#ED「小さな平穏」
「"内腑刃"まで使うとは、追い詰められたようですね」
大衆喫茶店、その一席にて。
正宗とあやとりは二人で座っていた。
「胃の中に隠した刃を吐き出す――でしたっけ。実働部隊の忍法は過酷ですね」
「まぁ、おかげで生き延びれました」
あやとりは紅茶を。正宗はアイスコーヒーを頼み、またしても大量のガムシロップとミルクで名伏しがたい液体を作っている。
「奪われた両腕もしっかり戻ってきました。一時はどうなることかと」
「妖魔エンヴィーの術によって奪っていたようですからね。ある種の呪いのようなモノだったのでしょう。術者が死ねば、呪いは解けて奪われたモノも返ってくる。被害者の皆さんの元にも、戻ったようですよ」
「それはよかった」
笑みを浮かべながら、正宗は激甘アイスミルクコーヒーを嚥下していく。
その様子を見ながら、あやとりはふと表情を引き締め、正宗に告げた。
「しかし"上"の方では騒ぎになっているようです。妖魔エンヴィー。七罪衆という妖魔グループの一人だったようですが、その"七罪衆"というのがかなりの大物だったようで」
「そう言えば、そう名乗っていましたね」
「近く、呼び出されるかもしれません。ですので、しっかり休んでくださいね」
笑みを浮かべ、あやとりが席を立つ。今度は姿を消すことなく、伝票を持ってレジに向かっていった。
「"七罪衆"、ですか」
つぶやいたその名に、不安なモノを感じながら。
しかし正宗は、少しの間訪れた小さな平穏を、噛み締めるのだった。
現代忍者バトル小説・シノビガリ
「嫉妬の蛇」完
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