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十話 「そっか。武器が失せものなのがイタいんだなぁ」

 ケンタが所属することになったチームは、無事に採集の仕事を終えることができた。

 今は、警備を担当していたチームとともに、洞窟の前で待機をしている。

 狩りを担当していたチームが帰ってくるのを、待っているのだ。

 既にその姿は確認できており、全員無事で、怪我などもない事も分かっている。

 近づいてくると、彼らが抱えている、狩りの成果も分かるようになってきた。

 三匹がかりで運ぶような大物だ。

 洞窟の前の集合場所に到着すると、ほかのチームのゴブリン達から感嘆の声が上がった。

 どうやら今回の獲物は、かなり良いものらしい。

 りあむは初めて見る動物だ。


「何だこれ。イノシシ? でも、トカゲ系か?」


 それは、一見して爬虫類のように見えた。

 だが、肩などの上半身周りは毛皮で覆われている。

 りあむが知る限り、地球の爬虫類には現存していないタイプだ。

 次いで気になったのが、脚の付き方である。

 体の横からではなく、真下から生えていたのだ。

 現在地球上に生きる爬虫類は、確認されているすべてが、身体の側面から足が生えている。

 体の真下から足が生えていると言うのは、絶滅した恐竜に見られる特徴だ。

 この、イノシシのようなトカゲ。

 全長はゴブリン五分の四匹分程で、体重は二匹分程度はあるだろう生物は、その恐竜に見られる足の生え方をしていたのだ。

 ちなみになんでそんなことをりあむが知っていたかと言えば、CSの自然教育番組をよく見ていたからである。

 田舎というのはびっくりするぐらい暇であり、テレビを見るのは貴重な娯楽だったのだ。


「いや、まぁ、地球の基準で考えちゃダメか」


 ここは異世界だ。

 地球にはいない生物が、ごろごろしている。

 ゴブリンだっているのだから、恐竜みたいな特徴を持つ生き物だっているだろう。

 そう考えなおし、りあむはそれの観察をつづけた。

 一見してイノシシに似ているという印象だったが、実際体つきや顔つきはよく似ている。

 ずんぐりとした体に、短く回転力のありそうな脚。

 鼻先は硬そうな皮膚で覆われており、左右一対の牙が飛び出している。

 背中側を見れば、何かで突き刺されたような怪我を負っていることが分かった。

 おそらく、ゴブリン達が持っている武器によるものだろう。

 天然自然のモノを流用したと思われる、つららのような形状の木材。

 それによる攻撃の跡と考えて、間違いないはずだ。

 外見からわかることは、その程度だろうか。

 困ったことがあったときのリーダー頼みで、りあむはさっそくリーダーにあれはどんな生き物なのか、と尋ねてみた。


「くだものや、きのこ、むし。いろいろなもの、たべる。はなで、じめんほる。はしるの、すごくはやい」


「やっぱり、大体イノシシと同じようなモノなんですね」


 りあむの予想通り、爬虫類版のイノシシと見ていいようだ。


「おおきい。えいよう、たくさん。まりょくも、たくさん。いいえもの。でも、とるのきけん」


「まあ、真正面から戦うのは確かに危険そうですが。どうやって仕留めたんですかね」


 リーダーは少し考えるようなそぶりを見せた後、「まってろ」と言って狩りをしていたチームの方へと歩いていった。

 呼んできたのは、そのチームのリーダーだ。


「もりのなかで、みつけた。めったにみつからない。たまたま、みつけた。なんびきか、きにのぼる。これには、ぶきをもたせる。のこりは、あれをおいかけたり、おいかけられたりする。きのしたをとおったら、とびおりて、こうげきする」


「やっぱり、そういう方法なんですね。真正面から戦ったら、厄介そうですし」


「あれ、すごくつよい。こっちも、けがする」


「あんなのが突撃して来たら、しゃれになりませんもんね」


「なにもしなければ、おそってこない。ごぶりん、くそまずい。あいつも、ごぶりんくわない」


 雑食と思われる生物にすら無視されるほど、ゴブリンは不味いらしい。


「むしろ、ごぶりんみると、さけてあるく」


 というより、避けられるレベルのようだ。

 ゴブリンと言うのはよほど不味いのだろう。

 ここまで来ると逆に味が気になってくるが、残念ながら倫理的にも物理的にも今のりあむに味見は不可能である。


「きからとびおりるかり、きけん。せいこう、むずかしい。いいかりゅうど、ひつよう」


 通りがかった獲物に対して、木から飛び降りながら武器で攻撃する。

 確かに簡単なことではないだろう。

 身体能力だけではなく、経験が必要な狩りと言っていい。

 もっとも、武器は希少で在り、持つことができるゴブリンは少ない。

 となれば当然、使いこなすことができるゴブリンも少なかった。

 武器の数が不足していることは、それを上手に扱うことができる「いい狩人」の不足にも直結しているようだ。


「あれをしとめたの、いいかりゅうど。ぶきつかうの、うまい。けがするもの、いなかった。よかった」


 そういうと、狩りを担当していたリーダーは獲物を洞窟の中へと運んでいった。

 やはり、武器の入手方法を確立するのは急務のようだ。

 全員にいきわたるほど用意できれば、狩りの成功率も上がり、安全も図れるだろう。


「打製石器でも作れればいいんだけどなぁ」


 そこで、りあむはハッとした表情を作った。

 近くにいたリーダーに、急いで声をかける。


「あのっ! さっきの獲物の、牙! 牙だけ取っておくように、お願いしてください!」


 武器になるのは、石や木だけではない。

 動物の牙や角も、磨けば立派な武器になるのだ。

 意図は伝わらなかっただろうが、焦っていることは察してくれたらしい。

 リーダーはすぐに洞窟の中に走っていった。

 りあむも、ケンタに頼んであとを追いかける。

 何とか獲物が埋められる前に追いつき、りあむはほっと胸を撫で下ろした。

 不思議そうに首をかしげるリーダー二人の前で、りあむはケンタの肩から手を放す。

 洞窟の中でなら、ケンタがいなくても自由に動き回れるのだ。


「この牙を、武器として使いたいんです。なので、取っておきたいんですよ」


「きば、ちいさい。ぶきに、しにくい」


「そこはその、加工をして使う予定です」


 リーダーの二匹は、りあむの言葉に首を傾げた。

 表情からはよくわからないが、恐らく疑問に思っているのだろう。

 顔だけだと何を考えているかわかりにくいゴブリンだが、意外とジェスチャーは豊富なのだ。

 少しの間不思議そうにしていたリーダー達だったが、やがて何事か納得したようにうなずきだした。


「りあむ、ごぶりんがしらないこと、しってる。きっと、いみがある」


「そうだな。いうとおりに、しよう」


 自分達にはわからないが、意味があるのだろう。

 そんなところに落ち着いたらしい。

 さっそく、彼らは牙の取り出しにかかってくれた。

 と言っても、やり方はかなり強引だ。

 一抱えほどの岩を持ってきて、牙を傷つけないよう、慎重に獲物の顎を砕く。

 そののち、肉を引きちぎり、顎の骨ごと牙をひっぺがえすのだ。

 中々ショッキングな映像だが、精霊の体になっているりあむに吐き気などはなかった。

 忌避感も特に感じられなかったのは、「木の精霊」になったことが影響しているのだろう。


 ともかく、血や肉は多少こびりついているものの、それなりに立派な牙を二本手に入れることができた。

 本当は地面に埋めて、余分な部分を取り除くなどの処理をしたいのだが、この場所では不可能だ。

 ゴブリンツリーの近くに埋めてしまうと、骨だろうが何だろうが、跡形も残さず吸収されてしまうのである。

 骨なら骨、金属なら金属で、栄養素として使いどころがあるということだろう。


 牙は、とりあえずゴブリンツリーの上に置いておくこととなった。

 後日加工を施して、武器として使用できるものにする予定だ。

 と言っても、りあむもそれほど知識があるわけではない。

 探り探りになるだろうが、そのあたりは仕方ないだろう。




 イノシシのようなトカゲの牙を取り出した後、りあむ達は再び洞窟の前へと集まった。

 リーダー達の打ち合わせが終わると、配置の切り替えが行われる。

 今度はりあむとケンタが居るチームが、狩りに行く番だ。


 用意されていた武器を、リーダーがゴブリン達に配分していく。

 当然だが、ケンタには持たされなかった。

 武器は希少で在り、ゴブリン達にとっては扱いが少々難しい代物である。

 まずは先人達が使っている様子を見て、それがどういうものなのかを覚える必要があるのだ。

 危険なものの扱いは、まず見て覚えなければならない。

 ゴブリン達が怪我をするかもしれないリスクを考えれば、りあむもその考えに賛同だ。

 武器を持っているのは、リーダーのほか、完熟してからある程度たったゴブリン達である

 それぞれ配分された武器を、素振りなどをして確かめていた。

 武器は、形状こそそれぞれに違うが、種類としては大きく分けて二種類。

 長く、先がとがった槍状のモノ。

 イノシシのようなトカゲに致命傷を与えたのは、コレだろう。

 ゴブリンの身長と同じかそれ以上と言った、長柄のものが多い。

 もう一つは、硬くて重そうな、ハンマーのような形状のモノ。

 変わった形の木や、骨などをそのまま使っているようだ。

 重量は中々のものらしく、振るうのも大変そうに見える。

 どちらも強力だが、使いこなすにはある程度骨がいる種類の武器といえるだろう。


「下手に振り回してケンタが怪我したら大変だもんね。しっかり扱い方を見て、覚えないとだね」


 りあむにいわれ、ケンタはこくりと頷いた。




 ケンタとりあむの居るチームは、再び森の前へとやってきた。

 採集のときとの違いは、武器を持っているゴブリンがいる所だろう。

 もしかしたらゴブリン達は緊張感に包まれているのかもしれないが、残念ながらりあむにはゴブリン達の表情がうっすらとしか読めない。

 態度などもあまり変わらないようにしか感じられないので、普段通りにしか見えないのだ。


「感情が読めるようになると、いろいろやりやすいんだろうけどなぁ」


 そんな風に悩んでいると、リーダーが全員の注目を集めるように声を上げた。

 りあむも口を閉じ、そちらへと注目を向ける。

 全員の注目が集まっているのを確認すると、リーダーは今日の狩りについて説明を始めた。


「ねらうの、みずのちかくにいる、でかいねずみ。みずのちかく、さがしながらあるく」


 リーダーの言葉に、ケンタとりあむを除く全員が了承の返事をする。

 一体どんな獲物なのかわからなかったが、行けば分かるんだろうと、りあむは特に質問しなかった。

 チーム全体が歩き出すと、リーダーはりあむとケンタの方へと近づいてくる。


「でかいねずみ、さがすのたいへん。あるきながら、せつめいする」


 どうやら、効率的な理由で、説明を後回しにしたらしい。

 森の中で獲物を探すというのは、それだけ大変なのだろう。

 先頭を歩いているのは、武器を持ったゴブリン達だ。

 武器を持っているということは戦いに慣れているということであり、同時に永く生き残っているということでもある。

 森の中を歩く知識も能力も持っているのだろう。

 実に頼もしいことだ。


「でかいねずみ、りあむはしってる。なんどか、もっていった」


 言われて、りあむはゴブリン達がゴブリンツリーの元へ持ってきた獲物を思い浮かべた。

 その時は考え事をしていて、あまりよく観察していなかったのだが、それっぽいものを見たような記憶がある。

 ネズミと言うか、ヌートリアのような中型動物だったはずだ。


「ねずみ、あしはやい。つかまえるの、たいへん。こんかいは、ぶきてにはいった。これで、かる」


 ゴブリン達の狩りは、基本的に自分達の身体能力を使って行われる。

 噛みついたり、爪を使ったりするのだ。

 鈍足な生き物ならばこれで仕留めるのも難しくはないのだが、素早い生き物はそうもいかないらしい。

 捕まえるのにも一苦労だし、ゴブリンの爪と牙では素早く止めを刺すことができなかった。

 押さえつけて攻撃しようとする間に、逃げられてしまう事が多いのだという。

 だが、武器があれば、素早く止めを刺すことができる。

 いきなり攻撃を仕掛け、捕まえるまでもなく狩りを終えることも可能だ。


「ぶき、こわれる。みつけるの、たいへん」


 ゴブリン達の使う武器は、自然物をそのまま使っているものばかりだった。

 加工して使うという事はないので、手に入れる方法は運しかない。

 これが安定して手に入れば、狩りはずっと楽になるだろう。

 たとえばあのイノシシのようなトカゲなども、定期的に狙うことができるようになるはずだ。

 これから狙うというネズミも、武器さえあれば比較的簡単に仕留められるという。


「そっか。武器が失せものなのがイタいんだなぁ」


 りあむは難しい顔で、うなり声をあげた。

 狩りに使えば、武器はどうしても消耗してしまう。

 折れたり欠けたりすれば、使えなくなってしまうのだ。

 慣れたゴブリンが使いさえすれば、ある程度は抑えられるのだが。

 それでは若いゴブリンが育たない。

 どうにも、難しい問題だ。


「やっぱり、武器を作れるようになるのが一番だよなぁ。まずはそこからか」


 武器を作るには、どうしても細かな指先の動作が必要になる。

 基本的にゴブリンは、人間よりも不器用であるらしい。

 実際にやってみなければわからないが、加工仕事は困難になるだろう。

 指先が器用なゴブリンをゴブリンツリーに作ってもらえばいいのだが、それにも時間はかかる。

 育てるのに、余分な魔力も必要だ。

 残念ながらゴブリンツリーの台所事情はそれほど裕福とはいいがたく、割ける魔力はあまりない。


「まず、でかいねずみみつける。それから、おいたてるほうこう、きめる」


 りあむが武器について思考を巡らせている間にも、リーダーは説明を続けていた。

 あわてて、話に集中を引き戻す。


「ねずみ、おどかす。にげるさき、ごぶりんいる。ぶきで、しとめる」


「追い込み猟ってことですね。なるほど、うまい手だ」


「ねずみ、はやい。つかまえるの、むずかしい。すれちがうとき、こうげき。それで、たおす」


「でも、それって結構難しいですよね?」


「むずかしい。なれたごぶりんしか、できない」


 実際見てみないと詳細は分からないが、やはり簡単ではないのだろう。

 これで説明が終わったと判断したのか、リーダーは集団の先頭へと移動していった。

 りあむはそれを見送りながら、再び武器のことについて思考を巡らせ始める。


「ケンタは、どんな武器が使いたい?」


「ぶき、もったことがない。どんなものなのか、わからない」


「そりゃそっか」


「だから、いろいろあると、いい。ためせるものが、おおいのは、いいこと」


「そっか。そうだよね。じゃあ、いろいろ用意してみないとだね」


 ケンタの言葉に、りあむはなんとなく嬉しくなった。

 こうして意思疎通ができるのは、やはり楽しい。

 あのムカつく「木の知識」以外に相談できる相手がいるというのは、実に頼もしいことだった


「でも、用意するにしても単純な武器がいいよね。石製の槍と、ハンマー。っていうか、斧あたりがいいかな? 石器時代の武器な気がするけど。やっぱり多く残ってるってことはそれだけ有用だったんだろうし」


 先人の知恵と言うのは偉大だ。

 過去に使われていた道具と言うのは、工夫を凝らされているものが多い。

 有用であっただろうそれらは、幸いなことに特集番組などもよく組まれていた。

 作り方などを取り上げられたそれらの番組を、暇に飽かしたりあむは時折視聴していたのだ。

 もっとも、テレビで見ていただけで在り、実際に作ったことなどはない。

 上手く再現できるかどうかは、微妙なところだ。

 それでも、試してみなければならない。

 困難ではあるだろうが、やる前から悲観しすぎるのも心によろしくは無いだろう。

 何しろ今のりあむは、実体がない存在だ。

 心に悪いということは、存在ほぼ全てに悪影響と言うことになる。


「気負い過ぎずに頑張らないとなぁ」


 難しそうな顔をしながら、りあむはケンタの頭の上に顎を置く。

 もう慣れたのか、ケンタは特に何も言わずに歩いていた。




 森の中をしばらく進んでいると、小さな川に行き当たった。

 川と言うより、沢などと言った方がいいだろうか。

 水量は少なく、深さもほとんどない。

 このあたりには水量のある川はないそうで、大半がこういった浅いものなのだそうだ。

 少し離れた所に行けばそれなりの水量の川があるそうだが、行く用事はほとんどないのだという。


 ゴブリン達は、沢の周辺を調べ始めた。

 地面を入念に調べていくと、ほどなくして目的のものを発見する。

 ネズミのものと思われる足跡だ。

 近くには、フンも転がっていた。


「ふん、まだあたらしい。おいかける」


 どうやら、ゴブリン達は獲物であるネズミを捕捉したらしい。

 ここからが、いよいよ本格的な狩りの始まりなのだろう。

 りあむも、表情を引き締め直す。

 少しでも多くのことを、見聞きして覚えなけれならない。

 そうして得た知識を基に、安全に狩りが行えるような知恵を出さなければならないのだ。

 責任重大な、大仕事だ。

 そこで、ふとりあむはケンタに目を向けた。

 表情や態度ではよくわからないが、ケンタもこれが初めての狩りなのだ。

 緊張しているかどうかわからないが、声をかけておかなければならないだろう。


「俺は邪魔にならないように頑張るけど。ケンタは、怪我しないように気を付けてね」


「かりをおぼえようとすれば、けがをすることも、ある」


「そうかもしれないけどさ。なるべくって話だよ」


 苦笑するりあむにたいし、ケンタは首を傾げる。

 そんなやり取りをしている間に、チームは沢に沿って移動を始めた。

 どうやらネズミは、沢沿いに動いているようだ。

 これからそれを追いかけて、狩るのである。

 相手がネズミで危険が少ないとはいえ、狩りは狩りだ。

 どんな不測の事態が起こるかわからない。

 りあむは改めて「よしっ!」とつぶやくと、ケンタの背中に隠れるように身を縮こませた。

 少しでも面積を小さくして、見つかるリスクを避けようと考えたのだ。

 本人なりに一生懸命なのだろうが、少々面白い恰好に見えた。


 そんなりあむの様子を、ケンタは思わず二度見してしまう。

 これまでケンタは、りあむの行動に特に口出ししないで来ていた。

 自分には「彼女」の考えは推し量れないだろう、という判断からくるものだ。

 しかし、それにしてもこれは、いささか面白すぎる格好なのではあるまいか。

 何か言った方がいいのかとも思ったケンタだったが、少し考えて、口を挟むのは止めた。

 その表情が、あまりに真剣だったからである。

 りあむはゴブリンの表情が読み取れないのだが、ゴブリン達はりあむの表情が容易に読み取れるのだ。


「どうかした?」


 ケンタの様子がおかしいことに気が付いたのか、りあむは不思議そうに尋ねる。

 心配そうなその表情に対し、ケンタは少し肩をすくめるだけで何も言わなかった。

 りあむは首をかしげるが、すぐに再び真剣な表情に戻る。

 ケンタにとって、生まれて初めての狩りだ。

 チームのほかのメンバーに迷惑をかけるわけにもいかない。

 りあむに倣うように、ケンタも改めて気を引き締め直すのであった。

次回、狩り本番です

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