お…な…え…
小噺を一つ
俺が親父と一緒に新米の精米に行った時の話をするよ
都会の人には分からんかもしれんけど、田舎だとどこからのルートか
知らんけど、茶色い紙袋に入ったお米を購入できることがあるんだよ
もちろんスーパーとかじゃ売って無くて、ルートは謎なのだけれど
で、その紙袋で買った新米は、精米ってことをしないと食べれないみたいなんだよ
どこでするのかというと、田舎だとスーパーとかJAとかの一角に
コイン精米所なるコインランドリーみたいな無人の施設があるんだよ
で、あれは10年以上前のことだったかなぁ、大学卒業して少しした頃
くらいだったと思うんだけど、たまたま実家に帰省している時に
なぜか親父と一緒に精米しに行くことになったんだよ
確か、俺が車の運転技術がなまらないように練習させてやるって名目だったと
思うんだ
俺ってその頃結構グレてて、世の中に対して斜に構えた態度取ってたから
普段だったら絶対にそんなの行かない所を、その時はちょっと練習してみるか
ってなったんだったと思う
で、親父と一緒にいざコイン精米所に行ってさ、
親父にやり方聞きながらやったんだよ
やり方って言っても、コイン入れて、袋の中のお米全部機械に放りこんで
落ちてくるお米を同じ袋で受け止めるってだけなんだけど
じゃあやってみろって段になって、俺ちょっと恥ずかしくなっちゃったんだよね
なんで俺こんなことしてんだろ?誰かに見られたらどうしよう?とか
考えちゃったりして
で、ちょっと不良っぽくダラダラやってやったんだよ
雑に放りこんでやった
そしたら親父に「零すなよ!ちゃんと持てよ」って軽く怒られた
怒られたもんだから、逆に不貞腐れてもっと雑になっちゃったんだよね
お米の精米って下に落ちてくるお米を紙袋に入れるだけなんだけど、
紙袋だからちゃんと持ってないと、お米の自重でくにゃくにゃになって
はずれちゃうんだな
俺それをしっかり理解してなくてさ
これくらいでいいか、って袋を軽めに支える程度にしか持ってなかったんだ
左手は添えるだけ、くらいにしかね
そしたら案の定
ザサーッってかんじで
零れたんだ
お米がけっこうさ
それを見ていた親父が一言
「お…な…え…」
正確には『お』と『な』と『え』を同時に言った感じだったな
その時の親父の顔が何とも言えないくらい情けない顔してたんだよね
例えるなら、ドラゴンボールで天津飯の登場する最後のシーン
ブウだかに腹を殴られて悶え苦しむ姿(詳しくは虚栄のZ戦士ってサイト参照)
に似てたんだよ
あのシーンは天津飯は「お…お…」としか言ってなくて
考察では「お(願いします)お(助け下さい)」だったけど
親父の場合はこんな感じだった
「お(まえ)な(にやってんだよ)え(ぇぇ!?)」
本当に『お』と『な』と『え』を同時に言おうとするとあんな顔になるんだな
って教科書に載せたい顔してたわ
で、俺はそれを見て爆笑
更に手を離してしまって、お米じゃじゃ漏れ
親父に最後ババ切れされて終わったんだなぁ
親父には悪いけどもう一回みたいなぁ、あの顔




