四十二話 「きじょうぶたい! しゅつげき!」
戦闘というのは、始まる前の準備が大変重要だ。
特に集団同士の戦いというのはそれが如実で、何をどれだけやってきたかに、勝敗がかかることも少なくない。
例えば武器。
バリスタやクロスボウといった飛び道具は準備に手間取ったが、期待を上回る効果を発揮してくれた。
遠距離にいる敵を一方的に攻撃できるうえ、その威力も申し分がない。
特にバリスタの火力は素晴らしく、たったの一撃で暴食アリを仕留めることができた。
これは、現在ゴブリン達が持つ中で、最大の威力を持っているといっていい。
単純な貫通力や破壊力で言えば、ウルフ・プラントに跨ったゴブリンが、大きな槍を構えて突撃するよりも、上だろう。
もちろんこれは、突撃の威力が低いということを示しているのではない。
バリスタの威力が、それだけ異常であるということだ。
これを三丁。
それより威力が下がるが、クロスボウが三丁。
いつも使っている槍やボーラ各種。
そして、対暴食アリ用に作った、大型のハンマー。
どれも作るのにかなり苦労したが、それだけの価値はあったといえるほど活躍してくれている。
もちろん、武器を用意するだけでは、戦いには勝てない。
これらをいかに使いこなせるかというのも、勝敗には重要だ。
慣れていない武器を実践で突然使えと言われても、どうしようもないものである。
事前にそれらを手にし、訓練して、初めてまともに戦うことができるのだ。
ゴブリン達は作った武器を使い、何度も訓練をしてきていた。
だからこそ、出会い頭のバリスタとクロスボウによる攻撃を、正確に当てることができたのである。
強力な武器を用意し、その扱いを体に染み込ませておく。
ゴブリン達の努力の賜物だといえるだろう。
武器に、それらを扱う技術。
これらの他にも、用意してきたものがある。
武器と技術を用いて、どうやって戦うか。
つまり、戦術である。
もっともこれについては、「ゴブリン達は」あまり手を出していない。
ゴブリン・ツリーの生態として、そういったいわゆる「頭脳労働」は、精霊であるりあむの仕事なのだ。
当然、りあむが考えたことが、実行可能か、不可能かといった意見は出している。
実際に動くゴブリン達でなければ、判断できないこともあるからだ。
とはいえ、やはり考えるのは、あくまでりあむの役割である。
どんな状況が起こり得るか予測。
それに基づき、それぞれにどんな行動をとるのかを決めておく。
武器を作って置くことや、それを扱うための技術を磨いておくことと同様、重要なことである。
ゴブリン達にとって、暴食アリの襲撃はとんだ災難であった。
だが、それでも幸運な点はある。
事前に襲撃を知ることができたことだ。
自分達を守るものは、自分達しかいない世界である。
いつかのアクジキのように、全く予期せず敵集団が襲ってきたとしても、おかしくはない。
にもかかわらず、今回は事前に武器などを用意しておけるほど前に、察知することができた。
まさに幸運である。
これで被害を受けているようでは、先はないといっていい。
万全とはいえないまでも、様々な準備に費やすことができる、一定程度の時間はあったのだ。
この戦いは、たとえ苦しくとも、ゴブリンの被害無しで勝たなくてはならないと、りあむは考えていた。
ゴブリンが傷つくところを見たくない、という感情面のこともある。
だが、同時に今後の成長のことを考えれば、ここは「無難に」処理できるようでなければならない。
暴食アリの襲撃が近づくにつれ、りあむはそう考えるようになっていた。
そう、こんなものは苦労をする場面ではない。
もっと危険で、狂暴で、手に負えないような連中との戦いが、この先控えているのだ。
「暴食アリを、対人間戦の踏み台にしてやる!!」
そう考えるようになったことで、りあむのモチベーションは一気に跳ね上がった。
まあ、だからといって、突然りあむの性能がよくなったりするわけでもないので。
別に勝てる公算が高くなるわけでも、無かったりするのだが。
残る暴食アリは、十二匹。
出会い頭で一気に八匹を持っていけたのは大きいだろう。
だが、問題はここからである。
残念ながら今現在のゴブリン達に、暴食アリにダメージを与えられる武器は少ない。
実際に対峙して見て改めて分かったのだが、ゴブリン達が普段使っているような武器は、効果無しと思われた。
つまり、槍、斧、ボーラの三つである。
どれもこれも威力が低すぎて、暴食アリの装甲を貫くことができないのだ。
関節や口、目などを狙えば、おそらく傷を負わせることは可能だろう。
だが、戦いの中でそういったところを狙うのは、並大抵のことではない。
相手は頭を振るい、ゴブリン達をかみ砕こうと襲い掛かってきているのだ。
動きを止めなければ、とても狙いを定めるどころではない。
また、動きを止められるのであれば、ハンマーで殴りつけたほうが威力がある。
二匹がかりで振り下ろす石製ハンマーの威力は絶大で、狙いさえ付けられるなら暴食アリを一撃で倒すことができた。
が、威力の反面、ハンマーは恐ろしく取り回しが悪い。
何しろ二匹がかりで扱う大物で、そうたやすく振り回せるものではなかった。
実際、最初に二匹の暴食アリを仕留めて以降、ハンマーの戦果は芳しくない。
暴食アリも警戒してか、うかつに近づいてこなくなってしまったのだ。
対人型生物用の生物兵器である暴食アリは、一定の知能があった。
状況に合わせて行動を変え、攻撃に対処してくるのだ。
数が多ければ遮二無二突撃してくるところなのだろうが、今はそれではまずいと判断したらしい。
ハンマーを警戒して距離を取り、隙を窺っている。
もちろん、少しでも手を緩めようものなら、そこを狙って突っ込んでくることもあった。
気が抜けない攻防が続く。
ゴブリン側に、今のところ被害は出ていない。
網を投げて、動きを止めたくはある。
しかし、すでに警戒されているらしく、網を持っているのを確認すると、近づいてこない。
思いのほか厄介だ。
暴食アリたちは石垣伝いに、左右に移動し続けている。
「ねらいがつけづらくなるな」
今回の襲撃で、指揮を執るリーダー役のゴブリンが呻いた。
あまり左右に動かれると、バリスタで狙いにくくなるのだ。
まっすぐに突っ込んできているのなら、狙いをつけるのは簡単である。
だか、左右に動かれると、照準を合わせるにはバリスタを左右に動かさなければならない。
ゴブリン数匹がかりで弦を引き、強力無比な一撃を繰り出すバリスタは、その威力の分だけ大きかった。
大きければ当然、動かすのも労力が必要になる。
動きも緩慢にならざるを得ず、狙いをつけようにも移動が間に合わない。
右へ左へせわしなく動き続ける暴食アリを狙うというのは、至難の業だ。
リーダーも、バリスタの扱いを心得ている。
当たりさえすれば大ダメージを与えられるバリスタも、これでは役に立たない。
では、クロスボウはどうか。
こちらは取り回ししやすく、当てることは難しくないだろう。
しかし、火力はバリスタに劣る。
頭を二発撃って、ようやく仕留めることができる程度だ。
ほかの部位に当たっても、さしたるダメージは与えられないかもしれない。
装填にも時間がかかり、外してしまったら損害が大きすぎる。
ボルトの消費というよりも、再装填にかかる時間的消費が惜しい。
何度も何度も撃ち続けられるほど連射は利かないのだ。
それなら、確実に仕留められる状況にしたい。
だとするならば、何とかして暴食アリの足を止めたかった。
そろそろ、次の手を打つべきだろうか。
考え始めたリーダーの視界の端に、思いがけないものが飛び込んできた。
振り下ろしたハンマーを、暴食アリが顎でつかんだのだ。
さっとリーダーの血の気が引く。
もしこのまま引きずり落とされたら、ハンマーを持っていた二匹は確実に殺される。
「てをはなせ!」
とっさにそう叫ぼうとしたリーダーだったが、その必要はなかった。
ハンマーを持っていたゴブリン二匹は、ハンマーを掴まれた瞬間には、すでに手を放していたのだ。
これは、事前の訓練通りの行動だった。
おそらくこういうこともあるだろうと、りあむが事前に予想していたのだ。
そしてこうすれば、有利になるとも考えていた。
狙いたがわず。
ハンマーごとゴブリンを引きずり降ろそうとしていた暴食アリは、力み過ぎて仰向けになりながら石垣から落ちていった。
「くろすぼう! おちたありを、うて!」
これも、予定していた行動だった。
指示を待ち構えていたクロスボウを構えたゴブリン二匹が、素早く狙いを定める。
暴食アリの頭にボルトが二本突き刺さったのは、落下とほぼ同時だった。
ボルトは見事、外骨格を貫く。
足をばたつかせているが、おそらく絶命しているだろう。
残り、十一匹。
「ばりすた! さんちょう、そうてん、かんりょう!」
聞き取りやすいように、わざと区切った大声が響く。
ゴブリン達はこの戦闘中、叫びや呻きといった声を出していない。
動物などとは違い、そういった声を上げても興奮状態になったり、士気が上がるなどの効果もないというのもある。
それ以上に、こういった報告を通りやすくする、というのが大きな目的だ。
なにしろ、戦闘中というのは声を出さなくても非常にうるさい。
ハンマーを振るう音や、暴食アリの出す音。
戦場音楽などというらしい、と、りあむはいっていた。
だが、残念ながらゴブリン達はそもそも「音楽」というものが何なのか、よくわかっていない。
ともかく。
バリスタの装填が完了したという声に、リーダーは意を決した。
「きじょうぶたい! しゅつげきじゅんび!」
後ろを振り向き、大声で叫びつつ、手を振る。
石垣の半周向こう。
洞窟の出入り口を挟んで、ちょうど反対側。
かなり距離のあるそこには、六匹のウルフ・プラントと、同じく六匹のゴブリンが待機していた。
彼らは心得たというように、吠え声と共に手を振り返してくる。
「きじょうぶたいを、えんごする! ぼうしょくありを、ひきつけろ!」
この言葉に反応するように、ゴブリン達は声を上げ始めた。
「うぉおおおおお!!!」
「がぁああああ!!」
獣もかくやという大声。
それが聞こえると、暴食アリたちは一瞬声の主を探すように顔を巡らせた。
人型のものを殺すことに特化した生物兵器である暴食アリは、「声」にも敏感なのだ。
声を出している方向に、暴食アリたちが徐々に引き寄せられてくる。
密度が上がり、攻撃が一時的に激しくなるが、仕方がない。
徐々に暴食アリたちが集まってくるのを確認し、リーダーがタイミングを計る。
「きじょうぶたい! しゅつげき!」
声を上げながら、身振り手振りも交えて合図を出す。
事前に決めていた合図だ。
これを見て取ったゴブリンとウルフ・プラント、計十二匹が、一斉に石垣から飛び降りた。
地面は凸凹していて、足場が悪い。
だが、ゴブリン達は元々木登りなども得意であり、全く問題なく着地。
ウルフ・プラント達も、持ち前の運動能力の高さを活かし、危なげなく降り立つ。
地面に降りたゴブリン達に、石垣の上から道具が投げ渡された。
折りたたまれた、大きな網である。
合計で三つの網を、ゴブリン達は素早く広げた。
それぞれの端を持ったゴブリン達は、そのままウルフ・プラントの背に跨る。
ゴブリンが六匹に、ウルフ・プラントが六匹。
都合六騎の騎狼兵。
それが、二騎ずつで網を広げている形だ。
騎狼兵達は、網をピンと張ったまま走り始めた。
人間が同じようなことをしようとすれば、かなりの訓練と熟練を要するだろう。
それを、ゴブリン達は難なくこなして見せる。
こと集団行動、特に息を合わせての行動であれば、ゴブリン達は人間が足下にも及ばない領域でこなすことができた。
一糸乱れぬ連携というのは、人間からすれば曲芸の領域であろうとも、ゴブリンから見ればできて当然の行動なのだ。
片方に一組、もう片方に二組。
網を持った騎狼兵はそれぞれに手を分け、石垣沿いに走り始める。
数匹の暴食アリが、何かに気が付いたように石垣から離れた。
人型の生物に対する特殊な探知能力を持つためか、騎狼兵に気が付いたらしい。
むしろ好都合である。
ウルフ・プラントは、持久力がない。
それでも短時間であれば、ゴブリンを背に載せて驚くほどの速度で走ることができた。
瞬発的に強力な力を出すといったことはできないが、長時間一定の動きを続けることができるゴブリン。
対して、ウルフ・プラントは、瞬発的に強い力を発揮できる代わりに、その後一定時間動きに制約が付いてしまう。
ゴブリンとウルフ・プラントの、大きな違いだ。
壁を大回りして走ってきた騎狼兵に、固まっていた中から数匹の暴食アリが飛び出し、襲い掛かる。
まさに予定通りだ。
遅れて数匹の暴食アリが石垣の近くから離れようとするが、その一瞬のスキをリーダーは見逃さない。
「なげあみ、なげろ!」
網を投げつけ、動きを止める。
石垣に近いものには、そのままハンマーを振り下ろす。
遠いものは、ここはいったん放っておかれた。
集団から分散した暴食アリと、騎狼兵が近づいていく。
彼我の距離をうまく保ちながら、騎狼兵達は広げた網のど真ん中に、暴食アリを捉えていく。
暴食アリが網の真ん中に入ったのを確認すると、そのまま走り抜けつつ網から手を放す。
勢いよく網に激突することとなった暴食アリは、ものの見事に絡めとられた。
動きが止まり、身動きが取れない暴食アリが、都合三匹。
程よく石垣から離れた位置に転がった暴食アリ達に、バリスタが向けられた。
「ばりすた! うて!」
空気を切り裂き撃ち出された巨大な槍が、暴食アリの頭を捉える。
三匹の暴食アリの頭が、ものの見事に打ち砕かれた。
騎狼兵達はといえば、そのままの勢いで石垣沿いに走り、暴食アリの塊から離脱している。
飛び降りたのと同じ場所まで戻る前に、ウルフ・プラント達の足が急激に鈍った。
駆け足の限界に達したのだ。
ゴブリン達はすぐにウルフ・プラントの背から飛び降りる。
同時に、石垣の上からハシゴと、何本ものロープが投げられた。
ゴブリン達は素早くロープをウルフ・プラント達の胴体に巻き付け、別の一本を口に咥えさせる。
そして、背中やおしりを支えながら、ウルフ・プラント達を石垣の上へと押し上げた。
少々ぎこちないものの、何度も練習した成果だろう。
暴食アリに追いつかれる前に、登りきることができた。
ほかのゴブリン達が暴食アリをけん制して、近づけさせなかったというのも大きい。
すべてのウルフ・プラントとゴブリンが石垣に上ると、すぐに梯子を回収。
ここで、
「かいしゅう、おわった!」
この声を聴いて、りあむが盛大に安堵のため息を吐いた。
かなり強引な一撃離脱である。
本来なら、出入りは門などでやるべきなのだろう。
だが、残念ながら今のゴブリン達にそんなものを作る技術はない。
これが一番確実だったのだ。
もちろん、相当に冷や汗ものの行為ではあったが。
無事にウルフ・プラント達も石垣の上に上ったのを確認すると、リーダーはすぐさま次の指示を出した。
「くろすぼう! ころがっているありを、うて!」
既に装填を終えていたクロスボウが、石垣近くで網にからめとられた暴食アリの頭を貫いた。
わざわざここまで待っていたのは、ウルフプラント達が石垣を登り切るのを待っていたからだ。
もし暴食アリがこれを追い掛け、襲ってくるようであれば、クロスボウで撃つ予定だったのである。
石垣の上には、追ってきた暴食アリに投げつけるための網も待機していたのだが、念のための備えというやつだ。
先ほどの一連の流れで、七匹を一気に減らすことができた。
残り、四匹。
「きじょうぶたい! つぎをじゅんび!」
一度襲撃に参加した六匹のウルフ・プラントは、しばらく走ることができない。
なので、次の攻撃には別のものが参加する予定だった。
網の数が三つだった理由は、実はこの辺りにある
ウルフ・プラントはさして数が多くない。
余力を持って、少なくとも二回は安定して出撃しようとすると、どうしても一度に動けるのはせいぜい六匹だったのだ。
ともかく。
バリスタとクロスボウは、再びすべて装填に取り掛かった。
装填が終わり、もう一度騎狼兵が出れば、また三匹は確実に仕留められるだろう。
だが、その前に片が付きそうだった。
一気に数が減らされたことで興奮した暴食アリが、遮二無二、一直線に石垣にとりついてきたのだ。
警戒する様子もない一心不乱の突撃は、しかし、数が少なすぎること。
冷静さを失わない正確無比な攻撃を身上とするするゴブリン達にとっては、むしろ狙いやすい恰好の的と言えた。
「あみ、なげろ!」
網を投げつけ動きを止める。
「たたけ!」
動きが止まった暴食アリを、ハンマーで殴りつける。
一匹仕留め。
すぐに、もう一匹の頭も叩き割った。
残り、二匹。
「くろすぼう、そうてんおわった!」
流石にここまで来ると、網を警戒するようになる。
だが、それならそれでやりようはあった。
「あみ、なげろ!」
網を投げると、警戒するようにいったんは距離をとる。
だが、すぐに間合いを詰めようと突進して来るのだ。
ならば、そこを狙えばいい。
一直線にこちらに向かって進んできているのならば、狙いやすいのだ。
「くろすぼう、うて!」
一匹につき、三本。
クロスボウのボルトが、暴食アリの頭に突き刺さった。
通常ならば、二本で仕留められるところを、三本である。
贅沢なボルトの使い方だが、確実性を考慮して、こうなった。
二匹の暴食アリが、その場でひっくり返ると、もがくように足を動かす。
やがて、それも止まり、ごろりと地面に体を横たえた。
残る暴食アリは、無し。
これで、すべての暴食アリを仕留めたことになる。
リーダー役を務めていたゴブリンが、細く長く、息を吐きだした。
もちろん、まだ楽観はできない。
死んだと思っていた暴食アリが、生きていたりする恐れもある。
あるいは、まだどこかに別の暴食アリが残っているということも。
だが。
「げきたい、せいこう。あとしょりを、はじめる」
一先ず、戦いは勝利で終わった。
ただ、ゴブリン達からも、ウルフ・プラント達からも、すぐには歓声などは上がらなかった。
皆、後処理が大変であることも、まだすべて終わったわけではないことも心得ているからだ。
彼らが喜びに沸くのは、暴食アリを片付け、他の襲撃者がいないことを確認し。
三交代制の、日常の仕事に戻った時である。
のはずなのだが、約一名だけ異常なほどのテンションで歓喜の声を上げているものが居た。
「やっはぁああああああああ!!! やったぞぉうらぁああああ!!! はっはっはっはっはっは!! 見たかありんこコノヤロウ!! つぎは、次は人間共だからなぁ!! 待ってろチクショウめぇー!」
りあむである。
ケンタの肩に掴まって、びったんびったんと全身で喜びを表している。
なんとも言えない表情を、ケンタはリーダーの方へ向けた。
助けてくれ、といっているように見える。
しかし、りあむの世話は、ケンタの役目だ。
リーダーは苦笑いをすると、少し大げさに肩をすくめて見せた。




