プロローグ
強烈なマフラー音でハイウェイを切り裂く、この国の夜はあまりにも静かすぎるから寂しい夜は俺を焦らせ駆り立てる。俺たちは寂しいから走るんだ。
イキッた暴走族が奏でる騒音が『寂しい、寂しい』の啜り泣きなんて冗談にしてはひどすぎるんだが。
俺たちは武羅苦栖湾という名前で暴走族みたいなことをしている。全員が黒いバイクで走る中、総長である俺だけが白いバイクに乗っている様子がまるで大きな黒い鳥が舞っているように見えるからブラックスワン。らしい……というのもこの名前は俺たちがハイウェイを駆け抜けてるうちに勝手に名づけられたものなのだ。
「総長、俺たちはどこに向かってるんだ?」
副長のミハエルが俺に問いかける。
「おいおい愚問だなコラ、武羅苦栖湾が目指すのは地の果てだけだろぅガ」
俺は適当にそう答える、本当はどこにも行くあてなんてないからだ。ミハエルは少し考えるために黙って、にこりと笑った。
「そいつはいいな、地獄でも俺たちは武羅苦栖湾だ」
ミハエル、こいつはかつてはアメリカの少年特殊部隊に所属していたが、特殊任務の失敗で本国に命を狙われるようになったので日本に亡命してきたらしい。それ以上深くは知らない。俺もこいつも、夜が寂しいからここにいる、それだけだから。
ハイウェイを抜けてトンネルに入ると、そこに待ち構えていたのは闇だった。なぜかトンネル内部を照らす照明が全部消えていて、一寸先は闇の状態だった。後ろについてくる何人かの仲間たちはスピードを落として、このまま進むかどうかで騒ぎ出した。
「総長さ、先に地獄で待ってるぜ」
暗闇せいで見えないが、多分笑いながらミハエルはそう言った。たかがこんな暗闇で大袈裟すぎる。
「命張れる奴は俺とミハエルについてこいィィィ」
後ろに怒鳴りつけてから思いっきりアクセルを踏む。夜を想起させる闇で怒った俺を冷たい風がたしなめる。トンネルを抜けた先に光が見えた、見慣れたハイウェイの死んだような明かりではなくもっと明るい白い光。
トンネルを抜けた瞬間俺は気絶して、深く深く落ちて行った。




