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第一話 始まりの森

「総長、起きてくださいッス」


どこかから俺を呼ぶ声が聞こえる。


「総長、今日の一限は体育ッスよ」


体育だと?俺は自分の体をその意思に介さず条件反射的に起こす。


「やっと起きたッスか、もう大変なんッスよ」


目を覚ますとそこは鬱蒼と緑生い茂る森の中だった。横に目をやると俺の愛バイクのホワイト・愛が転がっていた、外装に目立った傷はない。


「おいい、小田ァ。ここはどこなんだァ?俺らはそう……あの時に照明のないトンネルを抜けたはずだ、そこからどうなったってんだよゥ」


小田というのは今俺の前に突っ立て俺を起こした小太りのどんぐり頭のことだ、中学の頃からの後輩で武羅苦栖湾の一員としてこいつもトンネルの中をバイクで走ってたはずだが。


「そうッス、そこまでは覚えてるッス。それからの記憶がどうにも思い出せないんすよッス」


俺も小田もなぜかトンネルを抜けてここに至るまでが思い出せないようだった。


「とりあえずよゥこんな森のなかにいても仕方がねェ、幸いにも俺のバイクはここに転がってるから森を出て、どこにいるかさえわかれば家にはもどれるぜェ」


「そうッスね、ただ……」


小田は何かこの状況に何か思うとこらがあるらしく、逡巡していた。


「ただ、本当に笑わないでくださいッスよ。この状況が漫画とかでよく見かける異世界転移ってやつに似てるんスよ。現実世界から、例えば死ぬとかして、ゲームみたいなファンタジーの世界に飛ばされるってやつッス。総長を起こす前にこの森を少し見て回ったんだが、この森の植生はおかしいんッス。俺も専門家じゃないからはっきりとはわからんが、少なくとも日本ではないッスよ」


「ふーん。ショクセイとかって難しいのはよくわからんが、小田ァお前が言うんだからもしかしたら本当にここは日本じゃないのかもなァ」


「……笑わないで、ちゃんと信じてくれるんッスね」


「おいおいおいィ?俺はかわいい後輩が本気で喋ってることを決して笑わないぜェ?それによォ小田ァ、これを見てくれよォ」


俺は森の中で足を止め、小田に俺が森で発見したあるものを見せる。小田が動揺して息をのむ。

そこには公園の砂場ほどの大きさの足跡のようなくぼみがあった。


「こんな大きな足跡は、日本にいる熊なんかじゃつけられないだろゥ。こんなの見たら、信じるしかないだよなァ」


小田の言ってる素っ頓狂な発言のウラもこうして取れてしまった、さすがに俺と小田の両方があのトンネルの事故で頭のほうがイカレちまったとは信じたくねえ。


とりあえず現状に対する認識を俺はもっと深めることにした、この森にしても足跡にしても情報は少ないけれど確かにある。さしあたっての脅威は巨大な足跡だろう。あの足跡の大きさから推測してこの森にそれこそゲームに出てくるような大型の獣だったりが生息しているのはほぼ確実だ、この森に生息してる獣をある程度でも把握しないと俺らの生存は困難を極める。


それからこの森の規模についてのおおよその推測はつく、あれほどの大きな足跡をもつ獣がいるということはそれ相応の生態系が存在するはずだ、それにあそこまでの巨体が普通に生きているということは人の手もあまり及んでない可能性が高い。おそらくこの森は想像以上に深い。


「小田ァ、少し考えてみたんだが最悪のケースを想定すると、俺たちはこの森で人に会えず餓死する可能性がある。森からの脱出よりも、まずは生命線である水や食料を確保しよう」


「うッス」


こうして俺たちは不思議な土地での生活の一歩を踏み出すこととなった。





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