兄貴の話⑤(雨の日の本屋にて)
小噺を一つ
お母さんから聞いた話
今から20年以上前、兄貴が高校生だった時の話
その日はあいにくの雨だったらしくて、
いつもは自転車で通学していた兄貴もその日は
お母さんにお願いして車で送り迎えしてもらってたらしい
そしてその帰り道に、ちょっと時間があるってんで
本屋に寄ってもらうようにお母さんに頼んだんだな
何でも、ゲーム雑誌と欲しいラノベだかの小説があったらしいんだよ
で、高校生の頃ってお母さんと横に並んで買い物って恥ずかしくてできないじゃん
だから、お母さんは少し離れて買い物を見守っていたらしいのね
で、雑誌は立ち読みで済ませたらしいんだけど、小説は買うってことで
兄貴一人でレジに並んで、お母さんはその様子を心配そうに
眺めてたらしいんだよ
だって、変わってるから粗相が無いようにってさ
そしたら、兄貴小説を買う際にレジの人に
「カバーはお掛けしますか?」って聞かれたらしいのよ
で、しばらくアホの子のようにポカーンってしたもんだから
あ、こりゃマズイなってお母さんがヘルプに行こうかと思ったらしいんだけど、
2秒ぐらいして、
「は、はぁ」
って生返事をしたらしいのね
で、お母さんは「掛けてもらいたかったけど、恥ずかしかったのかな」
って思って、ほっと一安心してその場は事なきを得たんだけど、
二人で車にもどって、お母さんギョッとしたんだって
なんでかって言うと、さっき買ったばかりの本をすぐに開けて
あろうことか、せっかく掛けてもらったカバーまで、ビャーって
外して、くちゃくちゃにして、丸めてポイってしたかららしい
意味わからんだろ?だからお母さん聞いたんだよ
「あんた、さっき店員さんがせっかく『カバー掛けますか?』って
聞いてまで掛けてくれたのに、なんでカバーすぐ捨てたるんや?」ってさ
したら兄貴はこう答えた
「カバーって何のことか分からなくてさ、
持ってた傘が濡れてたから、カバー掛けてくれるのかと思った。
本にカバーなんて読みにくいからいらんよ」
……
本屋で傘にカバー掛けてくれるサービスなんてあるか!
そんな兄貴も今や立派な社会人だよ




