プリンの話
小噺を一つ
100話記念
俺が人生で経験した中で一番面白かった話をするよ
あくまで俺の主観だからつまらなかったらカンベンな
あれは10年くらい前の頃の話
俺って興味無いことは全然覚えられなくて、車とかスポーツとか
あと、いつ頃何をしたとかはあんまり覚えられないんだよ
だけど、年ははっきり覚えてないけど日付だけはしっかり覚えてる
12月31日から1月1日にかけての年越しの話
その時俺は三重県の実家に帰ってきてたんだよ
で、三重県の年越しと言えば知る人ぞ知る、パチンコ屋のオールナイト営業だ
その頃はマジで廃人のようにパチスロに浸かってたから
行かないという選択肢は無かったんだ
で、当時同じくパチスロにどっぷり浸かった廃人友達の小森君ってやつに
車(小森君の愛車『アリスト』)を出してもらって
夜の20時くらいからパチスロ打ちにパチンコ屋に向かったんだ
大人の初詣だー、とか言ってさ
当時流行ってたキンキキッズの『ビロードの闇』って曲を聞きながら
ビロードって何だろうな、って話をしながら向かってたのを覚えてる
で、パチンコ屋に着いてすぐに打ち始めたんだ
打ったのは『押忍番長(初代)』と
『ジャックと豆の木』だったのをはっきりと覚えてる
なぜかって?
そりゃぼろ負けしたからに決まってるだろ
軍資金は四万円だったんだけど、オールナイトで判断力も鈍ってて
設定もクソみたいな全台ベタピンに決まってるから
負けるべきしてぼろ負けしてたんだな
で、途中で足りなくなってさ、同じくぼろ負けしてた小森君に借りたんだよ
1万円
帰りに送ってくれたら、家に置いてあるお年玉(おばあちゃんから先にもらった)
で返すからって説得してさ
その時はむしろそこから取り返して返すつもりだったんだけど
返り打ちにあって、結局その1万円もペロリと台に飲みこまれたんだ
で、朝方ふたりとも心も体も財布もボロボロになりながら、
俺の家まで送ってもらったんだ
お年玉で返すためにさ
余談だが、俺は昔お小遣いといっておばあちゃんにもらった3万円を
その日の内に全部パチスロに溶かした経験があるんだ
さすがにその時は自殺したくなったけどね
あの時はごめんな、おばあちゃん
で、俺は心のなかで泣きながらもお年玉の1万円を取りに家まで帰ったんだよ
俺の実家は道路沿いに面しててさ、駐車場が無かったんだ
だから、小森君には申し訳ないんだけど、俺の家から50mくらいのところにある
サークルKの駐車場に車を停めてもらって
取ってくるまで待っててもらうことにしたんだな
その時点で時刻は朝の6時か、7時
完徹してる状態だから二人ともグロッキーでさ
小森君は「俺少し寝ながら待ってるわ―」なんていいながら
シートを倒して休みだしたんだな
俺、金借りといてなんだけど、その態度を見て内心『横柄な奴だなー』って
ちょっとイラっとしながら小走りで金を取りに帰ったんだよ
で、ソッコー取ってきてコンビニの駐車場に戻ったらさ
車が2台停まってたのね
両方セダン
で、俺は『確かこっちこっち』って半ば霞のかかった頭で記憶を頼りに
小森君の待つアリストに戻ったんだよ
で、運転席に近づくにつれて、小森君が寝てなくて
何か手に持ってなんかしてるのが手だけ見えたんだよ
更に近づくと、それが手にプリンを持って食ってるって分かったんだな
で、俺その時
『さっき寝るって言っときながら
自分だけコンビニでプリン買って食っとんかい!』
ってかなりイラっとしちゃったんだよ
寝不足っていう原因も多分にあったと思う
で、俺は瞬間で頭をひねって名案を思いついたんだ
いきなり運転席開けて小森君をビビらせてやろう、ってね
そんなノリが通じる奴だったからさ
で、実際近づいて行って、顔も見えないようにしながら取ってに手を掛けて
バン!!!!!
って思いっきり運転席を開けてやった
で、同時にありったけのドスの効いた声で
「おい!!!!!!!!!!!!」って怒鳴りつけてやったんだよ
「ウワー!!!!!!!!?????????」
予想通りの悲鳴が二つ返ってきた
……??
二つ??
そこに居たのは小森君じゃなくて全然知らない男だった
しかも助手席にも男がもう一人
そこで直ぐに俺は己の間違いに気がついたんだ
『車を間違えた』ってね
で、そこからはソッコー「すいません、間違えました」って謝って
烈火の速さでもう一つのセダン、つまり小森君が待つアリストに乗りこんだ
そしたら小森君は宣言通り寝てたよ
ありのまま、今起ったことを説明したらさ
「そら誰だってビビるわ」ってすっげー笑われたっけ
人間本当にビビった時は「ウワー」なんてマンガみたいな声出すもんなんだな
あの時の二人組には悪いけど、今でもあの時の二人の驚いた顔は瞼に焼き付いて
忘れられねーわ
誰だか知らんけどすまんな




