イーゼルを吊り上げる
小噺を一つ
正しい言葉づかいをやたら気にする人っているよね
今日はそんな話をするよ
昔名古屋に住んでた頃に、家の近くのコンビニのおばちゃんで
「箸をお付けしますか?」を上品ぶりたいのか何かしらんけど
「お手元はお付けしますか?」って必ず丁寧ぶって聞いてくるやつがいたな
で、俺最初お手元って何か分からなくて、
「お手元って何ですか?」って聞いたんだよ
したら、そんなことも知らんのかこのアホは、と言わんばかりの
軽蔑の眼をしながら「箸のことです」って言うんだな
なんじゃコイツは、って感じじゃん
しかも、そんなやつに限って
「お一つで(よろしかった)でしょうか?」
とか言ってくんのな
「『(よろしい)でしょうか』だ、このタコ
もいっぺん日本語勉強してこい!」
とか心の中で思いながら、ほっといたったわ
そんな正しい日本語・正しい言葉にこだわるエピソードがもう一つあってさ
昔俺がホテルで働いてる時のことなんだけど
上司に仲井っていう嫌味なやつがいてさ
こいつがやたら正しい言葉遣いにこだわんのさ
ホテルって結構ホテル用語みたいな鼻に着く言い回しが多くてさ
例えば「コップって言うな、ちゃんとグラスって言え」とか
「スープカップって言うな、タスカップって言え」とか
「片づけって言うな、バッシングって言え」とか
本当どうでもいいことにこだわって、ウザいくらいに指摘してくんのさ
俺からしたら、同じ物のことなんだからどっちでもいいじゃんって感じでさ
それに、先にホテル業界にいる上司の方が、そういう専門用語身についてるの
当たり前のことじゃん
それを偉そうにしてくんのが、とにかく鼻について仕方なかったんだ
で、そんなある日の事、イーゼルに飾ってあった絵がレイアウト変更で
お客様から見えにくいってことになって、天井からヒモを下げて
吊り上げて掲示しよう、ってことになったらしいんだよ
で、それを俺らに指示するために仲井が係のみんなを集めて
「絵がお客様から見えにくいって話になったもんで、
お前たちみんなで手分けしてイーゼルを吊り上げといてくれ」
ってそう言ったんだよ
多分この仲井にとってはイーゼルって言葉を絵のカッコイイ言い方か
何かだと勘違いしてたんだと思うけど、俺からしたらポカンだよね
だってイーゼルって絵を載せる三本脚の台のことだもん
だから俺はすかさず問い詰めてやったね
「イーゼルを吊り上げるんですか?
イーゼルってこれ(絵を載せる台)ですよ
こんなもん吊り上げて何になるんですか?」
今まで散々言葉遣いのことで注意されてきたから、その仕返しだね
そしたら仲井は自分の間違いに気付いたのか焦りながら
「うるせ―!イーゼルで意味は通じるだろ
細かいこと気にせずさっさと仕事しろ!」
だってさ
意味通じねーよ!バーカ!!
何も言わずにほっといたけど、今こそ言いたい一言でした
平家に限らず、驕るものは足元掬われるっていう良い経験談だね




