バーテンダー
小噺を一つ
俺がバーテンダーをやってた時の話をするよ
実は俺、昔バーテンダーをやってたんだ
全くお酒を飲めない俺は、結局成功できなかったけど
良い経験は沢山できたかな
今日はその中から話していきます
俺がバーテンダーになりたてだったころ、
当然だけど師匠について色々教えてもらってたんだ
バーテンダーの世界っていうのはとび職みたいに職人気質なところがあってさ
本で読むだけじゃ学べない業界なんだよ
業界の暗黙のルールとか技術とかは先輩とか師匠から少しずつ学ぶのが
バーテンダーの世界の常識なんだな
で、俺がいたバーっていうのがオーセンティック(本格派)バーではなくて、
カラオケもあり飲み放題もある、いわゆるカラオケバーみたいなとこだったんだよ
で、そんなとこだと団体客とかには飲み放題のパキパキに安いウイスキーなんかを
提供したりもするんよ
そういうウイスキーはメジャーカップでいちいち分量を量らずに
目分量で早く入れるための注ぎ口みたいな、瓶の口に付ける道具があるんよ
だけど、その注ぎ口みたいな道具を使うといっつも注ぐ時に零れちゃってさ
何回やっても零れるもんだから、ある日師匠に相談したんよ
「師匠、この注ぎ口使うといつも回りに少し零れちゃうんですけど、
どうしたらいいですかね?」
そしたら師匠はしばらく考えておもむろに
「それは、ウイスキーへの愛が足りないんじゃないかな?」
って言い放ったんよ
実際師匠が零してるのをみたことがなかったから
当時あほだった俺は深く感銘を受けて、
「分かりました。もっとウイスキーを愛してみます」
って言ってしばらく零さないように愛しながら練習したんよ
で、しばらく練習しても一向にうまくならない、
やっぱり入れる時に周りにこぼれちゃうんだな
どうしても出来なくて困った俺はもう一回師匠に相談することにしたんだ
「師匠、やっぱりどれだけ愛してもダメです。零しちゃいます。
どうしてですかね?」
俺は半ば愛し切れないことを怒られることを覚悟しながら聞いたんだ。
けど、師匠は怒ることなくしばらく考えて冷静に言い放ったんだ
「それは溢れて零れるほどの愛なんじゃないかな」
ガーン!
俺は頭を打たれたような気分だったね。
上手い
上手すぎる
俺は一生この人についていこうって、心の底から思ったね
まぁ、なんの解決にもなってないんだけどね




