第二幕 愛され聖戦 前編
「ボサッとしないで!!」
「ふぇ!?」
私の頭の中はぐちゃぐちゃになってたけどこのままじゃヤバイ・・・
凄いピンチだと言うことだけがわかる。
「あら?回避されちゃった・・・」
「不意打ちとは卑怯ね」
「勝つためなら何だってありでしょ?」
「まぁそうね」
アンジュと話してる人の姿にどこか見覚えがある・・・
「あなたの本体は家にいるの?」
「本体を連れて歩く方が危険だと思わない?」
「そうよね」
「ねぇアンジュ・・・」
「何?」
「分身って元と似るんだよね・・・」
「は?何当たり前なこと聞いてんのよ・・・似るに決まってるじゃない・・・分身なんだから」
だよね・・・凄い当たり前なこと聞いて自分でも何で聞いたんだろとか思ったけど・・・現実を受け止めたくなかったのかもしれない・・・
だって・・・私達を攻撃してきた人は明らかに・・・夏奈に似てるんだもん・・・
「夏奈の分身・・・」
「ふーん・・・ほら・・・人間なんて所詮そんなものよ・・・分かったでしょ・・・杏雛・・・こうなったら倒すだけよ・・・」
「で、でも・・・」
「でもじゃない・・・これは聖戦と言ってるけどタダの戦争よ・・・気を抜けば死ぬ・・・だから戦う・・・それだけよ・・・」
「・・・」
「黙り・・・なら戦うわよ」
「あ・・・」
アンジュは行ってしまった。
信じられないよ・・・親友が真っ先に殺しに来たなんて・・・
信じられない・・・それは信じたくないだけなのかもしれない・・・
考えてる時にもアンジュ達は戦ってる・・・
アンジュ達は剣と剣を交じ合わせている・・・
剣同士が当たる瞬間・・・強い風が吹く。
それ程アンジュ達は本気なんだ・・・本体である私に何が出来るんだろうか・・・少なくとも戦うことは出来ない・・・
私は見てるだけ・・・?
アーサーが戦っている時にだって腰が抜けて動けなかった・・・あんな普通じゃないモノを見たら誰だって動けなくなる・・・
でもあの時は私は関わってはいなかった・・・でも・・・今回のこれは他人事じゃない・・・私の事なんだ・・・
「アンジュ!!」
アンジュはそのまま戦っていた。
しかし・・・少し表情が変わったような気がした。
「分かった・・・あなたと生き残るために戦う!!」
「ぷっ」
遠くにアンジュは居たけど微かに・・・アンジュが笑った声が聞こえた。
夏奈が何で私のことを狙ったのかはわからないけど何か訳があるのかもしれない・・・それは本人に聞かないとわからない・・・だから・・・私は夏奈の家に行く・・・
私は走って家の階段を降り玄関のドアから飛び出し隣の夏奈の家にへと向かった。
ドアの横にあるインターホンを鳴らす。
いつもなら夏奈のお母さんが出てくるのだが・・・
「出てこない・・・何で・・・」
午前9時・・・もう起きてる筈だけど・・・
『聞こえる?杏雛・・・』
「うわ!!な、何!?」
急にアンジュの声が聞こえてきた。
『驚かなくたって良いじゃない・・・あなたに直接話かけてるのよ』
「あぁ~魔法系の作品とかで良くある・・・」
『そういうことは言わないの!!』
「ごめん・・・それで?どうしたの?戦闘中じゃないの?アンジュ・・・」
『戦闘中だけどあなたの助けになる助言をしないとなーと思ってね・・・あんまり余裕無いから簡潔に言うわよ』
「うん」
『私達の戦闘・・・いや不意打ちをされた時から特殊な世界に飛ばされていて・・・この場所にはあなたと私と・・・あとは夏奈と夏奈の分身しか居ないわ』
「え!?特殊な世界!?」
『それを説明してる余裕は無いわ!!だからさっさとその家のドアを開けちゃいなさい!!』
「わ、わかった・・・」
アンジュの言われた通りドアを開ける。
確かに言われてみれば私のお母さんだって私が飛び出して来たのに止めに来なかった・・・
お母さんが居たら絶対に止めに来てた・・・
夏奈は何をしてるのだろう・・・
夏奈の家には何度か来たことがあるから夏奈の部屋がどこなのかはすぐに分かった。
静かな家って不気味だな・・・
そんなことを考えつつ私は夏奈の部屋を恐る恐る開ける・・・
「なっ!?」
目の前には口にガムテープを貼られ手と足は縄で縛られて横になっている夏奈がいた。
「夏奈!?」
「んん!?」
夏奈は横に首を振っていた。
「大丈夫!?今助けるから!!」
「んん!?んん!!」
激しく首を横に振っている・・・その意味を私は理解出来ずそのまま部屋の中へと一歩入ってしまった。
『危ない!!』
「え・・・?」
体が部屋の中へと入った時・・・横から鋭利な物が飛んで来た。
それは槍のような・・・そんな感じの物だった・・・
気づいた頃には遅くただ刺されるばかり・・・
体が動かないものなんだ・・・
良くアニメとか漫画とか読んでて何で避けないんだろって思ってたけど・・・いざとなると本当に体って動かないんだな・・・
そんな呑気なことを考えて・・・死が近くなった時・・・
いつも付けてるネックレスの宝石が光出した・・・
確かこれって誕生日にお母さんに貰ったやつ・・・
瞬く間に周りが光に包まれる。
「・・・あれ?生きてる?」
何だったんだろ・・・
「夏奈!!」
「んん・・・」
私は夏奈の所へ向かい一通り拘束を外す。
「夏奈・・・大丈夫?何があったの?」
「いきなり私に似た人が出てきたと思ったら急に拘束されて・・・そしたら杏雛の家を攻撃したから・・・私・・・どうしようかと思ったの・・・」
やっぱり夏奈は自分の意思で攻撃させてきたんじゃない・・・ということは分身の方が勝手に・・・?
「とりあえずあの戦いをどうにかしないと・・・」
次回は戦闘パートになる予定です/(^o^)\