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俺のすべらない話  作者: 弓 ゆみ太
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波動

小噺を一つ


俺が高校3年生の頃の話


俺の通っていた学校は普通科だったから、高3になると


理系と文系でガッツリクラスが分けられちゃうんだよ


平たく言うと物理選択は理系、生物選択は文系みたいな感じでさ


そうやって分けるとどうしても男女の比率にヒズミが出来ちゃうんだな


で、高3になると理系に1クラスだけ『男クラ(ダンクラ)』なる


男子オンリーのクラスが出来る仕組みになってたんだ


俺、物理選択でバリバリの理系だったから、3年になる時


男クラになったら嫌だなーってビクビクしてたのを覚えてるな


俺はギリギリのところで男クラを回避したんだけど、


仲いい友達がほとんど男クラになっちゃったんで、よく男クラに遊びに行ってたんだ


男だけとはいえ、頭の良いやつが多かったからか、そんなに殺伐としてなかったな


悪く言えば『ずる賢い』、良く言えば『陽気』って感じの雰囲気でさ


ちょうど井坂幸太郎の『陽気なギャング』シリーズの人達みたいな集団だったな


で、話の本題に入るんだけど、夏ごろだったかな


球技大会があるってんで、その前に各クラスでクラスTシャツなるものを


作らないといけなかったんだ


多分けっこうどこの学校でもあるんじゃないかな


で、デザインをクラスの掲示板の所に張るって形で募集してたんだけど、


男クラの奴らは妙に冷めてたから、誰もデザイン出さなかったんだな


それどころか、募集の隣にたまたま張ってあった


中間だか期末だかの物理のテスト範囲の紙を


誰かイタズラして募集の所に張り替えた奴がいたんだな


まぁその時の物理の先生もぶっ飛んだ人だったから、


普通テスト範囲って『○ページから○ページ』とか『ワーク○○』とか書くところを


そのテスト範囲の紙だけ1行で『物理テスト範囲「波動」』ってだけ書いてあって


その「波動」の文字がデカデカしてて、妙にインパクトがあったんだよな


で、他にデザインも出てこなかったもんだから、あれよあれよで


男クラのクラスTシャツは『波動』って楷書体で


デカデカと前に書くってことに決まったんだよ


だけど、後ろにもデザインが要るってなって、誰かが


「波動の方程式書いとけばー」って言ったことから


波動方程式とか、シュレディンガー方程式とかをTシャツの背面いっぱいに


ツラツラと並べたてたんだよ


波動方程式とか、シュレディンガー方程式って知らない人もいると思うけど


けっこう訳分からん記号がいっぱい出てきて、何かちょっとカッコいいんだな


出来た男クラのクラスTシャツ見て俺も欲しいなーって思ったもん


で、そのクラスTシャツを着て、球技大会で男クラは大活躍


そりゃそうだわな、だって男子だけしかいないんだもん


女子にキャーキャー言われて、ヒーローのようだったよ



だけど、奴らの本当の狙いはそこじゃなかったんだな


実はこれには後日談のような物があってさ


球技大会の後に行われた、中間だか期末だかの物理のテストで


男クラのやつらほとんどが満点近くの点数を取ったんだよ


あの難しい『波動』の範囲でだよ


Tシャツを背負って勉強したからだろうって?


違う、そうじゃないんだな


奴ら全員クラスTシャツをカッターシャツの下に着てテストを受けたんだよ


カッターシャツって透けるじゃん


だから下にある波動方程式とかシュレディンガー方程式が見放題でさ


その辺の問題って、方程式覚えてれば数値代入するだけで答え出るから


点数取り放題の入れ食い状態だったんだよ


先生も注意しようにも出来なかったって、だってクラスTシャツだからさ



この合法カンニング考えた奴マジで天才だろ

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