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デジャヴは突然に

まだ朝日が昇る前の早朝、何故か私は眠い目を擦りながらルーク様の部屋で正座をさせられていた。

全く現状が理解できないんだけど何がどうなってるんだろう。


まだ睡眠中の私の部屋にルーク様からこんな真っ暗な早朝から引っ張り起こされ正座させられてるなんて、私はまだたちの悪い夢の中にいるのかもしれない。


再び目を閉じようとしたところで頬を引っ張られ現実に戻される。



「るーくさま、いひぁいれす!はなひてくらひゃい!」


「お前、なんで俺が怒ってんのかわかんねぇの?」



恨めしげに抗議の視線を向けるとハンと鼻で笑われ、再び睨み付けられる。


私がいったいルーク様に何をしたというのか。

勘違いも甚だしい。

これだけ平和に暮らそうと努力しているのに。わざわざ怒られるような事をしでかした記憶がない。


一昨日の食料云々の話はルーク様の上機嫌で終わったし、あれは怒らせるような事をしてないはずだ。


昨日なんてほぼ一日ノエル様に捕まっていたせいで、そもそもルーク様には会ってないし、怒られるような事をしでかすタイミングもなかった。


これを理不尽と言わずになんというんだろう。


まあこの乙女ゲームのキャラに関しては理不尽の塊のようなものなのだけれど……。


なんて現実逃避を再開するとルーク様から再び頬を引っ張られる。それも容赦なく。



「るーくさま、ごめんなひゃい」



さすがの私も痛みに耐えかねて涙目になってくる。



「で、お前俺になんて言った?」



やっと解放された頬をさすりながら不満げに見つめて小さく言葉にする。



「ルーク様、ごめんなさい」


「違う」


「ルーク様、痛いです離してください」


「違う」



え、これも違うの?私それ以外にルーク様と話したっけ?

寝ぼけてるせいなのか全く身に覚えがない。



「お前わざと喧嘩売ってんじゃねぇだろうな?」


「申し訳ございません本当にわかりません!」



不機嫌極まりないルーク様に私は急いで頭を下げる。

まさかここでバットエンドとかないよね。

なんでこんなことになってるかも分からないのに死ぬなんて何の意味もない。

また最初からか……なんて思って諦めた時だった。



「チッ。お前の頭が相当出来が悪いのはわかった。もう一度だけ言ってやるから今度は一生心に刻めよ」



そう言ってルーク様は私の顎に手をかけ自分の方に向かせる。必然的に目が合う訳で。

近距離の綺麗な顔立ちを前に無駄に顔が熱っていくのが自分でも分かる。

この美麗スチル見たさに、私は負けて無心で連打攻略したんだよなと現実逃避してしまう。



「私の血は不味いのでルーク様のお口に合うようにこれからは精一杯努力します。ほら、言えよ」



耳元で囁くようにそう言えば、有無を言わさない視線を向けられ私はコクコクと頷く。

初日の話をしていたのか。そりゃ分からないよ。

少し不満に思いつつも復唱する。



「私の血は不味いので、ルーク様のお口に合うようにこれからは精一杯努力します!」


「それで、だ。お前自分でそう言ったにも関わらず俺の許可なくノエルの専属になったって?」



そこまで言われてやっと分かった。

そう言えば昨日のは専属の契約だった。

いや、あれはもう不可抗力というか、ノエル様に関しては私が何言おうが聞く耳を持ってくれなかったのが正しくて。

ルーク様のように話が通じる相手ではなかったということなんだけれど。


それを説明しようかと思ったけれど、たぶんそれじゃ許してもらえない気がする。



「あの場では、そうせざる終えなかったと言いますか……ごめんなさい」



視線を彷徨わせるとルーク様は相当苛立ってるのか、今にもその辺の物を破壊するのではと思わせる空気を纏っている。

正直怖いし近づきたくない。

少しずつ距離をとる。



「アイツ、珍しく部屋から出てきたかと思ったら、リイルはオレのだから指一本触れないでね。触れたら殺すだ?……こっちに来い」



少しずつ離れていたのを気付いてかそういうと私を引き寄せる。そしてそのまま胸元のボタンを外したかと思うと、ノエル様の印と真逆の首筋に突然牙を立てた。



「痛いです痛いですルーク様ーー!!」


「これはお前へのお仕置きだから我慢しろ」



ふんとルーク様は意地の悪い笑みを浮かべ、そしてさらに深く牙を刺される。



「ルーク様ごめんなさい、本当に痛いです許してくださいーー!」



私が最初のトラウマになった時ほどの痛さではないようなきもするんだけど痛いものは痛い。

なんでルーク様は吸血がこうも下手なの!ノエル様の時と大違いだ。

涙が次から次へとこぼれるが、それを見ても満足そうにそれでいて意地悪な笑みのまま続けられた。


泣くのも疲れた頃やっとルーク様が満足したのか私を離してくれた。しばらくして貧血と泣き疲れてぐったりしていると、抱き抱えられルーク様のベッドへ連れて行かれた。


もう反抗する力も残っていなくて、自分の体力の無さにため息でも吐きたくなる。



「まぁ俺も鬼じゃねぇし今後のお前の態度次第ではこうしてやってもいいが?」



そういうと先程の激痛の吸血した場所に舌を這わす。

その瞬間ノエル様の時のように全身が甘く痺れる感覚に襲われる。



「ひゃあ!?ルーク様!?」



先程吸血された場所を入念に舐められ、先程の激痛から正反対の甘い痺れる感覚の差に感覚がどうにかなりそうだ。


戸惑いを隠せずにいると、ルーク様はそのまま先程と同じように牙を刺した。


「っ……?痛く、ない」


そう私が呟くと、ルーク様はそのまま吸血を始めた。

だけど今度は全く激痛がなくて甘い渦に飲まれる。自分の血液がルーク様へと流れる波に合わせて甘い痺れと共に思考まで徐々に奪われていく。


「ほら、どうなのか言えよ」


ルーク様が喋る吐息でさえも甘い刺激に変えられ思考がまるで定まらない。


「よく…わからない…です…」


「これはどうだ?」


「ひ、ぁ……」



反射的に声が出てしまう。さらに深く刺さる感じはあるのだけど、痛くないせいで感覚が麻痺してしまっているのか、小さな刺激ですら反応してしまう。



「お前は誰のだ?」


「わたしは…ルークさま……の――?」



ふわふわとする快楽の渦の中、私はふと我に返った。今までが嘘のように思考がクリアでハッキリする。

と同時に顔から火が出そうな勢いで熱が上がる。



「……ルーク様、私変なこと言いました忘れてください!」


そう言うとルーク様は何故か驚いたように目を見張る。そして苛立たしげに背後のドア先に目を向けた。



「ねぇ、リイルはオレの専属だから指一本でも触れたら殺すって言ったよね」



同じく視線の先を見るとノエル様が。

その場の空気が冷たいものに変わる。



「はっ。コイツがお前の専属だ?寝ぼけてんのかお前。俺の専属なんだが?」



突然腕を引っ張られたかと思うと、先程牙を立てられた場所をノエル様に見せつける。



「ルーク、殺す」



それを見て殺気だったノエル様に、ニヤリと笑うルーク様に私はその場で後退りする。

途端に空気の圧が変わった。


え、待って、この既視感は何?

呆然と立ちすくむ私はある答えに辿り着いた。


あれだ、一周目の謎の爆発死亡ルートだ。


まさかここでこの悪夢のバッドエンドになるなんて。

ガクンと膝から崩れ落ちる。


またやり直しになるのかなぁ、それとももう普通に終わりかな?なんて考えながらその光景をぼっと見ていると誰かから強く腕を引かれた。



「ちょっと、お前死にたいの?阿保なの?」



驚いて見上げるとそこのは攻略キャラの一人である三男のルキが呆れたように私を立たせてくれていた。

確かルキはツンデレキャラで私と同い年だったはず。

まあこの方もこの兄弟なのだからやはり整った顔立ちがとても目を引く。



「ちょっと、ボケッとしてないで自分で走ってくれない?死にたいなら捨て置くけど」


「ご、ごめんなさい!死にたくないです!」


「あっそ。それじゃ付いてきたら。こんなとこにいるとアイツ等の巻き添えくらうの目に見えてるし。ホント朝から最悪、うるさいって文句言いにきたらこんなことになってるしさ!」



心底嫌な物を見る目でルキ様が争ってる二人を睨みつけると、すぐに私達は踵を返してその場を後にしたのだった。







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