偽りの天才
小噺を一つ
俺が証券マンをやってた時の話
証券マンって基本的に最初は営業させられるのさ
で、同期150人くらいで営業成績争ったりさせられるんだけど
その中に一人まぎれもない天才が混じってたんだよ
それは営業成績がトップクラスとかそういう次元じゃなくて
人を騙すことが俺らの中でぶち抜いて上だった
上手すぎて騙された人間が騙されたことに気付いてないくらいだったから
言うなれば[偽りの天才]だな
外見も今考えれば北斗の拳のアミバみたいな感じだったしな(笑)
そいつの名を言ってみろって?
そいつの名前はジャギ…
じゃなくて名前は「耶麻口くん」って言ったな
エピソードは数多くあるんだけど、印象に残ってるのを二つほど紹介するよ
一つ目
証券業界っていうのは営業する上で破っては行けないルールというものが存在するんだ
しつこい営業だめ、みたいなやつ
それがないと基本営業マンって頭おかしいやつしかいないから
やりたい放題になっちゃうからさ
まぁ、サッカーで手を使っちゃだめみたいな感じのことさ
その中の一つに、「絶対」という言葉を使っちゃだめっていうのがあるんだ
専門用語でいうと断定的判断の供与っていうんだけどさ
けど、この縛りに俺らはめっちゃ苦しんでた
だって言いたいじゃん「絶対儲かります」って
そこで、この天才耶麻口くんが考え出した言い回しが
「九分九厘大丈夫です!」だった
正直最初聞いたときは眼から鱗だった。
だって絶対儲かります、って言ってるようなもんじゃん
でもよくよく考えたら、それもアウトなんじゃないの?って思って聞いてみたんだよ
したらこの天才
「9.9%しか言ってないから大丈夫。通話録音聞かれたことあるけど、大丈夫だったし」
とのこと。
マジ衝撃
二つ目
昔、BNPパリバって会社が出した『ドリームパスポート』っていう投資信託があるんだよ
通称:ドリパス
これ、投資をしない人でも聞いたことあるんじゃないかな
めちゃくちゃ流行ったヒット商品なんだよ。
ゲームで言ったらドラクエ3
スロットで言ったら北斗の拳
ほんとそれくらいみんな夢中になって、みんな持ってた
だけど、流行ったのと、儲かったのはまた別の話なんだな。
実はこれ大コケしたんだ。リーマンショックの影響をもろに受けてさ
で、俺らが営業してた頃には既に塩漬けの干物みたいな商品になってた
だから俺らの中では先人の残した負の遺産ってイメージの商品なんだよ。
で、これを売って違う商品に乗り換えるのが俺らの仕事だったんだけど、
一度痛い目にあってるから、みんな新しい投資をしたがらないんだよ。
で、みんなこの負の遺産に苦しめられてた。
そんなとき、天才が現れたんだよ
そう、耶麻口くんって天才がね。
彼はどうしたかというと、日経新聞って経済新聞の中の小さな記事に注目した。
その記事のなかではこんなことが書かれていた
「BNPパリバ東京証券取引所の外国株市場で上場廃止」ってね
俺らの中では、外国の会社がどうでもいい市場に重複上場させておくのが意味ないって考えて
取引少ないから廃止にしたんでしょ、って感じでスルーしてたんだけど、
耶麻口くんはこの新聞を取っておいて、ドリパスのBNPパリバが上場廃止になりました。
やばいですよ、って言って回ってドリパスを乗り換えまくったんだって
一般の人には何か分からんけど、悪いことが起こったんでしょ?みたいなイメージ受けるから
今考えると、ショート動画の悪意のある切り抜きみたいな感じだな。
さすが天才
この耶麻口くん、俺が会社辞めてから没交渉になったもんで消息不明なんだけど
今なにしてんのかなぁ?
トップセールスマンになってたら良いんだけどなぁ
詐欺して捕まってなければと心のそこから願います。




