特等席の、その先に。
がたんごとんと揺れて でも 溢れずに
さりげなく置かれていた カップ
握り締めると熱いから
柔らかく 人差し指と親指だけで摘まんでみて
軽く捻った 湯気が優しい 空気が濡れてゆく
と――― パキッと割った音が鳴り響き 器を開いて
冷めていたのに 美味そうな匂いでいっぱいになる
目まぐるしく 移り変わる風景は まるで塵のように
気にしない 気にしない
先ず摘まんでみたのは 小さな粒で
多分 締めに相応しき 梅干しだった
メインには目もくれずに
焼売と 鶏の唐揚げよりも
何より 1口目は 故郷の景色で埋まる