部長と営業回り
小噺を一つ
俺が新入社員だった時の話をするよ
俺、新入社員だった時に営業やってたんだよ
で、新入社員の営業回りなんて新規開拓、つまり飛び込み営業がメインに
なってくるんだけど、俺法人の方の営業やってたもんだから
そうそう簡単には新規顧客なんて獲れないんだよね
だけど、上司特に部長は体育会系の精神論者だったから
がんばれば獲れる、獲れないのは頑張ってないからだって
いつも怒られてたなぁ
で、ある日のこと
「お前全然顧客獲得出来ないけど、どんな営業しとんじゃい」ってなって
「もういい、俺が一緒について回ってやり方を見せてやる!」って
部長と営業回りすることになったんだよ
で、当日は何とかアポイント(話を聞いてもらう約束)を2件入れたんだな
まぁ、どっちも見込み無しって感じのところだったんだけど、
「話を聞くだけでいいので時間下さい」って半ば拝み倒してアポを入れたんだよ
で、1件目
これがまた公務員かってくらいお堅いメガネのおじさんが
受付の担当やってて取りつく島もありませんって感じの雰囲気を醸し出してたんだ
で、開口一番が「ウチ話聞いてもやりませんよ」だったからもう絶望的だよね
部長も頑張って何とか突破口をこじ開けようとしてたけど、
不可能だよね
言うなれば日韓ワールドカップの時のイタリアとウクライナが闘うみたいなもんさ
いくらシェフチェンコが頑張っても、カテナチオは崩せんわ
で、1件目あえなく撃沈
それから2件目に行く前に昼飯を食うことにしたんだよ
そこらへんのラーメン屋
部長のおごりってことで適当に俺はチャーハン、部長はラーメン頼んだの
そしたら食ってる途中に俺のチャーハンの中から『ゴリッ』って
硬ったい感覚の物があったのさ
直ぐに吐き出してみたらなんと『石』が入ってて、俺も部長も驚いたね
部長が取り替えてもらえってんで、店員呼びつけて取り替えてもらったんだけど
取り替えるって言って丼持ってった1分後くらいに新しいチャーハン持ってくんだよ
部長が「これ絶対同じ鍋で作ったやつだから替えても意味ねーだろ」
って笑いながら言ってきたけど、俺はもう諦めてちょっと食って残したの
そんな変な日は何やっても上手くいくわけ無くてさ
2件目もあえなく撃沈
もう帰ろうか?だけど話も弾まなくて時間あるな、って感じになったのね
で、その時回ってたルートがたまたまゴルフの石川遼くんが通ってるって
有名な高校の近くだったもんだから、部長ゴルフ好きなもんだから
「おい、ちょっと近く通るか」
ってなったんだよ
もうこの時点で意味分かんないんだけど、とりあえず断れる訳も無く行ったのね
で、校門の前辺りまで来たところで、いきなり部長がこんなこと言いだしたの
「ちょっと石川遼くんに会いたいな。お前、ちょっとその辺の生徒に
いるかどうか聞いて来てくれ」
なんじゃそりゃってなるじゃん、
だけど部長は部長だから部下としては断れる訳も無く、
仕方なくちょうど下校中の男の子二人組を捕まえて、俺一人で聞いてきたよ
俺「ねぇ、君たちここの生徒だよね?石川遼くんってここの生徒だよね?」
男子生徒「はい。そうです」
俺「今石川遼くんっているのかな?どっかで練習してるのかな?」
男子生徒「……知らないです」
そりゃ1生徒がほとんど来てない石川遼のスケジュールなんて知らんわな
ありがとうって言って、結果を部長に報告しに戻ったんだけど、部長から一言
「なんで会えないんだよ!お前そんな営業もできんのか」
ってさ
こんな理不尽な部長がいる会社、辞めるよね、そりゃ




