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西新高校諜報部  作者: はた坊
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体育祭~彼女とラブコメするにはちょっと荷が重い~

 五月二十五日午前零時五十八分。


 俺は自室のパソコンの前で待機していた。

 ブラウザはとあるチャットルームのウィンドウを開いている。先ほどこのチャットサイトのアカウントを作成しこのルームに入ったのだが現在このルームには俺を含めて六名が入っている。そしてその六名は何を書き込むでもなくじっと待機しているようだ。


 ブラウザの右下が午前一時を表示したときにあるメンバーの一人が発言した。


教師「まずはこんな深夜に集まってくれた皆に感謝する。」


 恐らく俺たちをここに集めたと思われる誰かだろう。おおよその予想はしていたがやはり学校の関係者、アカウント名から考えても、ここに呼ばれた方法を考えても俺が通っている高校の教師の一員と考えて間違いないだろう。


教師「色々と質問もあるかと思うがまずは私がなぜ皆をここに呼んだのかを説明したい。」


 教師以外の誰の書き込みも見られないという事はやはり教師以外の残り五名は俺と同じように今日アカウントを作成してからこのルームに来た、つまり何も知らされておらず様子を見ているという状況だろう。


教師「皆すでに気づいていると思うがこのチャットルームは西新高校の教師の一人である私、そして残りの五名は生徒だ。」


教師「本日返却されたテストの答案の右端にこのサイトのURL、このルームの名称だけを記載していたのだが私が記載したのは五枚、つまり全員がこのチャットルームに参加したことにより私だけはここにいるメンバーを把握していることになる。」


教師「もっとも、どのアカウントがどの生徒なのかまではわからないが・・・」


 アカウントを作成してしまえば俺が誰なのかばれることはないと思っていたがこれは予想外だった。これでは少なくとも俺、片江修一がこの場にいるという事が教師の誰かに割れた事になる。


教師「さっそく皆をここに集めた理由を述べたいと思う。」


 そう。それこそが俺が知りたかったことだ。テストの答案を返却されたときは「なんだこれ?」とすぐにURLが目に入った。点数の真下に書かれていれば気づかない訳がない。しかし教室の周りを見回しても誰もそのことに触れずに赤点だ~だの、負けた~だの声を出している程度だった。そもそも誰かとテストの点数を競うなんて意味のないことだし俺が赤点を取るなんてことはあり得ないから誰かとテストの結果について、答案用紙について話をするなんてことは無い。

 更に言うとこのクラスで会話をする人間なんていない。


教師「君たちにはこの西新高校の治安維持をお願いしたい。」


教師「知っての通りこの西新高校は県でも一位二位を争う進学校だ。」


教師「生徒の大半が勉強に、部活に一生懸命頑張っているのは非常に喜ばしいことである。」


教師「しかしながら学校関係者、この場合は当校の教師や事務員のことを指すが我々には解決できない、知り得ない問題も少なからずあるのだ。」


教師「社会が高齢化社会に進むにつれて学校の教師も高齢化が著しい。」


教師「彼らにネット上でのいじめを解決させようとしてもそれは不可能だし、そもそも理解しようとすらしない。」


教師「問題は生徒側だけじゃない。例えば我々教師が問題を起こす可能性だってある。」


教師「大学教授が電車内で盗撮していたという事も過去にテレビで報道されたという事もあった。」


教師「そこで私はこの学校の治安維持を目的とした機関を作りたいと考えたのだ。」


教師「最初は教師数名に声を掛けてみたが誰も良い返事をしなかった。」


教師「次に部活として活動させてみてはどうかと考えたが所属する生徒の顔が割れてしまえばそこから生徒間の摩擦が生じる可能性、教師からの危険視もあり得るという結論に至り断念した。」


教師「そこで思いついたのがCIAだ。」


教師「CIAの諜報員は世間に誰が諜報員だという事は教えずに各諜報員同士もお互いのことを全く知らないらしい。」


教師「そうすることにより情報漏洩のリスクを減らすことに成功したのだ。」


ブラック「つまり私たちはここにいる誰かを知らずにそれぞれが個人で行動するという事でしょうか。」


 ブラックが突然質問をした。そのことに俺は少なからず驚いたがそれでも教師は若干の時間を要しながらも何も動じずに返答していった。

 こいつはあれだな。周りの目を気にしないで分らないところは誰が相手でも、どんな場所でも質問することのできるタイプだ。

 俺が苦手とするタイプだな。


教師「そうだ。情報交換はこのような場所ですることが可能だし、お互いの行動を邪魔せずに済むだろう。」


人間「問題が発生、もしくは発生しそうな場合、解決に向けての一連の流れを教えてください。」


 でた。一連の流れ!最初にゴールを決めてから現在位置からの道筋を立てて進めるヤーツ。このタイプは自分の意見を否定されることを一番嫌い、議論になったら真っ赤になって相手を屈服しようとするタイプだ。

 こいつも苦手なタイプだ。


教師「基本的には私が問題発生のアラートを促す。すでに君たちの携帯電話の番号、メールアドレスは取得済みだ。そこでは次にこのチャットルームに来てもらう時間を指定する。チャットルームでは発生した問題を提示するので君たちはそこで相談してくれればいい。」


教師「私からは基本的にどのように行動するかは指示しないのでそれぞれの解決方法を議論し合ってほしい。」


教師「一つの方法を皆で役割分担しながら進めてもいいし、意見が食い違えばそれぞれの解決方法を実践してもらっていい。」

シガー「つまり問題解決の手段は問わないって認識でいいのか?」

 

 こいつ、教員捕まえてタメ語かよ。匿名性があるにしても社会常識が欠如してんじゃないのか?

 関わり合いになりたくないな。


教師「公序良俗に反しない程度に頼む。この組織が問題になれば本末転倒だ。」


透明「俺たちのメリットは?」


 で、でたーーーー!利益が無いと行動しないパターン!!

 このタイプは友達が「カラオケ行こうぜ!」って誘ってもその相手を前に「それって何か得るものがあるの?」とか言っちゃって友達が去っていくタイプ!

 っていうか俺なんだけど。


 だって内容的に結構面倒臭そうだし、そもそもなんで俺がこの場に呼ばれてんだよ。何のメリットも無しにこんなことやってらんねぇ。こんなことする時間があるなら勉強したい。この学校がどんな問題を孕んでいようが知ったことじゃない。


教師「ふむ」


教師「考えてなかったな。しばらく考えさせてくれ。」


 その後も細かい質問がたくさん出てきたが大きな質問は上述のとおりだった。

 気づけば時間は午前二時三十五分画面の向こうのメンバーはどんな生徒がいるのだろうという事を思考してみてよく考えてみたらそもそもそんなに知っている人間がいない俺としては推理して誰かが特定できることはあり得なかった。


 明日もテストの返却は残っているが答案にURLが記載されていることはもうないだろう。


 


 あの夜のチャット以来携帯が鳴って召集されるという事は今のところ無い。今思うとあれは何だったのか。もしかして教師の気まぐれの暇つぶしに付き合わされただけなのではないのかと言う気がする。

 

六月三十日午後三時五十分。

 基本的に家族以外の誰からも掛ってこない携帯が鳴った。


―「本日深夜零時前回と同じチャットルーム。」


 見覚えのない番号からのSMSだった。


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