここはそんな簡単なつくりじゃありませんよ。”監獄棟”はあながち間違っていない表現です」

 冗談をいったつもりか、そうではないかもしれないが、桃島キイロは”にんまり”笑って、付け足した。


「三年になれば教えてもらえます」


 小声で万水が耳打ちしてきた。「わお」と。「確かにな」と小声で呟くが、聞こえたかわからない。女の趣味が99%合致していることだけがこいつとの友情を育んだ、その事実は誰にも知られるわけにはいかない。

「もうじきホームルームですよ。あなた方も用事はほどほどにね」

 そういって、先輩は三階への階段を上がっていった。

 それを見送って、万水が私に振り替える。

「北体育棟にはもう用はないかな。まさかのイカレビューティだったね。しかし、道着を着ると…」

「もうちょっとはだけてたらな」

「まあそれはそうかも」

「それにしても、3Fにすら行ってないというのは、いよいよ武道室には近づくつもりがないみたいだね」

「窓から飛び降りる勇気があるかはともかくな」

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