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03「畳隠れの術」

「消えたって…指示だしセットなんか何に使うんだ?」

「ここには50人も人間がいるんだよ。リーダーが扇動すれば、なんだって起こりうる」

 中高生向け然とした、チープな掲示板をこぶしでノックして、おもろくなさそうに笑う。

「この板の核心は”筋肉とテクニック”。しかし、一番危険視すべきはチームワーク。そういう考え方でいろいろ怖がるんだよ」

「忙しく朝練する奴らはある程度この掲示板に洗脳されてるかもしれないが、教師もいるんだろ? そいつらはさすがに扇動されないだろ」

 いやいや、とまるで私が変なことを言ったかのように手を振った。

「年功序列じゃないんだよ。ある一点、異常事態において、先頭に立てる素質というのは歳の問題じゃない」

「異常事態って…お前がやったんだろ」

「それね。実をいうとお手伝いがいたんだよ。まあ、したくてしたわけじゃないと思うけどさ」

「どうやって?」

「そりゃ人質だよ」

「は?」

「怪力自慢の柔道部のメンバーにね。クリティカルな武器を持ってたからさ。話し戻すけど、一人いたんだよ、素質アリってやつがね」

 扇動するリーダー。この体育棟のどこかに隊列を作って、解放戦争を仕掛けようと企てている人物。

 そして怪力の柔道部員。どちらも見当がつく。

「よし。ここの扉を封鎖しようか。いわゆるミスディレクションってやつでね」

 彼は、部屋中の畳を集めて壁に貼り付け、そして、掲示板に『工事中』と表示して部屋のど真ん中に置いた。

「これでいい」

 いいわけない。だが、破綻してよし、そういう立場としては、もう何も言うまい。


「さて、ここに人がいない理由は何だろうね。考えてからじゃないと、先に進みたくない」

「どうでもいい」

「よくないよ。だって、わざわざここに物を取りに来てるのに、なんでここを拠点にしないの?」

 たしかに、50人は優に収容できる。扉も近いし、全員集まっているなら、ここを避ける理由なんてないと思える。

「どう思う?」

「柔道部か剣道部のホームに居たくない、とか?」

「つまり、扇動者はほかの部員ってことかな」

「ところで、柔道部って体育棟が閉まってる時、朝練はなにしてるの?」

「外でランニング。雨の日は練習そのものがなくなる」

「ふーん。今日は晴れてるし、全メンバーいると思っていいよね?」

「だろうな。10人くらいの弱小部だけど、今いるメンツはやる気まんまんだ」

「君はそれが嫌だったんだね」

「そうだ」

「ここに居たくない理由は、柔道部のホームだから、ってのは多分正解な気がするよ」

 道着を着て目つきが変わった連中を想像して、恐怖をフラッシュバックする。

「寒気がしてきた。ここを出よう」

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